洞窟探索 後編
まさか、こんなに凶暴そうな狼に勝ててしまうなんて。
種族も魔狼だったし、相当強い相手だったんじゃないだろうか?
〔魔王:サキ(仮)は魔狼:カークを倒しました〕
〔経験値を獲得しました〕
〔魔王:サキはLV1からLV10に上がりました〕
〔各種ステータスが上昇しました〕
おお、LVが上がった!
人生初のLVUPだ!
でも、LV89を倒したわりには、10までしか上がらなかった。
これは恐らく、魔王スキルの仕業だと思う。
LVUPに必要な経験値量が最大となるって書いてあったし、間違いないだろう。
これは、メタルな逃げ足の速いモンスターを倒しまくらないと。
さて、この狼はどうしよう?
このまま放置しても良いけど、何だかもったいないような気がする。
もふもふの毛皮に、立派な牙や爪。
これ、高値で売れるかもしれない。
今は無一文だし、人や魔族の生活圏に行ったら、お金は必要になる。
お金になりそうな物は、なるべく回収しておきたい。
そんなわけで、この狼がどれだけの値打ちなのか、鑑定をしてみよう。
そのための鑑定だからね。
〔魔狼:別名、試練の魔物と呼ばれる大狼。エルステルン山脈最奥部に生息し、侵入者を迎え撃つ。鋭利な爪や牙は、上質な武具へと加工されるため、人族、魔族共に高額で取り引きされている。また、毛皮は保温性だけでなく、衝撃吸収性にも優れている為、こちらも高額で取り引きされている〕
やっぱり、高値で取り引きされてる。
この爪や牙を全部持って行ったら、そりゃあもうウハウハだろう。
でも、毛皮はどうしよう?
Q.剥ぎますか?
A.無理です。
私にグロいことをしろと?
無理無理。
生粋のヒキニートである私に、そんな芸当が出来るはずがない。
前世の私は、ホラゲーは好きだったけど、グロゲーは大嫌いだった。
だから、こんな、どこかのグロゲーの拷問のような、生皮を剥ぐような行為が出来るはずがないのだ。
〔対象の剥ぎ取り等に嫌悪感を抱かなくなる、嫌悪無視のスキルを獲得可能です〕
余計なことすんな!
別に、そこまでして毛皮が欲しいわけじゃないし!
でも、爪や牙を持って行こうにも、どうやったら回収できるだろうか?
見るからに堅そうだけど、私の攻撃力は2000だし、この狼にも痛手を与えていたし、もしかしたらポロッと取れるかも?
そう思い立った私は、狼の前脚のところへ行く。
間近で見る爪はまるで、どこかの刀匠が打った日本刀のようだ。
切れ味凄いんだろうな。
刃の部分を持たないように、横からトンッとやったら、見事にポロッといったよ。
こいつの爪が脆いはずがないと思う。 やっぱり、私の力が強すぎるんだ。
同じ要領で全ての爪と、牙の中でも立派な、上下の4本を回収した。
爪を回収した時に、根元から取れてしまったものが有った。
そのせいで、少しだけ返り血を浴びてしまった。
更に牙の回収で、全身よだれまみれだ。
気持ち悪い、お風呂入りたい。
でも、お風呂なんてあるはずが。
この世界で、最初に目覚めた場所。
地底湖のあった空間だ。
地底湖の水で、体を洗い流してしまおうと思い、引き返してきたのだ。
服までベタベタだったから、着衣のまま地底湖に飛び込む。
地底湖の水は思ったほど冷たくなく、ひんやりと心地良い。
私は、体に付いた汚れを落としていった。
この行動が、後にあの様な出来事を引き起こすとは、今の私には知る由もなかった。
さて、汚れも落とした事だし、先へ進もう。
狼が居たのは、広い空間だった。
その奥には、狭い通路に繋がっていた。
他に道は無い。
案外、簡単な洞窟なのかも?
私は、その通路へ入っていった。
しばらく進むと、岩だった通路が、石のレンガで造られた通路へと変わった。
明らかに、人の手が加えられている。
更に、通路の奥から光が差し込んでいる。
出口だろうか?
私は自然と、その光へ向かって走り出していた。