50 邂逅
何もない暗闇を、私は歩いていた。
見渡す限り暗闇、まさに暗黒の世界だ。
どうしてこんな場所に居るのか分からないけど、とにかく歩かなければならない。
何故だか分からないけど、そう思っていた。
しばらく歩いていると、暗闇の中に鏡が現れた。
それは、姿見のスキルで呼び出す鏡にそっくりだった。
私は鏡を覗き込む。
そこに映るのは私のはずだが、私は鏡の中の人物が、私ではないと分かっていた。
「あんな小物に後れをとるとは情けない」
鏡の中の私が話しかけてきた。
そんなこと言われても仕方がない。
あれが、今の私の実力だから。
「その体を大事にしてもらわないと、私が困るのだ。本来なら、お前が宿るべき肉体ではないのだからな」
そんなこと、私の知ったことではない。
それに私だって、好きで魔王に生まれ変わったわけでもない。
「ならば、私に身を委ねろ。私に任せれば、あの小物を葬り去ってやるぞ」
願い下げだね。
これは私の問題だから、あんたの出る幕ではないよ。
「そうか。どの道、私は復活を遂げるつもりだ。私を失望させないよう、精々強くなることだなサキよ」
言われなくても、そのつもりだよセラメリア。
気が付くと、そこはキルナス迷宮だった。
体の傷やダメージはなくなってる。
復活が終わったみたいだ。
それにしても、今のは夢だったのだろうか?
封印されてるはずのセラメリアと会話をしたんだ、現実のはずがない。
……そう思い込みたいだけ。
それよりもまずは、魔王城に戻らないと。
みんな心配してるんだろうな。
ダンジョンメニューから魔王城へ戻ると、玉座の間に大勢の人が集まっていた。
みんな、私が突然現れたことに驚いているようだ。
一番驚いてるのはアナスタシアだけどね。
「魔王様、ご無事でしたか!」
あんまり無事とは言えないけどね。
「今まで、いったいどこに?」
それを説明したいけど、これは騎士団の方々には教えられない。
とりあえずレイロフ君、カグラ、アナスタシア、ユキメ以外は退出してもらおう。
騎士団を追い出した私は、これまでの経緯をみんなに説明した。
みんなの反応は、まあ予想通りかな。
「魔王様、質問があります。襲撃したのは、サーペントだけだったのでしょうか?」
アナスタシアの言いたいことは分かるよ。
「サーペントだけ。アナスタシアのお兄さんは居なかったよ」
それを聞いて、安心したかのような溜め息をつく。
複雑な気持ちなんだろうね。
「魔王様が適わないとなると、私達ではどうすることも……」
悲しいけど、カグラの言うとおりだ。
私のステータスで全く歯が立たなかったから、カグラ達ではどう頑張っても。
……そうは考えたくない。
何か、サーペントの強さに届く方法があるはずだ。
とにかく、カグラ達にはこのまま修行を続けてもらおう。
エレヌスさんとも相談しないと。
今のままではどうしようもないのは確かだし、助言を賜りたい。
それが終わったら私自身だ。
私も強くなる以外に、色々と準備があるからね。