魔法講座2
魔王様の焼き肉パーティーの余韻も冷めやらぬ内に、私は魔法訓練室で漂う火球を動かす練習をしていた。
最近になって、ようやくコツを掴めたところだ。
どうやら、細い魔力で操作するには、私の作り出した火球は大きすぎたようだ。
しかし、どうもしっくりこない。
そもそも、魔力の塊に魔力の線を繋げて魔法を使うのは、かなり面倒だと思う。
ロロの言っていることは間違ってないと思うが、もっと簡単な方法があるのではないだろうか?
「熱心ですね、レレ姉さん」
魔法訓練室に、ロロがやってきた。
丁度良い機会だし、今の事をロロに聞いてみよう。
「やはり気付きましたか。では、百聞は一見にしかずと言うことで、少しお見せしましょう」
そう言うとロロは、手のひらの上に小さな火球を作り出した。
魔素探知を使ってみるも、火球に細い魔力が繋がっているようには感じられない。
「良く見ていてくださいね?」
火球は天井付近まで上昇し、部屋の隅にあるタル目掛けて一直線に飛んでいった。
やはり魔力の線は感じられなかった。
「どうやってんの?」
「簡単な事です。魔力の線を細くしているだけ」
「細く?」
「書庫でレレ姉さんは、どうやって飛んでいますか?」
私が普段働いている書庫には、魔力の上昇気流がある。
私達はそれに乗って、書庫内を飛んでいるわけだ。
「つまり、魔力の流れに乗っているわけですが、それは魔法も同じ事。魔力の線に流れを加えてしまえば、それに乗って魔法は動くのです」
よく分からないけど、つまりは魔法が流れていく線を作れば、魔法がその通りに動くと。
だから、魔力の線も切れる事なく、魔法が飛んでいくわけか。
でもそれは、私の疑問の答えになっていない。
「魔法で戦う事を考えるのなら、魔力の線を予め張り巡らせるのは常識。そこから状況に応じて、各種魔法を使っていくのです。簡単に魔法を使っているようで、実はとても面倒な工程を踏んでいるのですよ。慣れてしまえば簡単ですけどね」
つまり、私は修行不足だと。
まあ良い、それは分かった。
私はもう一つ疑問に思っていたことを、ロロに聞いてみた。
「星天魔法や闇天魔法は異界を繋ぐゲートを作ってるみたいだけど、この魔法はどんな原理なの?」
「魔法は全てイメージです。想像力が強ければ強いほど、魔法の効果も上昇します。星天魔法や闇天魔法は、それぞれ星海、暗黒海を強くイメージする事によって魔法を発動させているのです」
「つまり、星海や暗黒海をイメージ出来なければ、それらの魔法は使えないってこと?」
「そう言う事になりますね」
何だか、少しだけ残念だ。
星天魔法の龍星砲や闇天魔法の禍罪は、私の求める派手で高威力な魔法なだけに、使えないショックは大きい。
自分の想像力の無さが悔やまれるところだ。
そして、魔王は凄いと改めて実感する。
魔王は、いま私が行っている魔法の操作を、僅か数時間で使いこなしてしまった。
更に、星海や暗黒海のようなイメージの難しい魔法も、楽々使いこなしている。
やはり魔王と言う存在は格が違うらしい。
「これで魔法の基礎は習得した事になります。後はイメージを高める修行を行えば、魔法は自然と強くなります」
イメージか……妄想とは違うのだろうか?
どちらにしても、私の苦手分野だ。
……一度、魔法書を読み漁った方が良いかもしれない。
格好いい魔法も覚えられて、一石二鳥だろう。