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46 行動開始

 とある山奥の洞窟にある、サーペントの隠れ家。

 入り組んだ天然の迷路を、サーペントの部下が走っている。



「も、もう少しで」



 巨大な縦穴。

 上はどこまで続いているのか分からないが、下は10メートル程に地面がある。

 そこに架かる石の橋に、部下がたどり着いた。



「ここさえ渡れば」

「残念だったな、捕まえたぜ!」



 部下はサーペントに捕まってしまった。



「惜しかったな。ここを渡れば出られたのによ」

「い、嫌だ! 俺はまだ死にたくない!」

「お前、薹盆(たいぼん)って知ってるか?」



 そんなもの、この世界に住む者が知っているはずもない。



「とある処刑方なんだが、窪みに大量の毒蟲や毒蛇を入れて、そこに罪人を突き落とすんだ」



 今のこの部下に、サーペントの言葉は届いていない。

 死にたくない、その一心だから。



「この穴の底を、よく見てみな」



 部下は頭を鷲掴みにされ、無理やり目を開かされ、穴の底を見せつけられた。

 穴の底では、何かが蠢いていた。

 次第に目が暗闇に慣れてきた部下は、その先に見えたものの正体を知って絶叫した。


 穴の底では、おびただしい数の毒蛇が蠢いていたのだ。



「そうだ、これが薹盆だ。さあ選べ」



 サーペントは部下の首を片手で締め、そのまま軽々と持ち上げた。



「オレに殺されるか、薹盆に落ちて蛇共の餌食になるか」



 首を絞められ声が出せないのだから、答えられるはずがない。

 サーペントはそれを分かっていて、こんな選択肢を与えたのだ。

 全てが自分の思い通りにならなければ、気が済まないから。



「よし、薹盆だ」

「や……め……」



 サーペントは首を絞める手をさらに強める。

 部下の抗う力が弱まったところで、サーペントはその手を離した。

 部下の体は薹盆へと落ちていき、地面に激突する。

 そして。


 部下の断末魔が、縦穴に響き渡る。

 それを聞いたサーペントは、まるで満たされたかのような笑みを浮かべた後に、小さく舌打ちをした。



「ダメだ、こんなことじゃ満たされねえ。やっぱり、オレの獲物はアイツしか居ねえか」



 サーペントはその場から立ち去った。

 薹盆の底に部下の姿はなく、数十匹の蛇が絡み合った塊が蠢いている。

 しばらくすれば、この蛇はまた散り散りになるだろう。

 そして後に残るのは、部下の骸だけだ。

 これこそが薹盆の恐ろしさなのだ。





 焼き肉パーティーを終え、部屋で一休みしていた私は、とても鋭い視線に振り返った。

 目の前は壁。 当然、そこには誰もいない。

 しかし間違いなく、誰かの視線を感じ取った。

 相手を射抜くかのように鋭く、それでいてベッタリとまとわりつくような視線。

 この視線は、以前にも感じたことがある。



「……エレヌスさん、聞こえる?」


《サキちゃんか、どうした?》


「視線を感じた。たぶん、サーペントの視線だと思う。あいつが、何か企んでる気がするの」



 それを聞いたエレヌスさんは、考え事をしているのか小さくうなった。

 どうしてそんなことを思ったのかは分からないけど、私の本能が警鐘を鳴らしているのは確かだ。



《前にも言ったが、サーペントの動向を探る事は出来んのじゃ》


「分かってる。でも、備えることはできる。エレヌスさんは何が起こっても対応できるように、色々と準備をしてほしいの」


《……分かった、サキちゃんの直感を信じてみよう》


「ありがとう」



 さて、私には何ができる?

 今はみんなも修行中だ。

 サーペントに対抗できるだけの力は無い。

 こんな状態で襲撃されたら。


 ……あいつらの狙いは私だ。

 だったら、私だけでも強くなれば良い。

 少なくとも、サーペントを撃退できるくらいには。


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