43 バーベキュー
目の前には凶暴な牛、辺りは吹雪。
状況はよろしくない。
まずはこいつを鑑定してみようか。
〔LV:79〕
〔名前:ゲネアブル〕
〔種族:鎧牛〕
〔HP:13000〕
〔MP:9000〕
〔SP:10000〕
〔攻撃力:3800〕
〔守備力:9000〕
〔魔力:3000〕
〔魔法耐性:4400〕
〔素早さ:500〕
〔雪鎧〕〔雑食〕〔悪食〕〔魔素探知〕〔魔力操作〕〔大食漢〕〔鎧牛〕〔吹雪〕
試練の魔物クラス。
いや、それより強いんじゃないかな?
まさか、こんな化け物が隠れ住んでたとはね。
討伐隊が派遣できないって、こういう意味だったわけか。
「マ、マオさん、逃げましょう!」
そんなこと言っても、足がすくんで動けないくせに。
「あいつ、私が倒してきてあげるよ」
「へ?」
「ユキメは、あいつを倒してほしかったんでしょ? だから、私が倒してあげるって言ってんの」
「でも!」
「大丈夫、私は強いから」
私は小屋から飛び出して、牛と対峙した。
寒いけど、戦ってれば体も暖まるでしょ。
私に気づいた牛は、大きな雄叫びをあげる。
うるせー!
どうしようかと考えていると、牛は頭を低く構えて突進してきた。
ああ、そうだった。
魔王シリーズは置いてきたんだった。
のんきに考えてる暇はないと。
でも、それはそれで問題ない。
私は牛を引き付けてから、鼻先をグーで殴ってやった。
「いったー!」
突進は止まってダメージも入ったけど、私も手を痛めてしまった。
こいつ、どんだけ堅いんだよ。
亀以上に堅いんじゃないか?
牛は攻撃を警戒してか、私から距離をとる始末。
もう一度突進してきてくれたら勝てるくらいにHPを減らしたのに。
でも、来ないなら来ないで、私には魔法があるからね。
レアは好きじゃないから、じっくりウェルダンにして美味しくいただいてやるわ。
「炎熱魔法、紅蓮の大渦」
牛を炎の渦が包み込んだ。
さあ、こんがりじっくり焼いてやるからな。
とか思ってたら、牛は炎を振り払いやがった。
あ、でも、雪の装甲は溶けたようだ。
ダメージも僅かだけど入ってるし、次で終わらせて、こいつの肉を美味しくいただこう。
これだけデカいんだ、国民にも配れるでしょ。
「それじゃあもう一度。炎熱魔法、紅蓮の大渦」
……うむ、牛の悲鳴と共に香ばしい匂いがしてきた。
食欲をそそるね。
吹雪も止んだみたいだね。
このままバーベキューでも。
「マ、マオさん凄いです!」
ピョンピョンと可愛らしく飛び跳ねながら、ユキメが私のところへ来た。
ごめん、ユキメのこと忘れてたわ。
と言うか、もう正体分かってるんだし、元の姿に戻れば?
「あの……私、ワーフォックスなので、この姿が本来の姿なのです」
「ワーフォックス……そんな種族も居るのか」
「数はすくないですけどね……って、マオさん後ろ!」
後ろ?
振り返ると、牛が私達を踏みつぶそうとしていた。
しまった、倒した確認してなかった。
と言うか生きてたのか。
そしてこれはマズい。
完全に反応が遅れてしまった。
このままではユキメにも被害が。
「魔王様、伏せてください」
何だか分からないけど、私はユキメと一緒にその場に伏せた。
「雷電剣、イカヅチ」
「風断剣、ハヤテ」
雷を纏った一閃と風の鎌が牛を襲う。
牛は悲鳴を上げ、今度こそ倒れたようだ。
何とかなったようだ。
「魔王様、お怪我はありませんか?」
私達を助けてくれたのは、ライオスとゼミラニスだった。
まさかこの二人に助けられるとは、思ってもいなかったよ。
うむ、二人の評価は少しだけ上がったよ。