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40 エルステルン山脈ふたたび

 エルステルン山脈。

 魔王城から見えていたけど、近くで見るとまたデカいね。

 私は今、エルステルン山脈の麓に来ている。

 ずっと迷宮にこもりきりだったし、たまには外出も良いかと思った。

 でも麓まで来たところで、私はかなり後悔してる。

 だって寒いんだもん。

 念のため防寒服を着てきたけど、それでも寒い。

 防寒服を着るために魔王シリーズは置いてきた。

 だってゴワゴワするし。

 モンスターが出るらしいけど、キルナス迷宮ほどの強さは出ないでしょ。



「いやはや、再びエルステルン山脈に挑まれるとは」



 胡麻擂り野郎ことゼミラニスが、芸術的なまでの胡麻擂りをしながら、私の方にすり寄ってきた。

 すかさず私は距離をとる。

 悪い奴じゃない。 それは分かる。

 でも、何と言うかこいつは、生理的に受け付けない。



「しかし何故、エルステルン山脈へ行かれるのですか?」



 ゼミラニスの後ろからライオスさんが話しかけてきた。

 貿易関係の話し合いで、たまたまデルセルス領に来ていたらしい。


 ちなみに、本当のことは言えない。

 アナスタシアにだって嘘を付いてきたんだから。

 本当のことを話したら、間違いなく止められるからね。



「色々とね。それよりゼミラニス、入山許可を出してくれてありがとね」

「いえいえ、魔王様の頼みですから」



 その代わり私を贔屓してくれって、顔に書いてあるわ。

 胡麻擂りは良いけどすり寄ってくんな。



「魔王様なら心配は無用でしょうが、最近はモンスターの行動も活発だと聞きます。くれぐれもご注意を」



 忠告傷み入るよライオス。

 では、張り切って行こうか。



「……護衛も無しにエルステルン山脈へ挑むとは。本当に大丈夫だろうか?」

「案ずるなライオス卿よ。魔王様には、私の影共をつけた。我々はただ待てば良いのだ」





 後ろの方で二人の話し声が聞こえちゃった気がするけど気にしない。

 それにしてもエルステルン山脈……さすが雪山だけあって寒いこと寒いこと。

 登山ルートは分かり易いから何とかなってるけど、この寒さは何ともならないね。


 登山ルートは地面が露出しているものの、それ以外は全部雪だ。

 そして、その雪から緑の葉っぱが顔を出してる。

 生命力豊かだね。


 さらに進んでいくと、雪から出ている葉っぱの数が増えてきた。

 ……さすがに不自然でしょ。

 私は葉っぱを調べるために、雪の中に足を踏み入れた。


 足を踏み入れた瞬間、葉っぱのところから何かが飛び出した。



「か、かわいい〜」



 それは真っ白なウサギだった。

 耳は緑色、葉っぱのような見た目になっている。

 目は赤い。

 雪で作ったウサギのような見た目だ。

 ほら、お盆の上とかに乗ってるあれだよ。


 こちらに気づいたウサギはピョンピョンと跳ねていき、少し離れた所で雪に潜った。

 そして、緑色の耳だけを雪から出している。

 なるほど、そうやってカムフラージュしてるのね。

 一応鑑定してみようか。



〔スノーバニー:エルステルン山脈に生息する兎。臆病な性格のため、普段は雪の中に潜んでいる。緑色の耳は自生する草へのカムフラージュのほか、周囲の状況を把握する為に使用している〕



 そっか、臆病な性格だったか。

 驚かせちゃってごめんね?

 さて、ウサギで癒されたことだし、先へ進もう。


 ……と思ったら、さらに癒される光景を目の当たりにしちゃった。

 一羽のウサギが雪から飛び出し、近くの葉っぱを食べ始めた。

 そしていくつか食べていくと、案の定という状況になった。

 そう、別のウサギの耳をかじってしまったのだ。

 慌てて飛び出すもう一匹。

 ウサギって、鳴くんだね。

 いやはや、癒されたわ〜。

 今まで殺伐としてたから、たまにはほのぼのも良いよね?

 よし、気を取り直して先へ進もうか。

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