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29 レイロフの修行風景

 私が悶々としていると、上半身裸の二人は剣を抜いた。

 まさか、このまま斬り合うつもりだろうか?



「レイロフよ、攻撃力とは何だ?」



 お兄様の唐突な、意図の読めない質問に、レイロフ君は困っているようだ。



「攻撃力とは……自身の力、言わば筋力でしょうか?」

「概ねその通りだ。では、守備力とは何だ?」



 うーん、見ている私も意図が読めないぞ?

 と言うより、そう言うことを考えられないくらい見入っちゃってるわけだけどね。



「守備力とは……自身の身を守る力としか」

「そうだな、概ねその通りだ。俺の守備力は今、鎧を脱いだことによって、お前の攻撃力を大きく下回っている。この状態で、俺がお前の攻撃を受けたら、どうなると思う?」



 そんなことは考えるまでもない。

 お兄様の守備力が、レイロフ君の攻撃力を下回っているのなら、お兄様は確実にダメージを受けるだろう。



「そんな事をしたら、俺でも騎士団長にダメージを与えられますよ」

「……本当にそうだと思うのなら、俺を攻撃してみろ」



 お兄様はどうやら、何かを隠してるみたいだ。

 ダメージを食らわないと言う自信を裏付ける何かを。


 少々躊躇ったレイロフ君だったが、言われた通りにお兄様を斬りつける。

 お兄様はそれを剣で防いだ。

 お兄様の守備力は500前後であり、レイロフ君の攻撃を防いだとしてもダメージは入るはずだった。

 そう、はずだった。


 投影されているステータスに変化はなかった。

 ダメージは入るはずだが、何をどうやったのか、お兄様には1のダメージも入っていない。



「手加減をするな、全力で打ち込め!」

「は、はい!」



 うーん、手加減したからダメージが入らなかった……と言うわけでもなさそうだけど。


 次の一撃。

 レイロフ君は渾身の力を込めて、お兄様に攻撃した。

 剣同士がぶつかり合った音から、レイロフ君の本気が伺える。

 しかしまたしても、お兄様にダメージは与えられなかった。

 それどころか、レイロフ君の攻撃が弾かれてしまった。



「何故、俺にダメージを与えられないのか分かるか?」

「……いいえ」



 私にだって分からない。

 もしかしたらお兄様は、ステータスを覆す方法を知っているのだろうか?

 なんて考えていると、お兄様は訓練用の剣を取り出した。

 それを装備してようやく、レイロフ君と同等の攻撃力になった。



「レイロフ、剣を構えろ。俺はこれから、お前に対して打ち込んでいく。お前は、どうすればダメージを負わないのかを考えろ。……ただし、絶対に避けるなよ?」



 お兄様がレイロフ君に斬りかかる。

 素早く重い連撃を、レイロフ君は何とか防いでいる。

 しかし、お兄様の時とは違い、レイロフ君のHPはみるみる減っていく。



「ぐ、うぅ……」

「そうだ、考えろ。そして見出せ。さもないと、死ぬぞ?」



 な、なんて酷な修行なんだ。

 ただ考えろって、せめてヒントくらいは教えてあげようよ。


 今のところ、私も分かっていない。

 守備力とは防衛力だ。

 つまり、守備力の数値は防御行動をとった際の防衛力だ。

 そこに装備やスキル分が追加され、守備力の総数となる。

 そして相手の隙を突いたり、防衛力していない場所を狙えば、守備力と攻撃力は簡単に覆る。

 しかし、攻撃力を覆す守備力となると話は別だ。

 守備力が低ければダメージを受けてしまう。

 それは、私程のステータスであっても例外ではない。

 多少、ダメージのばらつきは出るものの、守備力は攻撃力には勝てない。


 いつか戦った亀のように、相手の攻撃を無力化する技でも使っていれば、ダメージが入らなかったこともうなずける。

 しかし、お兄様は技すら使わなかった。

 これは、とても難しい問題だ。

 そして私も、この“攻撃力を覆す方法”を知っておかなければならないだろう。

 サーペントの強さは、私にとってもトラウマものだから。

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