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#蛟2 憂鬱

 目を覚ますと、そこは水無月麻衣の……私の部屋だった。

 気を失った私は、元の世界に戻されてしまったらしい。

 枕元にあるスマホを取り、時間を確認すると……まだ、夜中の2時だった。

 何だか、ネトゲプレイ中に回線落ちした気分だ。

 サキさんやレイロフさんの事が気に掛かるし、もう一度向こうに行かなければ。

 みんな、無事でいてくれれば良いが。



 スマホのアラームに、私は目を覚ました。

 朝だ。

 清々しい朝だ。

 あの後、もう一度眠りについた私は、シェイムラピアルへ行く事が出来なかった。

 いつもなら、二度寝をしても向こうへ行く事が出来ていた。

 それが、今回は出来なかった。

 可能性として考えられるのは……。



「麻衣、起きてるの? ご飯できてるから、早く降りてきなさい」



 ……食べながら考えよう。

 私は着替えを済ませ、一階のリビングへ向かった。


 リビングには、既に朝食が用意されていた。

 椅子に座り、テレビをつけていつものチャンネルに合わせる。

 今日はアラームの時間に起きる事が出来たし、学校へ行くまでは余裕がある。

 私はゆっくりと朝食を食べながら、さっきの続きを考えていた。


 二度寝しても向こうへ行けなかった。

 それは何故だったのか。

 可能性その1は、強制ログアウトによる不具合。

 話が飛躍してると思われるかもしれないが、最近は特に、向こうがゲームなのではないかと考えるようになってきた。

 私がそんな考えを抱くようになったのは、恐らくサキさんの影響だろう。

 まるで地球に……それも、日本に住んでいたかのような事を、色々と話してくれていた。

 サキさんは詳しく話そうとはしないが、話のネタとも言える部分は、日本の漫画やアニメだったりする。

 その影響から、向こうがゲームの様な世界で、昨夜は強制ログアウトされてしまったなどと考えているのだろう。

 しかし、毎日聞こえる声が告げる、システムと言う単語から、向こうがゲームである可能性は無きにしも非ずだ。


 可能性その2は、向こうの私、カグラが重篤な状態で、目覚める事が出来ないのではというもの。

 あの時、私達はサーペントと名乗る男と戦っていた。

 あの男の強さは、正直言って異常だった。

 レイロフさんが手も足も出ず、サキさんの魔法を受けても無傷だった事から、全てのステータスが3000を軽く超えていたと言うことになる。

 何をされたのかは分からなかったが、気を失う寸前にサキさんが治療魔法を使ってくれたのは覚えている。

 向こうの私は重傷、あるいは重篤な状態になっているから、向こうへ行く事が出来ないのだろう。


 可能性その3。

 これはあまり考えたくないが、向こうの私は既に、サーペントに殺されてしまったのではないかと言うもの。

 レイロフさんも私もやられてしまい、残るはサキさんひとりだけ。

 サキさんを上回るステータスだとすれば、サキさんに勝ち目は無い?

 ……いいや、そんな事はない。

 現に私は、ネトゲ内で幾度も、ステータスの壁を超えてきた。

 私に出来てサキさんに出来ないはずがない。

 根拠は無いが、サキさんはその様に思わせる何かを持っている。

 サキさんなら、サーペントを倒したと信じている。

 だから、その3は考えないようにしよう。



「麻衣、そろそろ時間よ」



 お母さんに言われて、時計に目を向ける。

 時計の針は、7時55分を指していた。

 いやいやお母さん! それはもっと早く言ってよ!

 私はご飯を味噌汁で流し込み、カバンと弁当箱を持って家を飛び出した。


 家から学校までは、歩いて32分掛かる。

 31分でも33分でもなく、必ず32分だ。

 だから私は、いつも7時50分に家を出る。

 そうすれば、学校には8時22分に着く計算になる。

 朝礼まで少し時間がある程度が、私的には丁度良い。

 私は、誰よりも早く学校に来るほどの、優等生らしい優等生ではないからだ。



 ……疲れた。

 遅刻はしなかったものの、朝から走るのは流石にキツい。

 私が椅子にもたれ掛かり、顔を手で扇いでいると、後ろから凛華が話しかけてきた。



「麻衣ちゃん、最近ギリギリな事が多くない?」

「誰のせいだと思ってるの?」

「え〜、だれのせい〜? 凛ちゃん分かんな〜い」



 とぼけた顔がウザい、この上なくウザい。

 無視してやろうか。



「ちょっと、スルーしないでよ!」

「凛ちゃんが変な顔するからでしょ?」

「ちょ、こんな可愛い顔に向かって変とかヒドくな、痛っ!?」



 少なくとも、本の背でおでこを小突くくらいにはウザかった。

 だから、条件反射で手を出してしまうのも仕方がない。



「何なの? 今日の麻衣ちゃんはおこなの?」



 大袈裟におでこを押さえ、若干涙目になっている。



「そうじゃないけど、なんかウザかった」

「それヒドくない?」

「ヒドくない。それに本で叩かれたら、頭に内容が入るかもしれないよ? そうだ、今度から辞書で叩いてみようか」

「すんませんでした。もうからかわないので、辞書だけは勘弁してください」



 そんなコントみたいな事をしていると、教室に先生が来た。

 とりあえず、気持ちを切り替えて目の前に集中しよう。


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