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22 VS蛇2

 星天魔法、流星群。

 それは、空に浮かぶ星々を降らせる上級魔法だ。

 この魔法だけは、使ったら格好良さそうだったから、頑張って覚えたものだ。


 この世界のスキルの恩恵は、攻撃系で言えば精度や威力の向上だ。

 つまり、スキルが無くても強い者は強い。

 現にアナスタシアは、剣術系のスキルをひとつも獲得していないにも関わらず、剣術スキル最上位の、剣神のスキルを持ったベルンハルトお兄様と互角に渡り合ったらしい。

 そう、人は努力次第で、スキルを上回れるのだ。


 何が言いたいのかと言うと、私は星天魔法のスキルを持っていない。

 しかしそれでも、使い方さえ分かれば星天魔法だって使うことができるのだ。

 スキルとは言わば、発動を簡単にするための便利機能だということだ。

 だから、私が星天魔法を使えたって、何の問題もないってこと。

 かなり複雑な魔力構成だから、発動までが面倒だけどね。


 さて、全行程の半分ほどまで魔力構成が終了したけど、レイロフ君がピンチだ。

 レイロフ君の体力の消耗が激しい。

 カグラも治療魔法と治癒魔法全開だから、かなり消耗してる。

 仕方がない。

 レイロフ君には、治療魔法の回復と緩やかな大回復を使って、カグラには再生魔法の魔素生成。

 レイロフ君とカグラの負担を減らす。

 魔力精密操作のおかげで、ふたつ以上の魔力構成も容易だから助かるわ。

 さて、まだ時間が掛かるけど、レイロフ君だけだとそろそろ無理かな?

 仕方がない、私も攻撃に加わろう。


 私はサーペントに向けて炎熱魔法、火球を放った。

 初級魔法の火球ですら、私の魔力で打ち出すと上級魔法の大火球並み。

 それがサーペントに直撃する。

 獄炎魔法、地獄の猛り火で死ななかったらしいけど、それでも、これだけの火球ならダメージはあるはず。



「お? やっとその気になったか、魔王さんよ」



 しかし、サーペントは無傷だった。

 いやいや、おかしいだろ!

 いくら初級魔法とは言え、ダメージくらいはあってもよさそうなものだ。

 しかも今の攻撃で、サーペントのターゲットが私に向いてしまった。

 これはマズいことになったかもしれない。


 レイロフ君はずっと、サーペントの攻撃を剣で受け止めていた。

 それは、サーペントの爪甲に毒が塗られているからだ。

 カグラもそれを分かっていたから、レイロフ君が剣で受け止めきれなかった際に、治癒魔法で解毒していたのだ。


 私が毒の存在に気付いたのは、実はローブの老人が貫かれた時だったりする。

 私達が森から抜けた瞬間、ローブの老人が貫かれた光景を目の当たりにした。

 その時、私は無意識に、ローブの老人に鑑定をしていた。

 みるみる減っていくHPと、HPの横に表示された猛毒状態の文字。

 この時すでに、カグラは治療魔法を施していたが、それだけでは助からないと察知した私は、カグラに解毒もするよう伝えていた。


 さて、話を戻そう。

 レイロフ君はサーペントの攻撃を剣で防いでいた。

 さらに、レイロフ君は鎧を着ている。

 剣で防ぎきれなくとも鎧で受けてしまえば、ダメージはあっても毒は回らない。

 しかし、私はどうだ?


 私は今、魔王シリーズを装備している。

 魔王の装束、魔王のマント、魔王のブーツ。

 そう、鎧ではないのだ。

 圧倒的なステータスにはなるが、所詮は生地。

 刃物で容易に切り裂かれてしまう。

 さらに私は、状態異常耐性のスキルしか持っていない。

 全状態異常に対して、25%の耐性しかない。

 つまり、サーペントに攻撃されたら、ほぼ確実に猛毒状態になってしまう。

 武器も持ってないから、レイロフ君のように攻撃を受け止めることもできない。

 素早さ2950の反応速度でも、サーペントの動きは速いと感じている。

 全ての攻撃を避けるのは無理だろう。

 これは非常にマズいと言うか、こいつどんだけ強いんだ?

 SPは使ってないから、サーペントを鑑定してみるか。



〔対象は鑑定に対して抵抗(レジスト)しました〕



 LVすら表示されず、鑑定した瞬間にレジストされてしまった。



「悪いが、オレに鑑定は通用しないぜ?」



 これは本格的にマズいかもしれない。

 サーペントの実力が分からない以上、下手に行動もできない。

 それでも、流星群さえ発動させれば勝てるはずだ。

 その為にも、流星群を悟られてはならないし、発動直前にはサーペントを拘束しなければならない。

 流星群は着弾までに時間が掛かるから、確実に当てなければ全てが無駄になる。

 こういう展開、ゲームでは間違いなく燃える展開だ。

 これはゲームじゃないから、気が乗らないことこの上ないけどね。



「あいつに、魔王さんだけは殺すなと言われているんだが、死んでなきゃどんな状態だった良いって事だよな!」



 恐ろしいことを口走ってるぞこいつ。

 それと同時に、サーペントは私に向かって走り出した。

 やっぱり速い。

 でも、見えないほどではない。

 なんとか回避し、サーペントから距離を取る。

 なるべく近寄らせないように、私は火球で応戦する。

 私に武器はない。

 だったら、遠距離特化型の立ち回りをするしかない。

 ダメージはなくとも隙はできる。

 その隙をレイロフ君が突いてくれれば、流星群を使わなくても勝てるかもしれない。



「ああ、ウザってぇ!」



 突如叫んだサーペントの声に、思わず体がビクッとなってしまった。

 いきなり叫んだりするのはやめてもらいたい。

 もしかして、遠くからチクチク魔法を撃たれてご立腹かな?

 なんて考えてたら、サーペントの腹がボコボコと膨れ上がる。

 何かが、サーペントの腹の中で蠢いている。

 キモイキモイキモイキモイ。

 その何かはサーペントの喉元まで上り、次の瞬間サーペントは、大量の何かを吐き出した。

 吐き出されたものの正体を認識してしまった私は、あまりの気持ち悪さとグロさと恐怖で、危うく意識を手放してしまうところだった。


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