14 魔王の推測
会議を終えた私は、足早に図書館へ向かっていた。
賊の狙いを探るために、私ができることをやらなければならない。
賊の狙いを探るには、私や皆が知らない、魔王についての知識が必要だ。
それも、歴代の魔王の中でも最強と謳われた初代魔王、セラメリアについての知識だ。
実は彼女についてのことは、歴史書にはあまり書かれていない。
ただ、歴代最強と言われているだけ。
どんな功績を残したのか、どれほど強かったのか、どんな人だったのか、その全てが語られず、まるで隠されているようだった。
しかし、完全に情報がないとも言い切れない。
魔王城の書庫なら、多少は記録が残っていても不思議ではない。
だから私は、図書館に向かっているのだ。
私は賊の狙いを、会議中ずっと考えていた。
身の代金目的なら、私ではなく他の貴族をねらえば良い。
少なくとも魔王城よりは、警備が薄いはずだ。
わざわざ城に忍び込み、私を誘拐するにはあまりにもリスクが高すぎる。
そもそも、金銭が目的なら宝物庫を襲撃した方が手っ取り早いだろう。
それらを考えると、金銭が目的とは考えにくい。
では、何が目的だったのか?
前世、私はネット小説なんかも、好んで読んでいた。
更に、ゲームやアニメ、漫画の知識を総動員すると、ひとつの結論にたどり着いた。
それは、力の悪用。
アニメや漫画の悪の組織は、往々にして邪神や魔王や闇を利用して、強大な力を手に入れようとするが、その目的は大体が世界征服だったりする。
もちろん、この知識が宛になるわけではない。
むしろ、話が飛躍しすぎだと笑われるところだろう。
しかし私は、とてつもない力を持っているという自覚がある。
そして、魔法やモンスターの存在する世界で生きている。
そんな世界だから、そう言う悪の組織が暗躍していて、魔王の力を狙っている。
その実行犯が今回現れた賊だったと言うのは、はたして考えすぎだろうか?
しかし、もし私の推測が正しかったら?
賊は私を狙って、もう一度現れるだろう。 私の推測が当たっていようと外れていようと、私は魔王の力について知らなければならない。
それは好奇心ではなく、もしかしたら使命なのかもしれない。
そんな予感に、私は突き動かされているのだから。
さて、図書館に着いたことだし、まずはロロちゃんを呼ぼう。
図書館内は魔法禁止だから、図書館の外で話さなきゃならないからね。
と言うわけでロロちゃんを拉致ってきました。
「あ、あの、何かご用でしょうか?」
困惑してる表情も可愛いもんだ。
とりあえず風音魔法。
「ロロちゃん、あなたに頼みたいことがあるの」
「まさか魔王様、コミュ障脱却したのですか?」
ロロちゃんには説明してなかったか。
ざっと説明して本題に入ろう。
「風音魔法」
「なるほど」
それだけで分かったのか?
いや、分かったならよし。
「図書館の書庫に入りたい。何とかできないかな?」
「書庫ですか。魔王様なら構わないと思いますが、一応司書に確認をしてきます」
ロロちゃんは足早に、図書館の奥へと消えていった。
しばらくしてロロちゃんが戻ってきた。
何か紙を持ってるけど?
「許可が出ました。こちらに手を翳してください」
言われた通り、白紙の紙に手をかざしてみる。
すると、紙に魔法陣と文字が浮かび上がった。
「はい、魔王様の魔素印を確認しました。これで、書庫への立ち入り許可証が発行されました。この許可証を持って図書館奥の大扉に触れると、魔王城の書庫へ行くことが出来ます。書庫へ着きましたら、司書の指示に従ってください」
ふむ、よく分からんけど分かったよ。
さて、図書館の奥の大扉。 これだね。
これに触れって言ってたけど、それで開くのかな?
とりあえず触れてみると、懐かしい浮遊感。
これも転送なのね。
この浮遊感は酔うからやめてほしい。
そうこう思ってる内に、魔王城の書庫に着いたようだ。