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09 襲撃

 私は馬車に揺られながら、アナスタシアへの言い訳を必死に考えていた。

 正直に話すと、カグラに迷惑がかかるかもしれない。

 しかし嘘を言うにして、何と言えばいい?

 どこに行っていたと言えばいい?

 私を探すために、カグラの両親のもとに書簡が送られていた。

 それはつまり、近隣諸国には捜査の手が回っている可能性があると言うことだろう。

 嘘をついたところでバレるんじゃなかろうか? 私はどうすれば良い?


 私が必死に言い訳を考えていると、突然馬車が急停止をした。

 その弾みで、私は椅子から落ちてしまった。

 痛いな……あちこちぶつけてしまったではないか。

 どうして馬車が止まったのか、私は窓から前方を確認する。


 そこに居たのは、数匹の狼だった。

 こういう場合でも、魔王のスキルのスキルで逃げられないのかな?

 数は少ないし、強行突破もできなくはなさそうだと思ったが、それも無理なようだ。

 馬車の横、背後にも狼が居る。

 囲まれてるわこれ。

 切り抜ける? いやいや、運転手のおっさんと馬に被害がいかないとも限らないんだよね。

 このおっさんも馬もサクラノ王国のものだから、傷物にしたら国際問題だろうね。

 さて、どうしたら良いのやら。

 ……って、考えてる場合でもないんだよね。

 おっさんは逃げろと言ってるけど、狼は牙を剥き出しにして今にも襲いかかってきそうだ。

 と言うか、少しでも動けば襲いかかってくるんだろう。

 おっさんの声が狼を刺激しすぎないことを祈るしかないけど、それは無理な話だね。

 だってもう、私の目の前に狼の牙が迫っているんだから。


 とりあえず、その口は閉じてろ。

 私は迫り来る狼の大口を、下からぶん殴り無理やり閉じてやった。

 よし、まず1匹。

 しかし最初の1匹を皮切りに、他の狼が襲いかかってきている。

 ほぼ一斉だった。

 これはどうしようもない。

 今から魔法なんか使ってる暇はないし、私の素早さを持ってしても全てを止めることはできないか。

 どうしたことかと、素早さに伴う反応速度のなか考えていると、襲いかかる狼の1匹に大量の矢が刺さった。

 それと同時に、馬車の周囲に矢の雨が降り注いだ。

 わお、何と言う地獄絵図でしょう。


 しばしの矢の雨が終わり、辺りには矢が刺さりまくっている。

 綺麗に馬車の周りだけ狙ったようだ。

 さすがに狼達は全滅だった。 ……1匹を残して。



〔LV:20〕

〔名前:ヒューイ〕

〔種族:ジュエルウルフ〕

〔HP:530〕

〔MP:250〕

〔SP:330〕

〔攻撃力:180〕

〔守備力:90〕

〔魔力:130〕

〔魔法耐性:100〕

〔素早さ:300〕

〔統率6〕〔嗅覚9〕〔俊敏〕〔絶対逃走〕



 額に赤い宝石のついた狼が、私の方を睨んでいる。

 こいつがリーダーか。

 しかし、こいつは絶対逃走のスキルを持っている。

 つまり、私から逃げることができるのだ。

 逃げてくれればありがたい、と言うか逃げてくれないかな?

 私としては、あの矢の雨を避けきったお前とは、できれば戦いたくない。

 さあ、どう出る?


 何てことを考えてると、馬車のもとに馬に乗った騎士達が現れた。

 この騎士達が着ている鎧には見覚えがある。

 あれは、セラメリア王国騎士団の正装だ。

 何やら色々と話してるけど、私を見つけた的なことを言ってるんだろうね。

 がやがやしてるから、誰が何を言ってるかは分からないけどね。

 それよりも、さっきの狼のリーダーは?


 狼はまだ逃げていなかったけど、さすがにこちらに襲いかかる意思はなさそうだ。

 これで逃げてくれれば、騎士達も深追いはしないでしょ。

 そんなことを考えてる時だった。

 狼はけたたましい雄叫びを上げた。

 そして、狼は私を睨みつけたあと、凄い速さで逃げていった。

 いやはや、あんなモンスターもいるんだね。

 あいつとは、もう二度と会いたくないところだ。



「魔王様、ご無事ですか?」



 フルフェイスの騎士が馬車の近くに来た。

 ああ、騎士団長のベルンハルトお兄様だね。

 颯爽と駆けつける辺り、さすが騎士様だ。

 でも、フルフェイスを一向に取らないし、もしかしたらシャイなのかしら?

 とりあえず無事なアピールをしておこう。



「それは何よりです。さあ、ここからは我等騎士団が護衛をいたします。魔王城へ戻りましょう」



 さて、安全になったことだし、アナスタシアへの言い訳を考えないとね。





 とある場所。



「おいおい、なんてザマだよ。何のためにアイツ等を使ったと思ってんだ」

「し、しかし、所詮奴らは狼ですし」

「あ? 言い訳すんのか?」

「い、いえ、そう言うわけでは」

「……お前、ムカつくな。蛇に睨まれた蛙は、大人しく喰われてりゃいいんだよ!」

「ひ、ひぃぃ!」



「おい、こいつを処分しとけ」

「はっ!」

「ったく、役立たずのクズ共が。しかし、あいつの顔は覚えたからな。少しは役に立ったか」



 男は爪甲から滴り落ちる血を、長い舌で舐め取った。

 その目はまるで蛇の様だった。

 笑みを浮かべる口元には、鋭利な牙が備わっている。



「待っていろよ? 必ずお前を捕まえてやるからな。魔王さんよ」


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