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08 転生者と

「サキさん、Morpheusという言葉に聞き覚えはありますか?」



 おや、これは久々に聞く名前が出てきたものだ。

 Morpheus……モルペウス、モルフェウス、モーフィアスと呼び方は色々だけど、これはギリシャ神話に登場する夢の神の名前だ。

 それと同時に、私が前世でプレイしていたネトゲ内で、私が所属していたチームの名前だ。

 ずっと一匹狼で戦ってきたけど、どうにも惹かれる名前だったからこのチームに加入した。

 チームランクは高くはないが、チームとしての強さはなかなかのものだった。

 もちろんMorpheusと言う名前は知っているが、カグラが聞いているのは神の名前の方だろう。

 カグラがネトゲなんか知ってるはずがないからね。



「では“かみりん”と“マイ”と言う名前に心当たりは?」



 うーん、何だか尋問されてる気分だけど、その2つの名前にも聞き覚えがあるんだよね。

 さっき言ったネトゲのチームメンバーの名前だ。

 かみりんがリーダー、マイがサブリーダーだ。

 この2人は、チーム内では群を抜いて強かったから、よく覚えてる。

 かみりんは最低限の課金をするタイプで、マイは私と同様に無課金タイプだ。

 クエストやチーム戦に一緒に行ったっけ。

 カグラの質問の意図が読めないと言うか、なんで2人の名前を知ってるんだろう?

 ……まあ良いか。

 知ってる名前だし、とりあえず頷いておこう。



「そう……ですか」



 何やら色々と考えてるようだけど、いったい何なんだ?

 Morpheusにかみりんとマイ。

 偶然……ではないよね。

 それじゃあ、こっちからもぶっ込んでみますか。


 私からカグラに質問。


「え?」


 聞いてあげてるんだから、私の質問にも答えるのが礼儀じゃないかな?


「……分かりました、どうぞ」


 ブレイブ・アンド・ザ・アークエネミーって言葉に聞き覚えは?


「ま、まさか……いや、でも……」


 かなり動揺してるってことは、やっぱり知ってるみたいだ。

 ブレイブ・アンド・ザ・アークエネミー、通称ブレアクは、私がプレイしていたネトゲのタイトルだ。

 そう、私がMorpheusに所属していたゲームってのが、このネトゲだ。

 少なくともカグラは、その名前を知っている。

 肯定も否定もできずに狼狽えているのが良い証拠だ。

 と言うことは、カグラは日本に住んでいたことがある、と言うことになるが?

 ……まさか、カグラも私と同じように、転生してこの世界に?

 ここまで的確に聞いてくると言うことは、カグラは私のことを転生者だって思ってるということなのだろう。

 ここは、単刀直入に聞いてしまった方が良いのかもしれない。


 カグラってもしかして、私と同じように……。


 って聞こうとしたところで、部屋の外からカンナさんの声が聞こえてきた。



「カグラ、マオさん。お話に夢中になるのは良いことですが、夢中になりすぎて時間を忘れてはいけませんよ?」



 あらら。

 要約すると、いつまでも話してないでさっさと寝ろ。 と言うことですよね。

 仕方がない、このくらいで切り上げて、今日はもう休もうか。


「そ、そうですね、そうしましょう」


 カグラの安堵感が見て取れるが、それは私もだったりする。

 あのままカグラに聞いてたら、私達は今まで通りの友達でいられただろうか?

 うーん、この件は慎重に進めないといけないな。


 とりあえず寝よう。

 カグラと話して目が冴えちゃったけど、布団に潜ればすぐに眠くなるさ。

 と、言うわけで。


「カグラ、おやすみ」

「あ……はい、おやすみなさい」


 声送りの何と便利なことか。

 ちょっとした挨拶にMPを消費するのはどうかと思うけど、MPとSPは寝れば回復してるみたいだから特に問題ないね。

 さて……明日は……何を……しようか……な……。





「サキさん。サキさん。起きてください?」



 この声……だれ?

 カグラじゃないみたいだけど……今は夢うつつ。 思考するなんて、できるはずがない。



「サキさん。起きてください?」



 もう一度名前を呼ばれて、意識が鮮明になってくる。

 私を呼ぶのはだれだ?

 どうして私の名前を呼ぶの?

 私は今、サクラノ王国にいるから、私の名前を知ってる人はいない……。

 いやいや、ちょっと待て!

 これはもしかしたら非常事態なのではないか!?

 私はその場から飛び起きていた。



「おはようございます。やっとお目覚めですね、サキさん」



 部屋の中には、カンナさんが座っていた。

 いや、それよりもだ。

 どうしてカンナさんが私の名前を知ってるの?



「サキさん。魔王城から、貴女の行方を探す書簡が送られてきましたよ? 魔王城に戻った方が、宜しいのではないでしょうか?」



 い、いやいや、ちょっと待って!

 名前どころか私の素性までバレてんですけど!

 なんで?



「あらあら。何故私が、貴女の事を知っているのか不思議そうな顔をしていらっしゃいますね。しかし、そんな事を気にしている場合でもないのではありませんか?」



 そ、それはそうだけど。

 早く帰らないと、アナスタシアが何て言うか分かったものじゃないけど。

 ……悩んでも考えても仕方がないし時間もないね。



「カグラには、わたくしの方から伝えておきます。安心してください。それから、ワノ領の入り口に馬車を用意しました。ご利用なさってください」

「そこまでしていただけるなんて、何とお礼を言えば良いのか」

「無理をなさらないでください。魔法を使って話しをするのも大変でしょう。さあ、急いでお戻りください」



 それすらも見破られてる……カンナさん、あなたは何者なのですか。

 私はカンナさんにお礼を言って、ワノ領の入り口へ急いだ。


 ワノ領の入り口には、馬車が停められている。

 これだね。

 私は馬車に飛び乗った。

 それと同時に馬車が走り出す。

 来た時とは比べものにならない速さで、馬車はセラメリア王国へと走っていった。

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