表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/188

06 サクラノ王国

 関所を抜けて、また馬車に揺られること数分。 馬車はようやく停止した。



「着いたようですね。さあ降りましょう」



 馬車から降りた私の目の前には、和風の都が広がっていた。

 行き交う人々の服装は和服……ではなく洋服だけど。

 私が街並みに見とれていると、カグラが目の前に来て深くお辞儀をした。



「ようこそ、我が故郷サクラノ王国へ」



 お、おう。

 何だかここへ来た途端、カグラが元気になった気がする。

 一週間ぶりに故郷に帰ってきたわけだし、嬉しいのかもしれないね。

 それにしても、見れば見るほど日本みたいな所だ。

 とても居心地が良いのはそのせいか。



「サキさんは、サクラノ王国は初めてですよね? 私がご案内します」



 いつも以上にアクティブなカグラは、こちらを否定させないほどの勢いがある。

 確かに初めて訪れる場所だし、案内してくれるのはありがたいことだ。

 美味しいお店を重点的に案内してくれることを期待してるよ?



「それでは案内をさせていただきます。この場所はサクラノ王国のワノ領になります。ここは貿易が盛んな為、王都並みの賑わいを見せる街となっています」



 確かに、セラメリア王国の大通りくらい賑わっていた。

 建ち並ぶ食料品店の店先には、魚と思しきモンスターや、その肉などが並べられている。

 セラメリアは肉だったけど、こちらでは魚が主流なのだろうか?

 それとも、近くに海でもあるのかな?

 薬屋や魔法商はセラメリアと変わらないけど、それ以外の店はさすが和の国といった装いだ。



「因みに、ワノ領と王都のあるメルテラ領、そして私の実家があるエムリシア領以外は和風ではありません」



 そうなの?

 何だか混乱するし、そう言う文化は統一されるべきだと思うけど?

 ……って、日本も大して変わらなかったわ。



「エムリシア領までは遠いのですが、サクラノ王国では各領土に転送方陣を設置しています。なので、領土間の行き来は楽なのですよ」



 それは便利だ。

 と言うことは、カグラの家に行く前に散策する時間はあるってことだよね?



「少しだけなら、寄り道しても大丈夫でしょう」



 やったね。

 それじゃあまずは、食べ物の美味しい店を案内してよ。

 朝ご飯を抜いてきたから、お腹が空いてるんだよね。


 カグラに案内された店で出された料理は、やっぱり和食だった。

 米に漬け物にミソスープ。

 そして魚……なんだろうけど、これはどう見てもモンスターだよね?

 見た目は魚なんだけど、鋭い牙や格好良い角が生えてる。

 味は魚だったから問題はなかったけどね。

 食事を済ませてしばらくの散策を終えたあと、私達は転送装置のある場所へ向かった。


 そこは楼閣のような建物だった。

 大きなそれは、まさに荘厳の一言だ。

 地球なら文化遺産にでも登録されそうな建物に、多くの人々が出入りをしている。

 中に入ってみると、そこは広い空間だった。

 他に部屋はなく、広い部屋の中央に巨大な魔法陣が描かれていた。

 カグラが使ったものよりも大きいのではないだろうか?

 魔法陣の前には、2人の兵士が立っている。

 2人とも顔がそっくりだ。

 双子かな?



『これはカグラ殿。お戻りになられていたのですね?』



 おおう、全く同じタイミングで同じことを言ってるよ。

 やっぱり双子なのか?



「はい、両親から戻ってくるよう手紙をいただきました」

『そうでしたか。……そちらの女性は?』



 ……しまった。

 ここで魔王なんて知れたら大騒ぎになってしまう。

 カグラ、上手く誤魔化してくれ。



「彼女は……私の友人です」

『ご友人の方でしたか。サクラノ王国ワノ領へようこそ』



 礼儀正しくお辞儀をする兵士達に、私もつられて頭を下げる。



『カグラ殿、ご両親に会われると言うことは、エムリシア領へ向かわれるのですね?』

「はい」

『では、こちらの手形をお持ちください。ご友人の方も』



 私達は小さな手形を渡された。

 通行手形ってやつだろうか?


《この手形には、その領土の座標が登録されています。この手形を持って魔法陣に乗れば、登録された座標へ行くことが出来るのです》


 なるほど、そう言うシステムか。

 私達が魔法陣の中心に立つと、魔法陣が輝きだした。

 やっぱりこの、何とも言えない浮遊感は慣れないな。


 浮遊感が終わると、さっきの広い部屋?

 いや、色合いや内装のデザイン少し違うから、転送は成功したようだ。

 目の前には、さっきの双子兵士が立っている。

 ……四つ子?



『カグラ殿、おかえりなさいませ』

「ただいま戻りました」

『そちらの方はご友人ですね? 連絡は受けています。ようこそエムリシア領へ』



 仕事が早くて助かるけど、早すぎないか?

 魔法陣での移動は一瞬だし、そんなに早く連絡が行くものだろうか?


《転送方陣の兵士は全て、自動人形(オートマタ)なのです。彼らは全ての情報を共有しているため、兵士間の情報の齟齬(そご)が起こらないのです》


 わお、ハイテク技術。

 兵士達の表情も人間そのものだし、サクラノ王国凄いな。


 手形を兵士に返した私達は、カグラの家へと向かっている。

 手形はその都度発行だから、返さなきゃならないらしい。

 行きの座標しか登録されてないから、それ仕方がないね。

 エムリシア領もワノ領ほどではないが、それなりの賑わいを見せている。

 こういう雰囲気は大好きだ。


 しばらく歩いていると、目の前に大きなお屋敷が見えてきた。

 まさかカグラって、こんな立派なお屋敷に住んでたのか?


「立派だなんてとんでもない。ただ無駄に広いだけですから」


 カグラさん、それは嫌みにしか聞こえないよ?


「それに、魔王城の方が広いじゃないですか」


 あっちはお城だからノーカンですよカグラさん。

 こんなに広いお屋敷に住んでるなんて、カグラはやっぱりお嬢様だったんだね。

 カグラのご両親に、ちゃんとご挨拶できるかしら?

 緊張してきたけど、なるようになるしかないね。

 こんな事もあろうかと色々と練習してきたし、その成果を試すには良い機会だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ