転生して目覚めた場所が洞窟って
ようやく、体が動かせるようになった。
どうやら、転生が終わったみたいだ。
ひんやりとした物に、体を押し付けられてる感覚。
床? それにしてはゴツゴツしてる。
辺りを見渡しても、真っ暗で何も見えない。
〔暗闇内での活動のため、暗視のスキルを獲得可能です。暗視のスキルを獲得しますか?〕
また、頭の中に“声”が響いた。
でも、今まで聞いてきた“声”よりも、どこか柔らかい気がする。
このままではどうしようもないし、とりあえず「はい」っと。
〔承認しました。暗視のスキル獲得。暗視のスキルを肉体に適用。最適化します〕
灯りでも照らしたかのように、辺りが明るくなる。
改めて辺りを見渡す。 岩の壁に岩の天井に岩の地面。
そして、目の前には澄み渡った湖。
ここは、洞窟?
目の前のは地底湖?
転生先が洞窟の中とか、嘘でしょ?
ないわー。これはないわー。
転生だから、普通に赤ちゃんとして産まれてくるかと思ったのに、目線の高さから、もしかしたら成人してるのかも?
それもないわー。惑星が違うって事は、日本語は間違いなく通じないだろうし、赤ちゃんの頃から言葉を覚えれば、それなりに会話だって出来たのに。
はぁ。溜め息しか出ない。
〔他者とのコミュニケーションの為、翻訳、通訳、同時通訳等の言語スキルを獲得可能です。これらのスキルを獲得する事により、他者とのコミュニケーションが可能となります。スキルを獲得しますか?〕
何というご都合主義なスキル……でも、この世界で生きていくには、あって損することはない。
と言うわけで、こちらも「はい」っと。
〔承認しました。翻訳、通訳、同時通訳のスキルを獲得します。スキルを肉体に適用。最適化します〕
そこで私は、ある過ちに気付いてしまった。
私、前世はコミュ障だったと。
こんな便利スキルを手に入れたが、コミュ障の私に使いこなせるのか?
無駄にスキルを獲得してしまった気がしてならない。
しかし今のところ、定番であるスキルポイントを使ったような事を言っていないし。
〔現在獲得しているスキルは、全てノーコストとなります〕
嘘!?
こんなに便利なスキルなのに、対価無しで貰っちゃって良いのだろうか?
でも、スキルにスキルポイントか。
もしかしたら、転生物ではお馴染みの、鑑定のスキルもあるのでは?
〔あらゆる物を調査するため、鑑定のスキルを獲得可能です。鑑定のスキルを獲得しますか?〕
やっぱりあった鑑定のスキル。
これさえあれば、今後の活動とか、かなり楽になるはず。
とりあえず、ここがどこなのかを鑑定。
自分の現在位置くらいは把握しておきたい。
私は、岩の壁に向かって「鑑定」と念じてみた。