142 師の教え
ロムルス城１Ｆ。
レイロフとセルバンテスは、激しく剣を交えていた。
異形と化したセルバンテスの攻撃力をものともせず、レイロフはセルバンテスの攻撃を上手く凌いでいる。
理性をほぼ失っているセルバンテスもさすがに焦りを覚えたのか、レイロフ目掛けて上級魔法を放った。
しかし、セルバンテスは元々の魔力が低い。
今のレイロフなら、魔法を切り裂くことは容易なことなのだ。
「オオォォオオオオ！ スベテ……スベテ、コワス！」
「本当に……お前は大馬鹿野郎だ！」
レイロフは走り出した。
それをセルバンテスが迎え撃つ。
セルバンテスの右手剣の攻撃を斬り払い、左手剣の攻撃を体勢を低くして回避した。
しかし、セルバンテスの脇から、尻尾による斬撃がレイロフに襲い掛かる。
それを辛うじてジャンプで回避し、真上からセルバンテスの体を切り裂いた。
「チッ、浅かったか」
「オオォォオオオオ！！」
セルバンテスは両手を横へ薙ぎ払う。
どうにか剣で防いだものの、その衝撃は凄まじく、レイロフの体は吹き飛び壁へ叩き付けられた。
「ふ、ふざけるなよ……」
レイロフは壁から離れ、再び剣を構える。
確かにダメージは大きいのだが、それ以上に。
「騎士団長が憧れた男が……こんなに弱いはずがねえ！」
「ヨワイ……？ 違ウ！ ワレハ、最強ノ剣士ナリ！」
「いいや、弱いな……」
足元はふらつき、視界も少しぼやけてきたが、レイロフはそんな自分に一喝を入れるように叫んだ。
「お前が騎士団長の言う通りの男なら、俺は今頃死んでいるはずだ！ 理性を失い、全力を出してこの程度なのかよ！」
「黙レ！」
セルバンテスは突進し、その速度を活かして斬りかかった。
それさえもレイロフは受け止める。
「ワレハ、ワレハ護ルノダ！ 護ラネバナラヌノダ！」
「そうだ。お前は……大切な者を護りたかったんだよな」
レイロフはセルバンテスから距離をとり、剣を高く掲げた。
レイロフの剣が白い光に包まれる。
「閃剣流奥義、破魔の白刃！」
白き刃による一閃は、セルバンテスの体を貫いた。
「オオォォオオオオ！！」
「これは、お前の師匠の技だ。騎士団長が教えてくれたよ」
レイロフが白刃を引き抜くと、セルバンテスはその場に膝をついた。
傷口からは黒い靄のようなものが溢れ出し、セルバンテスの体は次第に、人の姿へと戻っていった。
「き、貴様……何故だ！」
「俺は、魔王様をお守りすると、この剣に誓ってるんだ。だから俺は、最強と謳われた剣士、セルバンテスを超えたい。異形のお前ではなく、剣士としてのお前をな」
その言葉を聞き、セルバンテスの脳裏を過ったのは過去の記憶だった。
