139 ロムルス城1F
城内には数名の兵しか配備されていなかった。
恐らく、外にほぼ全ての兵を配備しているためだろう。
進むのは楽だけど、セラメリアが自身を守るための兵を用意していないはずがない。
……ここからは強敵との連戦と考えた方が良いだろう。
ロムルス城1F大広間。
上に昇る階段はここにしかない。
そして……やっぱり待ち構えてる奴が居るね。
予想外の人物だったけど。
「やはり、突破したのか」
二本の剣を携える、大柄な剣士。
セルバンテスだ。
こいつら隊長は全員捕らえたはずだけど、いつの間に脱獄した?
「あの程度の見張りを欺くなど造作もない。……我は強くならねばならぬ。その為には、どれほど我が手を汚そうとも」
セルバンテスの体が、大きく変化していく。
「どれほど醜悪な姿になろうとも」
「どれほど理性を失おうとも!」
セルバンテスの姿は、おぞましいモンスターの姿へと変貌した。
体躯は二倍程になり、両手に構えていた剣は腕と一体化している。
更には棘のついた尻尾まで生やし、その先端も剣状になっている。
セルバンテスは、あの時以上の力を手に入れているようだ。
誰が力を与えたのか、容易に想像できるけどね。
「ワレハ……ツヨク……ツヨク……オオォォオオオオ!!」
「力を求めすぎた結果がこれとは、救えないな」
レイロフ君が前に出て、剣を構えた。
レイロフ君、まさか?
「スベテ、コワス! スベテ、コロス!!」
セルバンテスは魔力を解放し、とてつもない速さで突進してきた。
それをレイロフ君が防ぐ。
「オオォォオオオオ!!」
「くっ! 確かに重い……。しかし、それでも、その程度の力なのかよ! 騎士団長が憧れた、お前の実力ってやつは!」
レイロフ君は足に力を入れ、セルバンテスの突進を受け止めた。
「コワス! スベテ、コワス!」
「壊させるかよ。お前にはもう、何も壊させねえ! それが騎士団長の、ベルンハルトの願いだ!」
レイロフ君はセルバンテスを押し返し、剣撃を浴びせる。
セルバンテスは雄叫びを上げるも怯まず、レイロフ君に斬りかかった。
その攻撃を、レイロフ君は全て凌いでいく。
と言うかレイロフ君、いつの間にそんなに強くなってたの?
「魔王様、先に行ってください。セルバンテスは、俺が止めます」
「……分かった。みんな、行こう」
「ありがとうございます、魔王様」
「ただし、負けることは許さない。必ず勝ちなさい」
「……分かりました!」
私達は階段へと走り出す。
「ニガスカ!」
「おっと、お前の相手は俺だ、セルバンテスよ」
背後からセルバンテスの雄叫びと、激しく剣を交える音が聞こえる。
でも、私は振り返らない。
今は、セラメリアを止めることが最優先だから。