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138 三万

 ネレディクト帝国は周囲を高い壁で囲んでいた。

 転送の妨害もされているようで、直接セラメリアのところへ行くことはできない。

 飛んで侵入することも考えたけど、上空はセラメリアの魔力の影響か嵐が発生している。

 そんなところへ飛び込むなんて自殺行為だ。

 つまり、正面突破しかない。

 最初からそのつもりだったから問題ないけど。


 私達の目の前には巨大な門。

 どうぞ開けてください、中には罠がびっしりだから。 と言われてるようなものだけど、その罠を全て突破した上で、セラメリアにドヤ顔してやる。


 門を潜ると、そこには無数のネレディクト兵とモンスターが待ち構えていた。

 ……どれだけ居るのか数えきれない。



「ほら、サキさん。無双ゲーの始まりだよ」



 何故かリンちゃんは目を輝かせている。

 無双ゲーは前回のネレディクト戦でお腹いっぱいなんだけど……。



「さあみんな、地獄に飛び込むよ!」



 リンちゃんが先陣を切り、ネレディクト兵を薙ぎ倒していく。

 セラメリアまで温存しておきたかったけど仕方がない。

 このまま突撃しよう。


 こいつらは人型であっても全てモンスターだ。

 それは、以前捕虜にしたネレディクト兵が言っていたから間違いないだろう。

 とは言えこの数だ。

 数の暴力とは、なかなか厄介だね。



「神光剣技、バニッシュ!」

「神光魔法、ギルティ・レイ!」

「炎熱剣技、猛火連斬・円!」



 ちょっと待てお前ら!

 これからラストバトルだってのに、なに普通に大技ぶっぱしてんのよ!



「ラストバトルってことはラストダンジョンでしょ? 回復の泉みたいなのが間違いなく配置されてるから、大技ぶっぱでも問題ないよね」



 悪びれた様子もなく、リンちゃんは大技を放っていく。

 いや、セラメリアのことだから、そういった類いのものはないんじゃないかな?



「ありますよ」

「あるの!?」

「はい。ネレディクト城内の噴水から流れる水が、回復効果のある水でした。……と、報告書にも書いたとおもうのですが」

「報告書で上げるから、私の頭には入ってないよ」

「胸を張って言うことでもないと思いますが……」



 何はともあれ、回復ポイントがあるなら温存する必要もない。

 一気に突破してやろうじゃない。



「貴様等! たかが数匹のチビ共相手に、何を手こずっている! こちらは三万の大軍勢だ! 数で圧倒しろ!」



 兵を指揮していたのはグラッドだったか。

 そう言えば、こいつだけ取り逃がしてたんだよね。

 ……相変わらず、こいつは苦手だ。

 できれば戦わずに突破したいけど、それを許さないのがユキメだったりする。


 ユキメはグラッドの姿を確認すると、ネレディクト兵の頭上を飛び越え、グラッドに攻撃を仕掛けた。

 ユキメにとってグラッドは仇だし、自分の手で決着を付けたいんだろう。



「……ほう、いつぞやの女狐か。まだ俺を恨んでいるのか?」

「恨んでいないと言えば嘘になります。しかし、私達はセラメリアを倒しに来たのです。貴方ごときに、サキさんの行く手を遮らせません! 幻想召喚:鎧牛!」



 ユキメの足元に巨大な魔法陣が描かれ、その中からいつか戦った鎧牛が出現した。

 実はこの鎧牛、幻想と名が付く通り本物ではない。

 あの時戦った鎧牛をイメージし、魔力を練り固めて作られたものだ。

 セラメリアのモンスター生成に近いけど、こちらは意志が宿っていない。

 魔力を流し込んで操作することのできる、操り人形みたいなものだ。



「私が道を切り開きます! サキさんは城へ向かってください!」



 ユキメは鎧牛に飛び乗り、ネレディクト兵を撥ね飛ばしていった。

 グラッドは……鎧牛の突進を止めようとしてるけど、鎧牛のパワーの方が上回ってるようだ。



「サキさん、早く!」

「でも、ユキメを置いていくなんて!」



 ユキメの加勢に向かおうとする私を、レイロフ君が遮った。



「魔王様、行きましょう。ユキメが切り開いてくれた道、無駄にするわけにはいきません」

「でも!」

「貴女達しか、セラメリアを倒せる者は居ないのです! そしてユキメは、その貴女を信じたのです! ユキメの期待を、裏切らないでください!」



 私のことを、そこまで信頼してくれているのか……。

 正直な話、セラメリアを倒す方法なんて、全く思い付かない。

 あの強さに、どうすれば届くのか分からない。

 でも、やるしかない。

 だったら、私にできるのは。



「ユキメ!」

「は、はい!」

「……ここは任せた」

「了解です!」



 私達はユキメが切り開いた道を駆け抜け、城内へと突撃した。

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