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137 大敗

 負けた……。

 いや、そもそもあれは、戦いだったのか?

 私達は全力を出して戦ったけど、セラメリアからすれば遊び程度だったのでは?

 ……これは、さすがに心が折れそうだよ。


 ……こうして天井を見つめて、どれだけの時間が過ぎただろう?

 いつもと異なる、白い天井を眺める。

 体には包帯を巻かれ、少しでも体を動かそうものなら、全身に激痛が走る。

 セラメリアめ……思いっきりやりやがって、

 でも、死ななかったのは不思議と言うか、奇跡なんじゃなかろうか?

 それとも、セラメリアが手加減をしたのか。

 そうでもなければ、あの場に居た全員が助かるなんて、奇跡でもっても起こり得ない。

 ……あのセラメリアが手加減するとも思えないけど。


 セラメリアの言っていたこと。

 ネレディクトに来い……か。

 どうして、わざわざそんなことを。

 あの場で仕留めれば良かったのに、それをしなかったし……。


 そう言えば、カグラは上手くやってくれたのだろうか?

 あれから連絡がないと言うか、あれからどれだけの時間が経ったのか分からない。

 数時間? 数日? ……それとも数年?

 色々なことが曖昧になってるし、思考力も低下してる。

 ……考えたって答えが出る訳じゃない。

 体を動かすこともできないし、今はゆっくりと休むとしよう。

 傷が癒えたら、また忙しくなるからね。



 魔王サキの敗北。

 その事態は、彼女を信仰する魔族達にとって、多大な影響を与えていた。

 彼女のステータスは、彼女が御名付の儀を執り行った際に、全国民へと知れ渡っている。

 そのステータスを見た魔族達は、彼女こそ歴代最強の魔王だと確信していた。

 彼女なら、初代魔王をも退けると信仰していた。

 国民は、彼女の言葉を信用した。

 しかし、現実は非情だった。


 彼女を圧倒的に上回る、初代の実力。

 それを目の当たりにした国民は、絶望の縁に沈んでいた。

 誰も助からない。

 セラメリアからは、逃げられない。

 彼等はいつしか、サキでもセラメリアでもなく、ただ世界の終わりのみを信じていた。



 数日後、サキは玉座に座していた。

 国民が魔王を信用しなくなった今、彼女は最早、魔王ではない。

 しかし、成り行きとは言え、彼女は間違いなく国を治める者として、この世界に転生した。

 ならば、彼女の選択肢は一つしかない。



「セラメリアを、倒すしかない」



 覚悟を決めたサキは、誰にも告げることなく、単身ネレディクト帝国へと向かった。

 それは、決して無謀な行いではない。

 充分過ぎるほど思案し、導きだされた、誰も巻き込まないための最善策だ。



「何が、誰も巻き込まないための最善策よ」



 サキの前に現れたのは、勇者リンだった。



「あんたとセラメリアの事は、カグラから聞いた。一人で背負い込もうなんて、勝手が過ぎるんじゃない?」

「そうですよ。オンラインゲームの中だけとは言え、私達はパートナーです。それは、こちらの世界でも変わりません」



 リンと共に現れたのは、カグラだった。

 そして、その後ろにも。



「サキさん。私は、サキさんが鎧牛を倒した時から、どこまでもサキさんに着いていくと決めました。ワーフォックス、ユキメ。全力でお供しますよ」

「レイロフ・カラクトス。この場で改めて、魔王様に誓いをたてます。魔王様の剣として盾として、如何なることがあろうとも魔王様と共に戦います」

「魔王様。私は魔王様の側近です。たとえ国民が何と言おうと、私の魔王様は貴女だけ。私は……いいえ、私達は、最期の時まで貴女に付き従います」



 サキの目から、涙が溢れ出す。

 これだけ信頼されたのは、初めてのことだったから。



「みんな……ごめん。こんなことに巻き込んで」

「どの道、やらなきゃやられるんだ。だったら、最後まで抗ってやろうじゃない」

「ありがとう、リン。ありがとう、みんな」

「……ほら、泣くのはエンディングの後でしょ。まずは、ラストバトルを攻略しないと」



 サキは涙を拭き、気合いをいれた。



「よし! みんなで絶対に、セラメリアを倒そう!」



 彼女達は大きく頷き、ネレディクト帝国へと向かった。


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