136 初代の実力
私は魔力を充填した魔神爪サイカで、セラメリアに斬りかかった。
しかし、私の攻撃は避けられてしまった。
……避けた、と言うことは、少なくともダメージは与えられる。
限界まで魔力を充填すれば攻撃力はカンストになるから、ダメージを与えられなければ困るんだけど。
それに、リンちゃんもまだ目を覚ましていない。
カグラも工房に向かわせなければならない。
つまり、ここにいる四人でセラメリアを止めなければならない。
骨が折れるとか以前に、生きてこの状況を打破できるのかすら怪しいけど……何とかするしかない。
「ほう。ドワーフの女の命を捨て、私を倒そうとするか。ならば私は、それに応えてやろう」
セラメリアは、その膨大な魔力の一部を解放した。
辺りに暗雲が立ち込めるほどの魔力……。
これは、さすがにまずいかも。
とにかく、まずはセラメリアの注意を引かないと。
私はもう一度魔力を充填し、セラメリアに斬りかかった。
当然避けられるけど、まずは全力で戦ってるフリをしないと。
そうでもしなければ、こいつを欺くことはできない。
「……セラメリア。あんたはさっきから、私の攻撃だけは避けてる。この爪が、そんなに怖い？」
「いいや、お前を誘っているのだ。私に対して、どの様な策を労しているのか知りたいからな」
「あんた、性格悪いよね。だったら……後悔するなよ」
私はいくつかの魔法を展開し、みんなに合図を送った。
まずはレイロフ君が必殺技を放つ。
「炎熱剣技、猛火連斬・改！」
今までの修行の末、魔力の変換効率を大幅に上昇させたレイロフ君は、刀剣に灼熱魔法を付与させることに成功している。
つまり、人知れず大幅なパワーアップを果たしていたのだ。
うむ、何とも頼もしいね。
その全てが防がれたけど。
「蜂針演技、鎧鴉！」
レイロフ君の攻撃を防いで無防備になっているところへ、アナスタシアが必殺技を叩き込む。
蜂針演技、鎧鴉は相手の鎧の隙間を狙う技。
鎧ごと死肉を啄む魔鳥からヒントを得た、アナスタシアのオリジナル技だ。
しかし、それさえも防がれている。
でも、これで両手は塞がった。
すかさずユキメが必殺技を叩き込む。
「黒狐星撃、セプテントリオン！」
黒い狐は北斗七星の化身で、北斗七星はラテン語でセプテントリオンだと私が吹き込んだら、いつの間にか必殺技になっていたよ。
星属性の七連撃はさすがに効いて……ないね。
そもそもダメージが無いようだ。
でも、チャンスは今しかない。
私はカグラに合図を送る。
それに応え、カグラは転送方陣を使用した。
それと同時に、私は魔力を限界まで充填し、セラメリアの無防備な体を貫いた。
……はずだった。
私の攻撃はセラメリアを貫くどころか、鎧に傷すらもつけられなかった。
こいつ、まさか……。
「これがお前の戦い方か、サキ。確かに強い。あの時よりは、確実に強くなっている。だが……ステータスやレベルでは、覆す事の出来ぬ領域も存在する」
これはヤバい！
どうする？ どうしようもない！
「それが、私だ。……奥義」
「みんな逃げて！」
「死の舞踏」
セラメリアは鎧に仕込まれた全ての武器を解放した。
魔力により操られた武器は、宙を舞いながら私達に襲いかかる。
身体中を切り刻まれ、私はいつしか、意識を手放していた。
「……そうか、そう言う事なのか。サキ、聞こえているか。いや、聞こえていなくとも聞け。私は、お前を待ってやろう。私を止めたくば、ネレディクト帝国に来るが良い。そこで、この戦いに終止符を打とう。お前には、その資格があるのだから」
