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追憶 3

 洞窟から出た私は、人族の拠点を潰しながら進んでいった。

 捕虜、或いは下種共の慰み者となっている魔族も居た。

 しかし人族に捕まり、あまつさえ欲望の捌け口とされる様な輩に生きる価値などなく、人族共々始末した。

 本当に、反吐が出る。


 私が目指すのは、魔族の本拠地。

 そこに居る、魔族を束ねる者に会わなければならない。

 私が魔王となることを、魔族共に知らしめなければならない。

 その為の犠牲など、些細なものでしかない。


 エルステルン山脈の麓には、大草原が広がっている。

 ここに魔族の大半が居るようだが、この様な開けた場所で壁も設けずに生活しているとは、愚の骨頂だ。

 一応、魔素による感知機能はあるようだが、物理的な障害がなければ難なく突破されると、考えてはいないのだろうか。

 ……やはり、私が導かなければならないのか。


 その前にやらねばならない事がある。

 このまま行っても構わないのだが、半裸の少女の言葉を誰が信じようか。

 その為、それなりの衣服を生成する。

 私は身に纏った魔狼の毛皮を脱ぎ、情報レベルまで分解した。

 更に輝岩大亀の甲羅片も、同様に分解。

 それらの情報を混ぜ合わせ、衣服になるよう再構築する。

 装束にマント、そしてブーツ。

 私は、生成した衣服を身に纏い、魔族の町へ向かった。


 魔族の装備は有り合わせで作られ、魔族そのものの人数も少ない。

 この程度の装備と人数でありながら人族の襲撃に耐えられているのは、偏に魔法の存在を見出だしたからだろう。

 それでも滅亡は免れぬか。


 集会でも開いていたのか、魔族の大半が広場に集まっていた。

 その中心に居る者が、魔族を束ねる長なのだろう。



「皆の者、心して聞いて欲しい。先程、エルステルン山脈へ送った偵察部隊から、報告が入った。山脈内部の我等が同胞は、人族の襲撃を受け……全滅した」



 周りに集まっていた魔族から、どよめきが起こる。



「彼等亡き今、最早魔族は一握りだ。だが、我等は決して、人族に屈したわけではない! 我等の誇りを、人族に知らしめる時が来たのだ!」



 歓声が沸き上がるが、それは玉砕を意味している。

 それが喩え無駄死にであろうと……。

 どいつもこいつも、反吐が出る。

 無駄に捨てるくらいなら、お前達のその命、私が使い潰してやる。



「皆の者、出撃準備を……む?」



 私は、魔族の長の前に出た。



「何だお前は?」



 長の胸に腕を捩じ込ませ、心臓を引き抜いた。

 突然の事に、周りに集まっていた魔族は悲鳴を上げている。

 更に、近くに居た兵士が、剣を私に突き付けている。

 ……耳障り。

 私は魔族全員を、恐怖により縛り付けた。

 悲鳴は止まり、私を見るその目は恐怖そのものだった。



「一度しか言わない、だからよく聞け。今からお前達は、私の物だ。生き延びたければ、私に従え。従わぬのなら」



 私は、長の心臓を握り潰した。

 死の恐怖を突き付けられた魔族共は、誰が始めたでもなく私に跪いた。

 そうだ、それで良い。



《名前が決定しました》


《貴女の名前は、セラメリア》


《セラメリア・ネレ・アルシウス》



 私は、跪く魔族の前で宣言した。



「私の名はセラメリア。お前達を導く者。魔王である!」


「魔族の王万歳! 魔王セラメリア様万歳!」



 ……この、クズ共め。



《シェイムラピアルデータ取得率、30%……》

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