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追憶 2

 私は騎士達を、残らず皆殺しにした。

 先程から頭の中に響く声。

 その声により、私はこの星の知識を得ることが出来た。

 この星に住む人族も魔族も、何と卑しく浅ましく、そして愚かなのだろう。

 ……そんな下種共を、私は利用していかなければならない。

 考えたくもないが、それが私の運命だった。


 足元に転がる騎士から衣服を剥ぎ取り、最低限を隠せるよう身に纏った。

 知識を得て羞恥まで知ったのは誤算だった。

 それに人族が着ていたものを身に纏うのは反吐が出るが、それでも裸のまま彷徨くよりはマシか。


 まずは、この洞窟を脱出しなければ。

 ここは、エルステルン山脈の洞窟。 その最奥だ。

 ここから少し進めば、魔族の町に出るはずだ。

 まずはそこを目指すとしよう。


 しばらく進むと、私の目の前に巨大な狼が現れた。

 ……番犬代わりか。

 目は潰され、前足は切り落とされ、牙は砕かれていた。

 情けない。 魔狼が聞いて呆れる。



「誰だ? ……いや、最早関係ないか。爪も牙も奪われ、我には嗅覚しか残っておらぬ。そんなものが残っていたとて、虫一匹も殺せぬ」



 私は、そんな弱々しい魔狼の頬に触れた。

 その瞬間、魔狼の体が震え始めた。



「き、貴様は……何だ?」

「私が誰かなど関係ない。魔狼よ、私の糧となれ」



 私は魔狼に宿る、莫大な魔力を吸収した。



「な、何だ!? 魔力が……吸われ……」

「魔狼よ。私と言う存在を、その魂に刻みなさい」

「ウグッ……貴様は、何者なのだ……?」

「私は魔族の王、魔王と成るべく生まれた存在」

「ば、馬鹿な……魔王が生まれる筈は」



 魔力を全て吸収した私は、魔狼の首を刎ねた。

 ……なるほど、これが魔法か。

 私は魔法を駆使し、魔狼の毛皮を剥いで身に纏った。

 人族の衣類を身に付けるより、こちらの方が良い。


 魔狼の居た場所から更に進むと、石の煉瓦で出来た小部屋に出た。

 部屋の中央には転送方陣。

 どうやら、これで行き来しているようだ。

 転送方陣の上に乗ると、言い様の無い浮遊感に襲われた後、私の体は異なる場所へ転送された。


 そこは、洞窟内に作られた町だった。

 まるで迷路の様な構造なのは、恐らく侵入者対策なのだろう。

 そして、町の中には死臭が充満している。

 魔族の男は惨殺され、女子供は犯された後に殺されている。

 一見惨たらしい光景だが、戦争とはそんなものだ。

 ただ、見ていて良い気分ではない。

 ……この町に居る人族も魔族も、まとめて消し去ってやろう。

 ただただ目障りであり、そして耳障りだ。

 地獄の業火が溢れ出す様を強くイメージ。



「……獄炎魔法、インフェルノ」



 地獄の門が開き、そこから溢れ出した灼熱の炎が、全てを飲み込んでいく。

 今は、人も魔も関係ない。

 全てを壊さなければ気が済まない。


 破壊行動を繰り返しながら町を歩いていくと、目の前に巨大な岩が現れた。

 ……いや、岩ではないのか。

 こいつは輝岩大亀。 魔狼と同じ様な存在だ。

 こいつにも、私の糧となってもらおう。



「お前か、カークを屠ったのは」

「だとしたら何だ」

「お前を葬り去ってやる」

「……やれるものならな」



 私は魔法を操り、輝岩大亀の甲羅を粉々に砕いて見せた。

 私は悲鳴を上げる輝岩大亀に触れ、全ての魔力を吸収した。

 何とも呆気ない。

 ……この程度の強さで、魔族を守ろうとしていたのか。

 力が無ければ、何一つ守ることは出来ない。

 良い教訓だ。

 私は甲羅の破片を拾い上げ、出口へと向かった。


 洞窟の出口まで、人も魔も皆殺しにしてきたところで、私は洞窟全体に魔法をかけた。

 生成魔法、ハードラビリンス。

 洞窟内の壁が動きだし、巨大な迷宮へと姿を変えた。

 ……これで良い。



《シェイムラピアルデータ取得率、15%……》

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