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癖のありそうな貴族達

 狼の爪と牙、それから亀の輝岩は没収されてしまった。

 これらの素材をもとに、魔王専用の武器を作るそうな。

 今まで素手で殴ってきたから、ありがたいと言えばありがたいけど、この攻撃力に武器が加わったら、それこそ無双できちゃうんじゃなかろうか?

 いや、やる気はないよ?


 ライオスが鑑定グラスについてる別のスイッチを押すと、今度は私の鑑定結果が、別の装置からプリントアウトされた。

 これを世界中に配るそうだ。

 いやいや、そんなのただのさらし者じゃないか。

 歴代の魔王も全員そうやってきたって言われたけど、納得できるはずがない。

 コミュ障だから抗議なんてできないけどさ。

 ちなみに、今の私のステータスはこんな感じ。



〔LV:20〕

〔名前:サキ(仮)〕

〔種族:魔王〕

〔装備:魔王の装束、魔王のマント、魔王のブーツ、青い加護の指輪、凶牙の耳飾り〕

〔攻撃力:3140〕

〔守備力:2760〕

〔魔力:3330〕

〔魔法耐性:3045〕

〔素早さ:2950〕


〔魔王〕〔暗視〕〔鑑定〕〔魔法衣〕〔トラップサーチ〕〔クリティカルヒット1〕〔クリティカルガード1〕〔属性耐性〕〔状態異常耐性〕〔ヒキニート〕〔オタクゲーマー〕〔中二病〕〔コミュ障〕


〔禊ぎ完了〕



 うん、やっぱり私チートだわ。

 あまりにチートっぽかったから、自分のステータスはあまり見ないようにしてたけど、これはヒドいね。

 とんでもないバランスブレイカーだ。


 さて、疑いも晴れたところで貴族達の挨拶が再開した。

 最初はやっぱりライオスだった。



「先程の数々の御無礼、どうかお赦しください。私はエルギスト・フォン・ライオス男爵。この国のアイオロスト領を治めております。以後、お見知り置きを」



 へー、このおっさん、男爵だったんだ。

 ……あれ? 男爵って、爵位では最下位じゃなかったっけ?

 ゲームやマンガの知識だから、あてにはならないけどさ。

 それなのに、魔王に突っかかっていく豪胆さ。

 このおっさん、ただ者じゃないかも。


 次に挨拶に来たのはイケメンだった。

 誰がどう見てもイケメンです。

 アイドルだって言われても不思議じゃないほどだ。

 金髪をなびかせて、私の前にひざまずく。

 確かにイケメンだけど、残念ながら私の好みじゃないんだよね。



「お初にお目に掛かります。私はアルベルト・カラクトス。エルーザ領を治める子爵に御座います。以後、お見知り置きを」



 うわ、笑顔から覗かせてる歯が煌めいてる。

 鼻持ちならないイケメンは苦手だ。

 爵位では男爵の上だったはずだから、ライオスより偉いのかな?


 次は、ダンディワイルドなオジサマだった。

 黒髪に無精髭に黒のマントと、肌以外は黒一色だ。

 やる気の無さそうな表情をしてるけど、その眼に隙はない。

 私的には、さっきのイケメンよりこっちのオジサマの方が好みだな。



「ゼルムスト卿、御前ですよ」



 なかなかひざまずかないオジサマに、しびれを切らしたアナスタシアはオジサマを注意した。

 オジサマは頭をボリボリと掻いて、やっぱりやる気の無さそうな表情をしてる。



「……やれやれ、柄じゃないんだがな」



 オジサマは渋々と言った様子で、ようやくひざまずいた。



「ルメルネント・ゼルムスト。シュメリア領を治める伯爵に御座います。以後、お見知り置きを」



 全部棒読みだった。

 このオジサマ、貴族より傭兵の方がしっくりくる気がするけど?



「ああ、そうだ。オレの事はブラックと呼んでくれ。他の奴らもそう呼んでるし、その方がオレとしても都合がいい」



 敬語を使わなかったことをアナスタシアが注意したけど、オジサマはどこ吹く風だ。

 貴族でもアナスタシアには逆らえない雰囲気なのに……。

 うーん、このオジサマ謎すぎるぞ?

 とりあえず、呼ぶ機会があったらブラックと呼んであげよう。


 次は……何と言うか、いかにも胡散臭そうなおじさんだった。

 小柄な体型に奇抜な模様の貴族服にちょび髭と、どこから見ても胡散臭さが伝わってくる。



「これはこれは魔王様、これほど近くでお顔を拝見できて、大変光栄です」



 人を品定めでもするような目で見やがって。

 いや、それは別に良い。

 それよりも私は、こいつがやってる行動を見て感動を覚えていたりする。

 それは胡麻擂り。

 テレビやマンガで、胡麻擂りをする胡散臭いやつらは見てきたけど、あれはフィクションで、実際にやる人なんて居ないだろうと思ってた。

 それを、目の前のおじさんがやっている。

 そんなことをする人が、この世界に存在していたことに、私は感動してるのだ。

 しかもゲスい笑みも浮かべてるし、パーフェクトじゃないか。



「私はハウラ・ゲニュート・ゼミラニス。デルセルス領を治める侯爵に御座います。以後、お見知り置きを」



 こいつはあれだね。

 自分より権力を持ってる相手に対しては媚びへつらって、格下の相手はこき使うタイプだ。

 まさに嫌われる上司。

 こいつの下で働いてるやつらは、毎日胃が痛いだろうな。

 私は働いたことなんかないから分からないけどね。

 アナスタシアも、こいつが挨拶に来たら顔をしかめていたし、要注意人物なんだろうね。

 胡麻擂りには感動したけど、私もあまり関わりたくはない。


 次は白髪のおじさんだった。

 おじさん率高いな。

 白髪に顎髭に白いローブのような服と、ブラックオジサマとは対照的だ。

 たぶん、ここに居る誰よりも年をとってると思うけど、何気ない動作の全てに隙が見られない。

 素人目に見てそう思うんだから、相当な猛者なんだろう。



「お初にお目に掛かります、今代の魔王様。私はドラン・ドヴァルディス・ドラグノーツと申します。爵位は公爵。王都を含むファルレイシア領を治めております。魔王様どうか、魔族を正しきへと導いてくださいませ」



 深々と頭を下げられてしまった。

 言葉の重みが凄まじく、プレッシャーとなってのし掛かってくる。

 そんなこと言われてもって感じだけど、どうするかはあとで考えよう。


 次はカグラだった。

 魔王様への挨拶だから、主要な人は全員なんだろう。

 こちらとしては、ただ聞いてるだけだから早く終わってほしいところだ。



「人族のカグラ・ミヅチ。予言の巫女を務めておりましたが、本日より魔王城の宮廷術士に就任致しました。今後ともよろしくお願いします」



 カグラは念話が使えるから、私の代弁者になってほしいね。

 アナスタシアに頼めば、何とかしてくれるかな?

 あとで頼んでみよう。


 次は、カグラお付きの騎士だった。

 熱血漢みたいだけど、お堅いイメージだ。

 顔立ちは整ってるし格好良い部類に入るだろうけど、やっぱり私の好みじゃないんだよね。



「お会い出来て光栄です、魔王様。俺はレイロフ・カラクトス。宮廷術士カグラ・ミヅチの専属騎士を務めております」



 カラクトス? どこかで聞いたような。

 ……ああ、あのイケメンと同じ名前か。

 と言うことは、二人は兄弟なのかな?

 カグラの専属って言ってたけど、もしカグラを代弁者にしたら、この熱血漢もオマケでついてくる?

 それはそれでどうなんだろう?


 次は、フルフェイスの騎士だ。

 いや、さすがに兜は脱ごうよ。

 アナスタシアも同じことを考えていたのか、フルフェイスに注意をしている。

 フルフェイスは渋っていたが、諦めたのかようやく兜を脱いだ。


 フルフェイスの下は、赤い瞳に赤い髪の渋いお兄様だった。

 今までの男性陣の中で、この人がいちばん好みだ。

 ……いや、恋愛感情は抱かんよ?



「ベルンハルトだ。魔王騎士団の団長を務めさせていただいている。よろしく頼む」



 赤髪のお兄様はそれだけ言って、元の場所へ戻ってしまった。

 アナスタシアは呆れた様子で溜め息をついてるし、普段からこんな感じなのかな?

 寡黙で無骨とか、私的にはナイスすぎるんだけど。


 さあ最後だ。

 魔王様への御挨拶も、ようやく終わる。

 最後は、私の隣に立っていたアナスタシアだった。



「改めて御挨拶させていただきます。私はアナスタシア・レイクロフト。代々、魔王様の側近を務めて参りました。何かご用の際は、私の方にお申し付け下さい。宜しくお願い致します」



 側近だったか。

 道理で、皆を率いてる感じがすると思ったよ。

 仕事はできそうだし、怒られるかもしれないけど丸投げした方が良さそうだ。


 これで終わりだよね?

 もう、何も無いよね?

 早く、私の部屋に案内してほしいんだけど。

 ふかふかのベッドで休みたいんだけど。

 あ、その前に食事をしたいな。

 燻製肉しか食べてないしエルステルン山脈は寒かったから、アツアツのスープをふーふーしながら飲みたい。



「ではこれにて、魔王様への御挨拶は終わりとなります。他にも主要な方々はいらっしゃいますが、それはまた次の機会で良いでしょう」



 よしよし、これで終わりだね。

 それじゃあまずは。



「では次に、魔王様の御名付(みなづけ)の儀を執り行いましょう」



 アナスタシアの言葉に、私は耳を疑った。

 休憩くらいさせてほしい。

 抗議できないけど、魔王様の要望を察してほしい。

 どこからともなく従者のような人達が現れ、あっという間に御名付と呼ばれる儀式の準備を終わらせてしまった。

 私は玉座にもたれ掛かり、今日一番の溜め息をついた。

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