130 VSサキ・クローンズ1
通路を抜けると、玉座の間に出た。
ロウゲン王以外は制限されてるって、そう言うことみたいだね。
さて、玉座の間には……エレヌスさんが玉座に座っている。
国王気取りか、良い身分だと思うよ。
私達は武器を構え、エレヌスさんと対峙した。
「勇者リンよ、何をしている? 儂は魔王を倒すよう言ったはずだが」
「あんたに聞きたいことが出来た。私の質問に答えてもらうよ?」
「魔王に何を吹き込まれたかは知らんが、予言者である儂の言う事が正しいに決まっておろう」
この部屋の中に、私達以外の魔力が三つ。
柱の陰に二つ、天井に一つか。
……会話はリンちゃんに任せて、私は伏兵に注意を払っておこう。
「生憎だけど、私は胡散臭いジジイより、親友を信用するわ。さあ、本当の事を答えなさい!」
「……やれやれ。どうしてこうも、計画通りにならぬのか」
「と言う事は、認めるんだね? 私達に嘘をついたって」
エレヌスさんに魔力が集まっていく。
でもそれは、伏兵の接近を悟らせないためのこけおどし。
さあ、奇襲に備えよう。
「いかにも、儂がお前に告げた事は嘘だ。儂の目的こそ、セラメリアの復活。しかし、そこに居る魔王と、予言の巫女に邪魔をされた」
「……勇者である私を騙すなんて、良い度胸じゃない」
「度胸がなければ、人知れずセラメリアの復活なんぞ出来やしない」
「確かに。でも私は、私を騙したあんたを許さない。この落とし前、きっちりつけさせてもらうよ!」
リンちゃんはエレヌスさん目掛けて走り出した。
それと同時に、伏兵も動き始めたね。
ゲーム脳、オタクゲーマー、ゾーン発動。
柱の陰に居る伏兵二人に魔法を放ち、天井に張り付く。
そして、天井裏から出てきた伏兵を、魔神爪サイカで引き裂いてやった。
……さすがに、一撃では仕留められないか。
そして伏兵の正体は、セラメリアのクローン。
まあ、だろうとは思ったけどさ。
「ほう、読んでいたか。だが……」
「余所見をしている場合?」
リンちゃんがエレヌスさんに斬りかかる。
しかし、リンちゃんの攻撃は、杖で防がれてしまった。
……何だかあの杖、以前よりもパワーアップしてるんだけど。
見た目的にも、性能的にも。
「……クローンはそれだけではない」
エレヌスさんはリンちゃんから離れ、転送方陣からクローンをさらに三体呼び寄せた。
これでクローンは六体。 培養カプセルの数と同じだ。
……と言うことは、エレヌスさんはクローンが必要なくなったと言うことか。
つまり、このクソジジイはついに、セラメリアを復活させやがった。 あるいは、クローンを使わなくても復活させる目処がついたってことか。
どちらにせよ、これはいよいよマズい。
どうにかして止めないと。
「リン、説明してる暇はない。今はエレヌスさんを倒すことだけ考えて。クローンは、私とカグラが引き受ける」
「I got it!」
……そう言えばブレアクで、私がかみりんに指示を送った時は、I got itって応えてたっけ。
頼むよリンちゃん。
ここで負けるわけにはいかないよ。