127 2号VSリン1
装置の操作は10分近く続いていた。
その間、私はただただ聞いていることしかできなかった。
だから暇を持て余して、お茶とお茶菓子をいただいていたって問題はないのだ。
《最後です。最初に引き出したレバーを戻してください》
《……終わったよ》
《ランプの色はどうなりました?》
《緑色に点灯してるよ》
《お疲れ様でした、これで完了です》
終わったようだ。
と言うか、何の装置なんだろう?
「転送妨害装置です。2号さんが頑張ってくれたお陰で、国外への転送も可能になりましたよ」
「そんな重要な装置だったのか。ところで、その装置ってどこにある?」
「城の地下、国王以外は立ち入りを制限されるような場所です」
「……それって」
2号から再びテレフォンが入った。
嫌な予感しかしない。
《1号、申し訳ない。リンちゃんに見つかった》
《だろうと思ったよ》
《どうする? 解除してくれると有り難いんだけど》
と、ここで妙案が浮かんだ。
その案を、2号に伝えてみる。
《上手くいくとは思えないけど、シャドウサーヴァントが見破られるよりマシか》
《と言うわけだから、私達が行くまで持ちこたえて》
《……了解!》
1号とのテレフォンが途絶えた。
ここからは1号が来るまで、私2号がお送りするよ。
と、意気込んだは良いのだけど……。
「話は終わった?」
「ええ。待たせて悪かったね」
「話の腰を折らないのが、私の信条なの。それで、倒される準備は出来た?」
「そのつもりだったけど、気が変わったよ。リン、あんたをこの場で倒す!」
「勇気と無謀は違うよ。……って、これは魔王であるサキさんの台詞だと思うけど」
「それもそうだ」
私達は互いに笑い合った。
そして私は、リンちゃんから距離をとる。
「いくぞ勇者よ!」
「来い、魔王!」
リンちゃん、ノリノリだね。
さて、上手くいくかな?
私は複数の魔法を展開、リンちゃん目掛けて放った。
リンちゃんは剣を抜き、私の放った魔法を切り裂いてしまった。
さすが勇者の振るう剣、魔法まで切ることができるとはね。
私に戦闘能力は付与されていない。
つまり、私のステータスはHP以外オール1だ。
魔法のひとつも使えやしない。
しかし、私は魔法を展開し、そして放っている。
そのカラクリは、魔法の遠隔操作だ。
ネレディクトとの戦いでネズミ取りを仕掛けた1号は、その方法を応用し、あたかも私が魔法を放っているかのように魔法を発動させている。
リンちゃんと対峙して気づいたけど、どうやら勇者のスキルは『目の前に居る魔王のステータスをコピー』しているようなのだ。
目の前に居る魔王、つまり私。
私のステータスはオール1だから、リンちゃんのステータスも1しか上昇しない。
その証拠に、リンちゃんのステータスは1号が見破った時より激減している。
1号のステータスなら、軽く突破できるほどだ。
つまり、私がシャドウサーヴァントだと悟られなければ勝機はある。
魔法を警戒させれば、不用意に近づくこともないでしょ。
と、余裕こいてるところ悪いけど、1号は相手があのかみりんであることを忘れている。
魔法使いとの戦い方を、かみりんは熟知している。
魔法相手に距離をとるのは、素人のやることだ。
その点、かみりんはさすがと言える。
かみりんは一気に、私との距離を詰めてきた。
狙いを定められないよう、左右に動きながら。
「くらえ!」
リンちゃんの攻撃を辛うじて避ける。
そこから距離をとろうとするも、リンはそれを許さなかった。
私がどう離れようとしても、リンちゃんはぴったりとついてきた。
魔法は1号が何とかしてくれるけど、それ以外はどうしようもない。
案の定、私は壁際に追い詰められてしまった。
「さあ、観念しなさい!」
……一か八か。
剣が振り下ろされる瞬間、私は壁を駆け上がり、そのまま天井へ避難した。
ステータスはないけど、スキルの効果はシャドウサーヴァントにも反映されてるようだね。
お陰で助かったけど、状況はよろしくない。
このままではもたないし、1号早く来てくれ……。