126 魔王は勇者を倒せない
神谷 凛華。
彼女は転移者であり、カグラの同級生だそうだ。
さらに、私が転送する前にプレイしていたオンラインゲーム、ブレアクのチームメンバーだったことも発覚した。
カグラがマイと言う名前でプレイしていて、リンちゃんがかみりんと言う名前でプレイしていた。
かみりんには、私も一目おいていた。
もし、私とかみりんのLVが同じだったら、私はブレアク内で負けていたかもしれない。
そう思うほど、かみりんのプレイは神憑っていた。
そんな彼女が敵となっている……。
考えたくはないが、その事実は揺るがない。
カグラが、分が悪いと言うわけだ。
……それだけではない。
リンちゃんの持つ勇者のスキル。
これがまた厄介だ。
どうやら、勇者のスキルにはプロテクトがかけられているらしく、アナスタシアのような魔族や、魔王である私ではスキルの詳細を知ることができない。
しかし、カグラは魔王ではなく、また魔族でもないため、勇者のスキルの詳細を調べてくれたようだ。
カグラの話をまとめると、私ではどう足掻いても勝ち目はない。
〔勇者:選ばれし者だけが手にする、レジェンドスキル。このスキルは、世界に一人しか所有する事が出来ない。全てのステータスにプラス補正が掛かり、LVの上限が解放される。また、スキル:魔王を所持する者のステータスをコピーし、自身のステータスへ上乗せする事が可能〕
……何でもありかと思うよ。
このスキルの効果がある限り、私ではリンちゃんを倒せないと言うことになる。
勇者は、魔王を倒すために選出された人族。
それが、勇者のルーツだ。
何の対策も無しに魔王へ挑むとは思ってなかったけど、まさかこんなカラクリがあるとはね。
感心してる場合でもないけど、これはシステムから覆さないと無理じゃないか?
もちろん、そんな方法があるとも思えない。
……でも、魔王と勇者の戦いは五百年続いたわけだし、何かしらの対策を講じてたんだろうけど。
「サキさん。勇者の説得は、私に任せてください」
「それはありがたいことだけど、どうやって説得するつもり? あの子は思い込みが激しそうだし」
「大丈夫です、私に考えがあります」
「……分かった。でも、無理はしないで」
アナスタシアには本国へ救援を送るよう伝え、私達はリンちゃんが居る雲龍雷虎城へ向かった。
さて、カグラの転送が使えない今、どうやって城内に忍び込もうか。
ユキメならハイドの魔法が使えるから、侵入するのも楽だったんだけど。
《そんな時の2号ちゃんでしょ!》
2号からテレフォンが入った。
そう言えば2号には、リンちゃんの動向を探らせてたんだっけ。
……だったら私達がピンチになる前に助けなさいよ。
《それは無理な話だね。だって1号、私に戦闘能力を付与してないでしょ? そんな私に助けろだなんて、無理な話なのよ》
《でも、リンちゃんがどこに居るのかくらい、教えてくれても良かったのに》
《いや、頼まれなかったし。そもそも感覚遮断してたから、そちらの様子は分からないよ》
おのれ役立たずめ。
……それは良いとして、2号は今どこに?
《城内何だけど……変な部屋に入ってからリンちゃんを見失っちゃったんだよね》
《変な部屋?》
《見たこともない装置かある部屋》
《2号さん、その装置はどの様な形をしていますか?》
カグラがテレフォンに割り込んできた。
《どうして私のことを?》
《説明は後です。その装置の形状を教えてください》
《うーん……アンテナのような形だね。先が二又になってて……音楽で使う音叉のような形》
《でしたら、そのアンテナの下に、機械の様な装置がありますよね?》
《あるよ》
《そこに、ランプが点灯しているはずです。その色は?》
《色は……赤で点滅してる》
……何だろう、この疎外感。
《赤で点滅ですね? でしたら、これから私の言う通りに装置を動かしてください。まずは、装置の横にあるレバーの様なものを引き出してください》
《引き出せるの? ……本当だ》
《限界まで引き出してください。反対側も同様にお願いします》
《了解》
見守る……いや、見てすらいないから、様子を聞いてることしかできないのは歯痒いね。
《1号うるさい。集中してるんだから黙ってて》
……怒られてしまった。
何か……いや、何も言うまい。