124 会合
アナスタシアめ、本当に凝縮させやがって。
私の鋼の心もさすがに折れたよ。
と言うか3号、あとで覚えてろよ?
さて、サクラノ王国に来たわけだけど、以前訪れた時と雰囲気が違う。
何と言うか、空気が重い。
エレヌスさんが何をどこまで言いふらしてるかは分からないけど、あまり目立った行動をしない方が良さそうだ。
……サクラノ王国の美味しいものを買いたかったのに。
城内の雰囲気も、何やら物々しい。
明らかに、私達を警戒している兵士がいる。
早くロウゲン王に会って、誤解を解かないと。
今回連れてきたのは、アナスタシアとカグラの二人だけ。
レイロフ君は熱血漢だから話しをややこしくしそうだし、ユキメはモンスターだから論外。
モンスターと共謀してるとか、嫌な噂が立つだろうからね。
私達が通されたのは、いつかの会議室だった。
あれ以来セキュリティ面が強化されたようで、会議室への転送に手形が必要になった。
面倒だけど、こればかりは仕方がないね。
それから、転送する時の浮遊感はどうすれば慣れるのか、誰か教えてほしい。
会議室に転送すると、ロウゲン王がすでに座っていた。
機嫌は……良さそうではないね。
「ロウゲン王。本日は会合を開いていただき、有り難く存じます」
「挨拶は良い。座りなさい」
私達はロウゲン王の向かい側に座った。
やっぱり機嫌が悪い。
それも仕方がないとは思うけどね。
「さて、魔王の方から書簡を送ってくるとは思わなかった」
「勇者が私を狙っている以上、動きを見せるのは得策ではないからです」
「……余が勇者側の考えを持っているとは、考えなかったのか?」
「それはあり得ません。もし、ロウゲン王が勇者側なら、我々がサクラノ王国に入国した時点で捕らえているはず。わざわざ会議室へ招く理由がありません」
「なるほど。頭が回ると思っていたが、その通りだったようだ。そして、信用に足る人物であるとの証明でもあるな」
「ロウゲン王、勇者リンに何があったのですか?」
「数日前、傷だらけの予言者エレヌスが、サクラノ王国を訪れた。エレヌス殿はサキ殿にやられたと言っていた。そして、初代魔王を復活させようとしていると」
リンちゃんの言っていた通りだ。
「余はエレヌス殿の話を信用しなかったが、リンは信じ込んでしまった。そして、サキ殿を討つために兵士を貸してほしいと進言してきた。余はエレヌス殿の言葉を確認するチャンスだと思い、リンに師団を貸し与えた。もし反撃をすれば、エレヌス殿の言葉が真実だと言う事になるからな」
あ、危なかった……。
反撃しなくて、本当に良かったよ。
「結果、サキ殿は反撃せずに撤退した。余は、サキ殿を信用する事にした。しかし、ここでまた問題が起こってな」
ああ、何となく読めてきたわ。
「サキ殿の事を信じる者と、エレヌス殿を信じる者とで、サクラノ王国は内部分裂寸前なのだ」
やっぱり、そう言うことだったか。
その収集を、ロウゲン王はしていたわけか。
だから機嫌が悪かったんだね。
「サキ殿、教えてほしい。この世界で、何が起ころうとしているのだ?」
ここは正直に話しておかないと。
「初代魔王であるセラメリアが復活しようとしています。これは事実です。しかし、それは私ではなく、エレヌスさんとロムルスが企んでいること。そして復活を果たした暁には、セラメリアはこの世界を破壊し尽くすでしょう」
ロウゲン王は天を仰いだ。
そして、大きな溜め息をつく。
「最悪の結末だな」
「はい。ですが、そんなことはさせません」
「……余に、何が出来る?」
「リンを説得してほしいのです」
この状況で、リンちゃんと戦うのは得策ではない。
そもそも戦いたくない。
だって、リンちゃんも転移者だから。
転移者の犠牲は、なるべく出したくないからね。