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119 ブラックおじさま

 私は今、シュメリア領に来ている。

 と言うのも、ブラックおじさまが送ってくる書類について、彼に直接抗議するためだ。

 実はブラックおじさまが送る書類が、貴族達の中で最も酷い。

 不備があるとか、そう言ったレベルではないのだ。

 強いて言うなら、不備しかない。

 私でも、もっと上手く書けると思ってしまう。

 字が汚いのは、この際千歩譲って許すとしても、書類の内容は本当に酷すぎる。

 それに、本当に些細なことでも書類を上げてくるから、それもやめさせないと。


 シュメリア領は、その大半を草原が占めている。

 その草原を囲うように、僅かな森林地帯が存在するだけだ。

 一見すると穏やかそうな場所だけど、モンスターの強さは随一だ。

 普通に巨人とか居るからね。


 町の様子は、他の領土と大差ない。

 ただ、兵の数は多いようで、町のいたるところで兵士の姿を見かける。

 周辺のモンスターが強いから、当然のことなのかもしれない。


 さて、ブラックおじさまは屋敷に居る……はずなんだけど。



「これは魔王様。ゼルムスト様にご用でしょうか」

「ええ。少し、話したいことがあるのです」

「そうですか。しかし生憎ですが、ゼルムスト様は今し方お出かけになられました」



 どうやら入れ違いだったらしい。



「ゼルムスト様は、一度お出かけになられると数日は戻らないなど、良くある事でして。もし、火急の用でしたら、ゼルムスト様に直接会われた方が宜しいかと」

「数日戻らないなら仕方がないですね。それで、ゼルムスト卿はどこに?」



 町の地下に張り巡らされた下水道。

 その下水道のさらに奥に、ブラックおじさまが居るようだけど……どうして下水道にモンスターが沸いてるの?

 確かに、下水道にモンスターが蔓延るのはRPGでは良くある話だけど、だからって実際に沸かなくても良いじゃないか。

 ……仕方がない。

 通るのに邪魔なモンスターは倒していこう。


 まずは、水のような見た目をしたモンスター。

 RPGモンスター定番中の定番、スライムだ。

 一口にスライムと言っても、その姿は様々だ。

 某国民的大作RPGのようなマスコットキャラクター風なスライムが居れば、取り込んだ相手をゆっくり溶かしながら食べるエグいスライムまで、その幅は広い。

 私が出会ったスライムは後者で、危険度もそれなりに高い。

 さらに物理攻撃無効と、なかなか厄介だ。

 私は魔法が使えるから、何の問題もないけどね。


 次に出会ったのは、下水道と言えばおなじみのネズミだ。

 見た目こそ可愛いが、そのサイズは大型犬並み。

 しかし、こんな大きさでも臆病な性格らしく、私を見た途端に逃げてしまった。


 他にも、ゾンビのようなグールのようなモンスターとかも見かけた。

 ここら一帯に充満していた腐臭は、あんたらのせいか。

 だけど邪魔をしたわけじゃないから、とりあえずスルーしておく。


 下水道を奥へと進んでいくと、突き当たりに鉄製の扉が現れた。

 明らかに不自然だし、この中にブラックおじさまが居るのかな?

 扉を開けると……そこには、目を疑う光景が広がっていた。


 そこに居たのは、巨大な黒いドラゴンだった。

 どうやら兵士達と戦っているようだけど、どうしてこんな所にドラゴンが?

 そしてこれは、助太刀した方が良いんじゃないか?

 普通の兵士が、ドラゴンに太刀打ちできるはずがないし。

 でも、様子がおかしい。

 ドラゴンは、明らかに手を抜いている。

 そして兵士達も、殺意を持って戦っていると言うよりは……修行をつけてもらってるかのような、そんな感じがする。

 兵士達が全員倒れたところで、ドラゴンが喋った。



「よし、今日はここまで」



 聞き覚えのある声。

 それと同時に、ドラゴンは姿を変えた。



「まったく、だらしがねえな」



 それは、ブラックおじさまだった。

 つまり、あのドラゴンがブラックおじさまであり、龍人率高くね? と言うことである。

 まったく、ブラックおじさまへの用件が増えてしまったではないか。

 あとは「見られたからには殺すしかない」とか言われても困るけど……ま、なるようになれだ。


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