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106 複製

 壁の奥は、部屋になっていた。

 それも、かなりの広さの。

 造りは試練の遺跡に近いようだけど、それよりもやや新しい。

 奥に扉がある以外には、何もないし誰もいない。



「サキさん、何だか嫌な感じがします」



 カグラの口調は、どこか怯えのようにも取れた。

 嫌な感じ、私もそう思ってた。

 カグラとは違い、嫌悪に近いものだけど。


 扉は、分厚い鉄製のものだった。

 鍵は……掛かっていない。

 私は細心の注意を払いながら、重苦しい扉を開けた。



「これって……」



 扉の先に広がる光景に、私達は目を疑った。

 そこは、この世界に似付かわしくない、未来的な無機質の通路だった。

 映画なんかでよく見る、研究所の通路と言った印象か。



「どうして、この世界にこんなものが?」

「分からない。けど……」



 嫌な感じが、さらに強くなる。

 私が禊ぎの泉で目覚めた理由、その答えが繋がってしまいそうだ。

 ……私の望まない真実へ。


 通路の奥には、また扉。

 しかし、ドアノブは無い。

 自動ドア、と言うわけでもないのか、扉の前に立っても開かない。



「こういうのって、触れれば開くのではないでしょうか?」

「……触れたくない」



 正直に言おう、私は怖じ気付いている。

 らしくないことだけど、私はこの扉を開けることができない。

 その理由も、何となく分かってる。

 だから尚更だ。



「……まったくもって、らしくない」



 そんな、らしくない自分が嫌になる。

 私は、らしくない自分を払拭するように、目の前の扉に触れた。



『権限LV10である事を確認。アンロック』



 妖精さんではないアナウンスの後、扉が開いた。

 権限LV10で開く扉ってことは、ここに出入りしているであろうエレヌスさんも、権限LV10だと言うことになる。

 権限LV10になると、神様に会うこともできる。

 つまり、神域に行くことができる。

 神域に行けば、この世界の仕組みだって理解しているはずだ。

 だから、システムのことを知っていたのか。

 だからこそ、ますますあの爺さんが分からなくなってきた。

 ……まあ、会えば分かるだろう。



 部屋の中に入った私達は、言葉を失っていた。

 部屋の両側には、ガラスの筒が連なっている。

 映画などで登場する、培養カプセルだと思われる。

 それは、人一人が入れる程の大きさだ。

 そして、カプセルの中には……私が、漂っていた。

 そう、培養カプセル内に居るのは私。

 我々の知っている言い方で言えば、クローン。

 この培養カプセルに入っている私達も、そして私自身も、ある人物のクローンであると理解してしまった。

 いったい誰のクローンなのか。

 その答えは、この部屋の奥にあった。


 巨大な碧水晶。

 その中に、ひとりの少女が囚われている。

 こいつこそ初代魔王、セラメリア・ネレ・アルシウスだ。

 ……まだ、復活していない。

 仕留めるなら、今しかない。

 私は魔神爪サイカに、限界まで魔力を充填した。

 魔神爪サイカが、禍々しい形状へと変化していく。



「サキさん、何を」

「止めないで。こいつは、ここで仕留めないといけないの」



 カグラの制止を振り切り、爪を振り下ろそうとした。

 しかし、振り下ろせなかった。

 私の体を貫いた剣が、私の動きを止めていた。



「サ、サキさん!」



 刺さった剣を引き抜き、振り返った。

 そこにいたのは、培養カプセルに入っていたはずのクローンだった。

 そして、その隣には。



「まさか、此処へ入る事が出来るようになるとはな。失敗作と侮っていた罰か」

「エレヌスさん。あんた、やっぱり……」

「ああ。儂は最初から、セラメリア側の人間じゃ。上手く誘導したつもりじゃったが、どこで読み違えたのかのう?」



 やっぱり、そう言うことだったか。

 カグラは私の心配をしてるけど……ダメージこそあれど、戦闘には支障がない。



「カグラ、聞いての通り。エレヌスさんを倒すよ」

「でも!」

「やらなきゃ、私達がやられるのよ! 覚悟を決めなさい!」



 私は回復の魔法をかけ、戦闘態勢に入った。



「……ここではまずい。場所を変えさせてもらうぞ?」



 エレヌスさんは杖で床を突くと、私達の居る場所が変化した。

 そこは星海、宇宙空間のような場所だった。



「なるほど、ここなら気兼ねなく戦えるってことね」

「そうじゃ。そして、失敗作の破棄にも最適じゃろう」



 エレヌスさんとクローンは武器を構えた。

 クローンは大丈夫だと思うけど、問題はエレヌスさんだ。

 こいつは見破れない。

 つまり、強さが分からない。

 どれほどかは分からないけど、かなり強いと思わないと。

 少なくとも、グラントとカーク以上は……。

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