105 サキ&カグラ
灼熱の円壁が消えると同時に、カークが飛びかかっていた。
私とカグラはそれを回避し、グラントへ攻撃を開始する。
まずはカグラが魔法で牽制、怯んでいるところへ、私が物理攻撃を叩き込んでいく。
そして、私がグラントを攻撃している間、カグラはカークに魔法を当てていく。
良いダメージが入ったところで、私は魔神爪サイカに魔力を充填した。
「不撓不屈!」
私は背後へ大きくジャンプした。
私の居たところをカグラの放った火の玉が駆け抜け、その先にいたグラントに直撃する。
グラントの不撓不屈が解除された。
背後へとジャンプした私の目の前には、カークが今まさに飛びかかろうとしている。
「神光魔法、ジャッジメント!」
「爪撃、刻死舞爪!」
私はカークに、カグラはグラントに、それぞれ大技を叩き込む。
しかし、ギリギリのところで持ちこたえたようだ。
「魔狼重撃、フェンリル!」
「輝岩獣撃、玄武!」
おそらく、二体の必殺技だろう。
「カグラ!」
「はい!」
合図をすると、カグラは私の肩を踏み台にして、空高くジャンプした。
それと同時に、私はグラントの方向へと、体勢を低くしながら走り出した。
そして。
「神光魔法、ギルティ・レイ!」
「魔王爪撃、龍威爪!」
私達の必殺技が、二体の必殺技とぶつかり合う。
辺りに衝撃波が広がり、大地を揺らしていた。
〔魔狼:カークを倒しました〕
〔輝岩大亀:グラントを倒しました〕
〔経験値を獲得しました〕
〔魔王:サキはLV70からLV90に上がりました〕
〔人族:カグラはLV35からLV60に上がりました〕
……疲れたー!
そう叫びながら、雪の上に倒れ込む。
カグラも同様に、私の横に倒れ込んだ。
何とも不思議な清々しさが、私達を包み込んでいる。
しばらくこのままでいたいけど、当初の目的を果たさないと。
私は起き上がり、アンテナに視線を向けた。
そして魔法を展開し、アンテナ目掛けて放った。
アンテナは予想以上に脆く、あっけなく壊れてしまった。
これで、Fエネルギーは受信できないだろう。
しかし……。
私は辺りを見渡したが、肝心のエレヌスさんの姿は見えなかった。
エルステルン山脈へ向かったとの情報があったんだけど、ここじゃないのか?
鎧牛を下山させたのは、このアンテナを建てるため。
それは間違ってないはずなんだけど。
……まさか?
私はライブラリからセラメリアを検索し、ハッキングを使ってプロテクトを突破。
セラメリアの現在地を表示した。
そこはエルステルン山脈、封印の間。
この封印の間を、ライブラリで表示。
表示された内容を確認した私は、カグラに簡潔に伝え、エルステルン山脈禊ぎの泉へと向かった。
「ここが、サキさんがこの世界で目覚めた場所……真っ暗で何も見えませんね」
ああ、そうか。
カグラは、暗視のスキルを持ってないのか。
とは言え、今の私達には魔法がある。
灯りの確保は容易いよ。
白光魔法の、漂う光源を発動。
洞窟内が明るく照らされた。
「……綺麗な泉ですね。ここが、禊ぎの泉なのですね」
「そう。歴代魔王が、禊ぎを行った場所だよ。でも今は、感傷に浸ってる場合じゃないよ」
私は洞窟内の隅にある、小さな穴に目を向けた。
この穴が、この泉の唯一の出入り口。
それほど時間は経ってないけど、懐かしく思うよ。
ここから出て三叉路を左に曲がると、目的地に到着する。
そこは、魔王装備一式があった場所だ。
その他には、ネズミが通れるほどの小さな穴以外、何もない袋小路だ。
ここは、エルステルン山脈の最奥と呼ばれる場所だ。
そんな場所にある穴から、風が流れ込んでいることに、もっと疑問を抱けば良かった。
だって、この奥には……謎の空間があるのだから。