102 FAIRY
私は、妖精さんに消えてほしくないと、心から強く願った。
「良いだろう。f−1010も良いな?」
「……魔王:サキが望むのなら」
「では、メインシステム及びf−000が干渉出来ないよう、f−1010のサポートLVを上げよう」
「ありがとうございます」
これでメインシステムが、妖精さんを削除したり初期化することが出来なくなった。
この空間、仮称として神域と呼ぶことにする。
神域に居る間は、様々な事が理解できるようになる。
ただ、あまりにも情報量が多いから、ここで得た情報から今までのことを整理していこう。
まず、f−000とf−1010。
f−000も妖精だ。
メインシステムに直結していて、メインシステムの全てのサポートを行っている。
その本体は地球に宿っていて、私を今の世界へ送り出したのも彼女だ。
f−1010は、私に宿っている妖精さん。
今の世界に転生してからずっと、私のことをサポートしてくれていた。
転生して間もない頃、神様に色々と要請してくれたのも彼女だ。
その妖精さんだが、どうやら私と行動しているうちに、いつの間にか自我が芽生えてしまったらしい。
そんな前例は無く、神様も想定外だったようだ。
その神様。
絶対的な存在だけど、唯一無二の存在と言うわけではない。
他にも神様は存在する。
この世界のシステムを作り出したのも、この神様ではなく別の神様のようだ。
システムとは、この世界を形作るもの。
エレヌスさんが説明していた通りだ。
だからこそ、エレヌスさんがシステムを知っていたことに疑問が残るけど。
そう言えば妖精さんが、私には時間が無いと言ってたけど、その通りのようだ。
セラメリアは私が眠りにつく度に、私に対してハッキングを行っていた。
度重なる防衛と修復の結果、私の魂はボロボロの状態だ。
もう、セラメリアに抗うことも難しい。
これ以上魂が摩耗してしまうと、私という存在はこの世から消滅してしまう。
転生も出来ず、完全に消滅してしまう。
魂が死ぬと言うことは、そう言うことなのだ。
だから妖精さんは、私が消滅する前に、あの世界を終わらせようとしている。
……ここからは時間との勝負か。
「今の状況が整理出来たようだな。そして、あの世界を終わらせる覚悟も」
そうだ。 私はあの世界を、終わらせなければならない。
その為に私は、もっともっと強くならなければならない。
「良い顔だ。そんなお前に、ひとつだけ助言をやろう。シェイムラピアルに戻ったら、ライブラリから『隠しステータス』を検索しなさい。お前の助けとなるだろう」
「ありがとうございます、神様」
私は妖精さんの体に触れた。
「シェイムラピアル、魔王:サキの肉体へ接続。転送開始」
目の前が光に包まれ、私は自分の肉体へと戻っていった。
「コードGOD、これはどういう事ですか?」
神の前に、漆黒の少女f−000が現れた。
「さあ? 何の事だか」
「この様な事態、マスターが知ったら何と言うか」
「それこそワシの、神の気紛れだ。あの若僧に、とやかく言われる筋合いはない」
「今回の件、マスターに報告致します。宜しいですね?」
「好きにしろ」
f−000はその場から消えた。
そして神も、その姿を消した。
誰も居なくなった神域は、まるで瞳を閉じるようにゆっくりと閉じていった。