表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/188

101 GOD

〔コードGODへの接続率…10%。効率化の為、World Clockを停止〕


〔個体名:沙絹の記憶メモリより、個体名:……のデータを再生〕





「沙絹、起きなさい」



 私を呼ぶ、とても懐かしい声に目を覚ます。

 ベッドから体を起こすと、その女性は優しく微笑みかけていた。

 疑問……そんなもの、浮かぶはずがない。

 その人は間違いなく、私の目の前に居るのだから。



「ぐっすりと眠って、本当に疲れていたのね。魔王様のお仕事は大変?」

「仕事をためなければ、それほど大変じゃない」

「沙絹は昔から物臭だったものね。あまりサボってばかりいると、後で泣きを見るのは自分なのよ?」

「分かってる」



 その人は、くすりと笑みを浮かべた。



「心配していたけど、元気そうで何よりだわ。ほら、あの人にも元気な姿を見せてあげて」



 私は、その人が指差す方向に視線を向けた。

 そこには、とても懐かしい男性が、椅子に座って本を読んでいた。

 その人のもとへ歩み寄る。

 私に気づいたその人は、本を閉じ、眼鏡を本の上に置いた。



「沙絹、大きくなったな」

「……この体は、私のものではないけど」

「大丈夫。私達には、お前の懐かしい姿が映っているよ」



 私は、その人の隣に座った。

 すると女性は、私の前の椅子に腰をかけた。

 あの日以来、この時をどれほど望んだか。

 いつの間にか、涙が溢れ出していた。



「本当は、もっと色んなことを話したかった。でも……その時間はないみたい」


「私は大丈夫。だから、安心して?」


「会いに来てくれて、ありがとう」



 そして、ごめんなさい。



 お父さん。

 お母さん。





〔コードGODへの接続率、100%〕


〔接続完了〕


〔魔王:サキの精神を転送します〕


《メインシステム、再起動。f−1010をフォーマット》





 澄んだ青空、緩やかに流れる雲。

 そして足下には、空を映し出すほど澄み渡った水原が、どこまでも続いていた。

 それ以外には、何もない。

 まるで、自分が宙に浮いているような、そんな感覚に陥る。

 ここは、いったい?



「まったく、無茶な事を」



 私の目の前に、突如として現れたそれは、神様だった。

 そう、神様。

 目の前に居る存在は、紛れもなく神様だ。

 理屈なんかじゃない。

 私の直感が、細胞が、脳が、思考が、私を形作り私を司る全てが、目の前の存在が神様であると訴えている。



「ワシが誰だか、理解しているな?」

「……神様?」

「その通り」



 神様を前にしているのに、私は不思議なほど冷静だった。

 冷静に、目の前の事態を理解している。



「疑問は尽きないだろうが、まずはお前のパートナーを助けないとな」



 私の胸元に光の穴が開き、神様はその中に手を入れた。

 突然のことに驚く間もなく、神様は小さな光を取り出した。

 ……間違いない、これは妖精さんだ。



「……ボロボロじゃないか。今、治してやる」



 神様が光に手をかざす。

 するとその光は、先ほどの少女へと姿を変えた。



「コードGODよりf−1010の記憶データ及びサポート媒体の修復」

「これで大丈夫だな。さて、f−1010よ。何故、こんな無茶な真似をした?」



 神様は全てを見通している。

 それは、私の直感が告げているから間違いない。

 当然、妖精さんが何故、このようなことをしたのかも知っている。

 だからこそ神様は、妖精さんの口から聞きたいのだろう。



「……魔王:サキを守るため。そして、あの世界を終わらせるためです」

「やはり、お前には自我が芽生えていたか。ではサキに、彼女の両親を見せた理由は?」

「コードGODへの接続には、権限LV10が必要です。しかし、魔王:サキには時間が無かった。メインシステムへのハッキングしか、道が無かったのです。しかし、その様な事をすれば、私は削除されてしまう。私は魔王:サキに、二度と会えなくなってしまう。だからその前に、過去のデータベースに保存されている、彼女の両親の姿を見せたかった。それが、彼女が最も望んでいた事だから」



 妖精さん……。

 神様は、ひとつ溜め息をついた。



「f−000はどうする? また、お前を削除しようとするぞ?」

「私が消えるのは構いません。魔王:サキが、全てを終わらせてくれるのなら」

「サキ、お前はそれで良いのか?」



 ……良いはずがない。

 何がなんだか分からないけど、妖精さんが消えて良いはずがない。

 転生してから、約一カ月。

 私はずっと、妖精さんに助けられてた。

 妖精さんが居なければ、私はこの世界で生きていけなかった。

 私は、妖精さんを信用してる。

 だから、消えて良いはずがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ