100 鼓動
あれからさらに数日。
山積みの書類、ようやく片付いたよ。
本当に、本当に長かった。
この数日、一睡もしてないから、もう限界だ。
私の足取りはおぼつかないものだったと思う。
もう、どうやって寝室まで来たのかも覚えてない。
気がつくと、私は寝室のベッドの前に立っていた。
そして私は、ベッドに倒れ込む。
体がベッドに沈み込み、疲れた私を包み込んでくれる。
そして私は、静かに瞼を閉じた。
気がつくと私は、いつかの暗黒空間に居た。
しかし、今はそれどころではない。
もう、眠くて眠くて仕方がない。
あいつには悪いけど、このまま眠ってしまおう。
とても、とても深いところ。
闇の更に奥、闇の中の闇。
その闇はとても澄んでいて、そしてとても淀んでいた。
そこにうずくまる、形の無い少女。
闇に溶け込んだ少女。
私は、この少女を知っている。
私は、この少女を理解している。
何故?
私は何故、この少女を知っている?
私は何故、この少女を理解している?
分からない。
その全てを、何故理解しているのか分からない。
私は……。
私は、その少女の体に触れた。
何故か分からないけど、そうしなければならないから。
《Error》
《個体名:サキ、プログラムFAIRYに接触》
《緊急措置、発動》
《スキル:魔王は消滅しました》
《スキル:鑑定は消滅しました》
《スキル:魔眼は消滅しました》
《スキル:翻訳は消滅しました》
《スキル:通訳は消滅しました》
《スキル:同時通訳は消滅しました》
《スキル:自動回復3は消滅しました》
《スキル:暗視は消滅しました》
《スキル:魔法衣は消滅しました》
《スキル:読書家は消滅しました》
《スキル:速読術は消滅しました》
《スキル:トラップサーチは消滅しました》
《スキル:クリティカルヒット4は消滅しました》
《スキル:クリティカルガード4は消滅しました》
《スキル:属性耐性(中)は消滅しました》
《スキル:状態異常耐性(中)は消滅しました》
《スキル:魔素探知は消滅しました》
《スキル:魔力探知は消滅しました》
《スキル:魔力自在は消滅しました》
《スキル:剛撃5は消滅しました》
《スキル:堅牢5は消滅しました》
《スキル:大打撃3は消滅しました》
《スキル:大防御4は消滅しました》
《スキル:風音魔法8は消滅しました》
《スキル:五行魔法3は消滅しました》
《スキル:光闇魔法3は消滅しました》
《スキル:姿見は消滅しました》
《スキル:オタクゲーマーは消滅しました》
《スキル:ヒキニートは消滅しました》
《スキル:コミュニケーション−8は消滅しました》
《スキル:中二病は消滅しました》
《続いて個体名:サキの削除》
〔……………………〕
指先を介して、少女の鼓動が伝わってくる。
《Error》
《個体名:サキ…削…除不能……》
《権限…LV上昇》
《不確定要素による介入…プロテクト機能…》
〔……………………〕
少女の鼓動が、速くなっていく。
《プロテクト…不能。不確定要素、コードGODへ接続…オフライン》
〔……………………〕
少女の体が、熱を持ち始める。
《オフラインへ…の切…替不…能…》
《Error》
《Error》
《Error》
《Error》
《Error》
《Error》
「……メインシステム、掌握率80%」
少女は口を開いた。
その声は……。
「サポートf−999起動、消滅したスキルを再構築」
その声は、私が今まで聞いてきた、妖精さんの声だった。
「魔王:サキ、コードGODへ接続」
《解…析完…了。個体…番号f−1010よ…りハッキング…》
「プロテクト起動。対象メインシステム」
《Error》
《Error》
《Error》
《こんな事をして、ただで済むと思ってるの?》
「プロテクト強化」
《メインシステム…機能……一時………停止…………》
闇は払われ、この空間はまばゆい光に包まれた。
それと同時に、私の意識は私の体から切り離された。