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98 サキVSアナスタシア 前編

 魔王城へと戻った私は、戦後処理に奔走していた。

 やらなければならないこと、調べなければならないことが多すぎる。

 とりあえず、各戦場には騎士団を派遣して、戦後処理に努めてもらう。

 テルメピストは帝国から解放したばかりだから、騎士団も多めに派遣した。


 捕虜にした帝国軍は説得中。

 どいつもこいつもモンスターだから、こちらは時間がかかりそうだ。


 戦争を隠れ蓑にしてセラメリア王国へ侵入してきた奴らは、アナスタシアや貴族達が頑張って倒してくれた。

 これは、ネズミ取りを仕掛けなければ陥落していたかもしれない。

 それほどいやらしい位置に転送してきた。

 こういう任務に就く奴らは、有益な情報を持ってる可能性が高い。

 と、ブラックオジサマが仰っていたから、尋問の方もおまかせした。


 そして、実は帝国内に潜入させていたカグラは、かなり有用な情報を持ち帰ってくれたようだ。

 さらに、それを山積みの書類として提出してくれると言う親切ぶり。

 もう嬉しくて涙が出てくるね。

 ……カグラさん、あなたは私を殺す気ですか?


 各国の国王へは、今回の騒動を書簡で報告することにした。

 と言うか、国内がこれだけバタバタしてるし、私が国を留守にするわけにはいかんのよ。

 必然的に仕事が増えてるけど、こればかりは仕方がない……かな。



 あれから一週間が経過した。

 朝食を済ませた私は、ベッドへ仰向けに倒れ込む。

 比較的質素な天井を眺め、そして溜め息。

 ようやく……ようやく落ち着いた。

 この一週間、本当にハードだった。

 ネレディクト帝国も、あれから目立った動きを見せていない。

 つかの間だろうが関係ない。

 私はこの平和を謳歌し、そして噛みしめてやる。

 今日は何もせず、ダラダラと寝て過ごしてやる。



 コンコン……。



 扉をノックする音、アナスタシアか。



「魔王様、いらっしゃいますか?」

「いらっしゃいません」



 私は扉越しに答えた。

 今日だけは外に出たくない。

 ……外に出たくないのは毎日だけど、さすがに働きづめで疲れてる。

 それに、ネレディクトが動きを見せたら、その対応に追われてしまう。

 私はこの、つかの間の休息を堪能したいの。



「魔王様。戦後処理は一通り終わりましたが、そのせいでお仕事が溜まりに溜まっています。引きこもるのは、お仕事が終わってからにしてください」

「いや」



 溜め息をついたアナスタシア。

 開錠魔法を使おうとしてるんだろうけど、そうはさせないよ。


 ガチャガチャとドアノブを回す音が響くが、扉は開かない。

 開くはずがない。

 昨夜の内に、扉に細工をしておいたからね。

 開錠魔法では開かないんだよ。



「そうきますか。では、こちらにも考えがあります。衛兵」

「はっ」

「扉をぶち破りなさい」

「しかし……」

「責任は私が持ちます」



 ああ、そう。

 まあ、できるものならやってみな。



「では……失礼します!」



 衛兵が扉に体当たりする音が、室内に響き渡る。

 それでも、扉は開きません。

 不壊の魔法ほどではないけど、この部屋の扉には防御力を持たせてある。

 そんなヤワな攻撃では、この扉はビクともしないよ。



「……そうですか、分かりました」



 衛兵とアナスタシアの足音が遠退いていく。

 諦めたかな?

 ……諦めたようだ。

 私はベッドに横になり、天井を眺めた。

 この安堵感と静寂、最高だね。



 しばらくダラダラしてると、誰かの足音が近づいてきた。

 またアナスタシアか?



「魔王様、出てきてください」



 この声は、レイロフ君か。

 悪いけど、出て行くつもりはないよ。



「出てこないのなら、力付くですよ?」



 力付くか、それはまずい。

 確かに扉を強化したけど、レイロフ君の攻撃力だと突破されてしまう。

 ……どうしよう?


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