94 魔王VS魔帝3
私の、異常なまでの反応速度のからくりはこうだ。
まずは魔眼。
私は魔眼の、魔力可視化を解除した。
そして、視野の広域化からさらに視野を広げることにより、私自身を客観的に見ることに成功している。
普段の視界が一人称視点なら、今は三人称視点で見ていると言うことだ。
そして、私は今、ゲーム脳を発動させている。
ゲーム脳は言わずもがな、全てをゲームに置き換える考え方。
前世では役立たずだが、今世では私の特殊能力だ。
ゲーム脳を特殊能力って言えるこの世界最高だね。
で、私は今、ゲーム感覚でロムルスと戦っているわけだ。
ゲームだと思い込む。
そこで、私のはずれスキルであるオタクゲーマーの効果を思い出してほしい。
〔オタクゲーマー:オタクスキルとゲーマースキルが統合された、ユニークスキル。ゲームプレイ時の反応速度が最大となるが、自己顕示欲が強くなる〕
そう、このはずれスキル。
このスキルには、ゲームプレイ時の反応速度が最大となる。 とあるわけだが、ここまで言えば分かるよね?
私は今、ゲーム脳を発動させ、この戦いをゲームをプレイしている感覚で挑んでいる。
つまり、私はゲームをプレイしている状態。
私の反応速度は限界突破のスキルもあいまって、素早さ999999の反応速度だと言うことになる。
ただし、反応速度だけ。
素早さそのものが999999になるわけではない。
そして、相手の動きが止まって見えたり、スローモーションで見えたりとか、そう言った恩恵があるわけでもない。
ただ、反応速度が最大となっているだけだが、それでも私からすれば充分だ。
私は集中力を高めた。
そう、それはまるで……数フレームの動作から相手の次の行動を読み取るような、いわばゾーンに入ったかのような集中力。
全神経を研ぎ澄まし、それでいて私の体は、部屋でくつろいでいるかのようにリラックスしている。
あらゆる状況に、瞬時に対応するためだ。
これでもう、ロムルスは私に攻撃を当てることはできない。
「暗黒魔法、黒の槍」
ロムルスは各手に槍を携えた。
なるほど、中距離武器で様子を見るってところか。
それか、その槍を投げるのか。
ロムルスは突進してきた。
そして、槍による素早い連撃を放っているが、私に当てることはできない。
その全てを、私が避けているからだ。
ロムルスは多少驚いてはいるものの、それでも構わず攻撃を仕掛けている。
しかし、攻撃は当たらない。
するとロムルスは、私から距離をとり、槍を二本投げつけた。
それを躱し、ロムルスの懐へと潜り込む。
すかさず、残り二本の槍で応戦しようとするも間に合わず。
私は少量の魔力を充填した魔神爪サイカで、ロムルスの体を引き裂いた。
呻き声を上げるも、ロムルスへのダメージはやはり低かったようだ。
それどころか、ダメージを受けてもなお怯まず、攻撃を続けている。
その全てが当たらない。
当たるはずがない。
次第にロムルスの表情には、焦りの色が見え始めた。
そうだ、それで良い。
もっと考えろ。
私の強さに疑問を持ち、自分の強さを疑え。
そしてもっと考えろ。
疑心を抱け。
焦り、疑心、そしてこの戦いで芽生えている、数多くの疑問。
格下の私に、何故勝てないのか。
さあ、考えろ。
考えて考えて、考え続けろ。
そうすれば……ほら、こいつはもう隙だらけだ。
こいつの動きはもう、魔帝とは呼べない。
私を見据えているが、私のことはもう見えていない。
だから、こうやって。
「がはっ!」
こいつは反撃を許してしまう。
こいつはもう、魔帝ロムルスではない。
ただの魔族ロムルスだ。
当たらない攻撃を繰り返し、当たらない魔法を撃ち続けた、そして私に反撃されダメージを負ったロムルス。
しかし、これは意地なのか、攻撃を止めるつもりはないようだ。
だったら私も、それに付き合ってやろう。
あんたが負けを認めるまで、徹底的にね。