93 魔王VS魔帝2
私は魔神爪サイカに魔力を充填、ロムルスへと攻撃を仕掛けた。
それは難なく躱されてしまったけど、みんなを狙っていた魔法を、阻害することはできた。
このまま私に注意を引かせて、みんなに被害が出ないように戦わないと。
「その爪、恐ろしい攻撃力を有しているな。魔力を充填する事により、その攻撃力を更に強化しているのか。そして、強化された攻撃力は私にも届くのだな」
「簡単に見破るなよ」
まあ、見破られたら見破られたで、私としてはむしろ好都合だ。
こいつが警戒すれば、それだけ隙が生まれるからね。
そう、いつも通りに戦えば良いだけだ。
こいつが私以上のステータスだからと言って、何の問題もない。
ロムルスは私から距離をとり、魔法を展開させた。
その魔法は私しか狙っていない。
まずはこちらの狙い通り。
あとは、色々と見破られないよう立ち回らないとね。
ロムルスは展開させた魔法から、最上級魔法を大量に撃ち出した。
魔法を使った戦いでは、牽制の初級魔法、威嚇の中級魔法と、それぞれの魔法に役割を持たせるものだ。
と言うのも、魔法は探知されやすく隙も大きいため、初級魔法や中級魔法を目眩ましに、上級以上の魔法を当てると言うのがセオリーだからだ。
でなければ、魔法は案外、簡単に避けられたり防がれたりしてしまう。
ロムルスはそのセオリーを無視し、最初から最上級魔法を撃ちまくっている。
速攻で仕留めるためか、はたまた自分の魔力を誇示したいのか、それとも単なる阿呆なのか。
この際、魔眼の魔素可視化は使わず、魔力探知で凌いでいこう。
最上級魔法は威力は高いが、使用する魔力も膨大。
わざわざ可視化する必要もなく、魔力探知だけで事足りる。
「灼熱魔法、爆炎球」
「轟雷魔法、千雷槍」
「極凍魔法、砕氷弾」
どれも、五行の最上級魔法だ。
こいつは五行魔法のスキルを持ってなかったけど、それでも高難度の魔法を軽々撃てるあたりさすがと言える。
でも、そんな避けやすい魔法ばかりだと、簡単に間合いを詰められるよ?
私は迫り来る魔法を避け、ロムルスへ近付こうとした。
爆炎球、千雷槍、そして砕氷弾を回避したところで、私の目の前に別の魔法が迫っていた。
「暗黒魔法、黒の矢」
最上級魔法を目眩ましに使うとか、なかなかやるじゃない。
私はさらに闇の矢を躱し、魔神爪サイカに魔力を充填しながら、ロムルスとの距離を詰めた。
「暗黒魔法、黒の剣」
ロムルスはその四本の手にそれぞれ闇の剣を携え、私に向かって突進してきた。
迎え撃つつもりだろうけど、そう簡単にはいかないよ。
一撃目は回避、二撃目は受け流しつつ闇の剣を弾き飛ばす。
三撃目、四撃目を受け止め、ロムルスの腹部に蹴りを叩き込んだ。
「ぬうっ!」
バランスを崩し、体を屈めたロムルスの顎目掛けて、アッパーを放つ。
ロムルスの体が大きく仰け反ったところへ、魔神爪サイカを振り下ろす。
しかし、その攻撃は防がれた。
ロムルスはそのまま身を翻し、体勢を立て直しながら反撃をしてきた。
それを回避し、距離をとる私の横を、先ほど弾き飛ばした闇の剣が飛来した。
あのまま戦ってたら貫かれてたね。
危ないところだけど、今の私の反応速度なら余裕なのだよ。
私の素早さは二万。
対するロムルスは三万。
私の素早さでは、ロムルスの攻撃に反応はできても、避けることはできなかっただろう。
しかし、私はロムルスの攻撃を回避することに成功している。
それこそ、私が編み出した秘密兵器だ。
これをさらに鍛えれば、セラメリアやサーペントの素早さにも反応できるだろう。
これは、この世界に住む者には真似できない。
前世の記憶を持って転生した私だからこそ、できる芸当なのだ。
まさか、はずれだと思っていたスキルが、こんなに使える子に変身するとは、思ってもいなかったよ。