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90 セルバンテスVSベルンハルト

 包囲していたネレディクト軍を全員無力化させたところで、私はベルンハルト様の様子を確認することにした。

 二人はいつの間にか、騎士団の包囲網の外側で戦っていた。

 味方に被害がいかないよう配慮してくれたのか、はたまた偶然かは分からないけど。


 二人の剣が激しくぶつかり合う。

 セルバンテスの二刀流による連撃に合わせて、ベルンハルト様が攻撃を相殺している状態だ。

 ベルンハルト様は大剣なのに、セルバンテスの攻撃を全て相殺しているのは、やっぱりさすがと言えるだろう。

 そしてそんな二人を、歯がゆそうな眼差しで見つめる者がひとり。

 それは、私の隣にいるレイロフ君だ。

 国王会議が終わってから、どうもレイロフ君の様子がおかしい。

 まるで人が変わったかのように、剣術に打ち込んでいた。


 ……その原因は、何となく分かる。

 あの時、ロムルスが会議室に兵士を呼び寄せ、国王達に剣を突き付けさせた。

 そんな非常事態に、何もできなかったことが悔しかったんだろう。

 自分は力不足だと思ってしまったんだろう。

 そしてセルバンテスとベルンハルト様のように、未だ越えられない壁が存在していることが悔しいのだろう。


 マリアさん、ドラン公爵、そしてベルンハルト様。

 それぞれの戦いぶりを見ていて思ったけど、彼らにはLV以上の強さがある。

 それは経験云々ではなく、隠しステータスの存在を疑いたくなる強さだ。

 例えばマリアさん。

 彼女の魔力は約五万。

 とてつもなく強く感じるが、それでも実は私以下だ。

 にも関わらず、マリアさんは私が突破できなかったランスロットの盾を軽々と粉砕してしまった。

 ドラン公爵はドラゴンだったから良いとして、ベルンハルト様だ。

 実はベルンハルト様のステータスは、セルバンテスを下回っている。

 それなのに、今こうして、セルバンテスと互角の戦いを繰り広げている。

 ステータスでははかれない強さを秘めているのは確かだろうけど、それが何なのか皆目見当もつかない。

 つまり何が言いたいのかというと、レイロフ君も謎の強さの秘密を突き止めれば、今以上に強くなれるってこと。



「そんな安直な」

「でも、その通りだから、レイロフ君は剣術に打ち込んでたんでしょ?」

「……まあ、それはそうですが」



 剣同士がぶつかり合う音が大きくなった。



「どうしたセルバンテス、以前よりも技の切れが落ちたのではないか?」

「ぬかせ!」



 おお、白熱してきたね。

 互角だった二人の戦いは、いつしかベルンハルト様優勢になっていた。

 ベルンハルト様の重い一撃を、セルバンテスは防ぐことに精一杯だ。



「おのれ! 貴様のどこに、そんな力が!」

「さあな。実は俺にも分からんのだ。あの時はあれほど強かったセルバンテスが、どうしてこうも弱くなったのかとな」

「貴様ぁ!」



 おお、言うね。

 さすがに怒ったようで、セルバンテスの攻撃が激しさを増す。

 が、それでもセルバンテスの劣勢は覆らなかった。



「どうしたセルバンテスよ、そろそろ本気を出したらどうだ?」

「くっ……かくなる上は!」



 セルバンテスは目の前で剣を交差させ、全身に力を入れた。

 ……こいつも?

 変身するとか見飽きたよ?


 セルバンテスの頭には角が生え、その体躯は一回り大きくなった。

 変化はそれだけなんだけど、明らかにパワーアップしたということは直感的に分かる。



「魔帝ロムルスより授かったこの力で、貴様を葬り去ってやる!」

「……堕ちたな、セルバンテスよ。お前が欲していた力は、そんな紛い物だったのか?」

「力こそ全て。たとえ紛い物であろうと、力に代わりはない。そして力を手にする為には、モンスターへと変貌する事も厭わぬ!」

「そうか。お前は、師匠の教えすら忘れちまったみたいだな。だったら俺が、師匠の教えを思い出させてやる」



 ベルンハルト様の戦闘スタイルは、大剣を片手で扱うものだ。

 そのベルンハルト様が大剣を両手で持ち、その切っ先をセルバンテスへと向けた。



「いくぞ、セルバンテス」

「来い、ベルンハルト!」



 ベルンハルト様は体勢を低くして走り出した。

 それに合わせて、セルバンテスは双剣を振りかざした。

 セルバンテスの一撃目を回避、二撃目を剣で受け流すと同時に、セルバンテスの剣を弾き飛ばした。

 飛ばされた剣を無視してのセルバンテスの三撃目。

 ベルンハルト様の首を狙った三撃目を伏せて躱す。

 伏せた体勢からセルバンテスへ斬り上げ。

 体を回転させて避けたセルバンテスは、回転力そのままに回し斬りを放つ。

 それをジャンプで避けるベルンハルト様。



「奥義……」



 ベルンハルト様の剣が輝いた。



「ホワイト・アウト」



 怒涛の十二連撃。

 もう私の素早さでも、何が起こったのか分かりません。



「無念……」



 セルバンテスは倒れた。

 いやはや、息を飲む戦いだったよ。



「……馬鹿野郎」



 そう呟いたベルンハルト様は、戦線を離脱してしまった。

 まあ、終わったから良いけどさ。

 ……あんまり良くはないか。

 まだ、私の苦手な奴が残ってるんだよね。

 尽きない疑問は後で解決するとして、今はユキメのもとに向かわないと。

 アイテム以外効果がない敵と、アイテムなしでどうやって戦えば良いのか分からないけどね。

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