表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/188

80 ドルフノルス攻防戦 前編

 戻った私に対し、カグラは何も言わなかった。

 感情をむき出しにしていた私に、どのように声をかけて良いのか分からないのだろう。

 それか、私の裏を目の当たりにして、私に疑問を持ったか。



「サキさん、貴女は……」



 ようやく放った言葉がこれだけ。

 色々と考えても、答えが出なかったと言ったところか。

 ……そう言えば、カグラには身の上話をしてなかった。

 もちろん、今の私ではなく前世の私のことだ。

 ……そろそろ、頃合いかもね。



「この戦いが終わったら、全てを話してあげる。私が何者なのか、その全てをね。さあ、次はドルフノルスだ。転送を頼むよ」



 カグラは無言のまま、転送方陣を展開した。



 ドルフノルス北の荒野に着くと、ドルフノルス、セラメリア混合軍はネレディクト軍をすでに国境線ギリギリまで押し返し、私の指示を待っている状態だった。

 素晴らしい仕事ぶりだね。

 私はカグラを安全な場所に待機させ、最前線へと向かった。


 こちらのネレディクト軍には、モンスターも配備されていたようだ。

 でも、モンスターマスターのスキルを持つユノが戦線離脱したことで、モンスターの統制はまるで取れていない。

 このままだと余計な被害を被りそうだし、サクッと倒しておきますか。


 全てのモンスターを狩り終えたところで、ネレディクト軍から銀の甲冑を身に纏った騎士が現れた。

 こいつがランスロットだね。

 さて、どう出るかな?



「貴殿を魔王殿とお見受けした。軍の統率力、貴殿の力強さ、流石は魔王と呼ぶに相応しく、誠に見事なものであった」



 こいつは武人タイプか。

 だったら、話し合いに応じてくれるかも。



「貴方は、ネレディクトのランスロット隊長ですね。なかなかの切れ者と見受けました。そんな貴方なら理解できるはずです、これ以上の戦いは無意味だと」

「確かに。今や我が兵の大半は行動不能に陥り、こうして国境線まで撤退せざるを得なくなった。ユノ殿から借りたモンスターも、貴殿が全て倒してしまった。足掻いたところで、我が軍の敗北は決定的」



 やっぱり、戦いを良く分かってる。



「だが」



 おや?



「我らにも意地がある。これ以上は退けぬのだ」



 ランスロットは大盾と槍を構えた。

 うーん、できれば戦いたくないんだけど。



「いざ!」



 ランスロットは大盾で体をカバーしながら、槍を前に構えて突進してきた。

 仕方がない。

 私はランスロットを飛び越えるようにジャンプしつつ、複数の魔法を展開。

 がら空きの背中に数発撃ち込んでみた。



「ふんっ!」



 ランスロットは体を翻し、大盾を地面に突き立てた。

 魔法は大盾に直撃したけど、ランスロットにダメージは通らなかったようだ。

 本来なら魔法とは盾で防げるものではないけど、ランスロットが持っている盾は魔法を遮断できる構造のようだ。

 大盾特有の高い守備力をさらに高めるために、大盾を地面に固定するためのアンカー状の突起も備わってる。

 まったくもって厄介な。



「流石は魔王、その強さは計り知れぬか」

「だったら退いてくれると、こちらとしても助かる」

「それは出来ぬ。たとえ差し違えてでも、魔王に一矢報いるのみ」



 これだから武人は。

 こっちが本気を出せば、こいつを瞬殺することは不可能ではない。

 でも、あまり本気を出したくないんだよね。

 私がユノ相手に本気を出したら、味方の兵士が数人怖がってたし。

 敵にも味方にも、あまり悪い印象は与えたくない。



「来ないのなら此方からいくぞ!」



 悠長に考えてる場合でもないか。

 ランスロットは、先ほどと同じ構えで突進してきた。

 躱して攻撃しようとしても、こいつの反応速度が高く、すぐに防がれてしまう。

 だったら正面突破しかないじゃない。


 ランスロットは槍の間合いまで近づくと、素早く連続で突いてきた。

 避けられない速度ではないけど、それでもかなり速い。

 並みの兵士では太刀打ちできなかっただろう。

 だから私が相手をしてるんだけどね。

 私は槍の一撃を弾き、次の一撃が来る前に、大盾を思いっきり殴ってやった。



「ぬうっ!」



 耐えやがった。

 大盾には、ひび一つ入っていない。

 むしろこちらが、腕を痛めてしまった。

 じんじんと痛む腕を押さえながら距離を取ったけど、あの大盾どんだけ堅いんだよ。



「素晴らしき攻撃力。この盾で受けて尚、我に衝撃を与えるとは」



 称賛されても嬉しくないよ。

 打撃も魔法も駄目となると、やっぱりあの大盾をかい潜らないとダメージは与えられないか。

 魔法なら意表を突くような場所から攻撃できるけど、ランスロットの反応速度なら防ぎきりそうだし。

 いつかの亀みたいに、突破口でもあれば良いんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ