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70 国王会議

 浮遊感に酔いつつ転送を終えると、そこは洋風の会議室だった。

 既に、各国の国王が数名集まっている。

 会議には10名参加するらしい。


 人族、サクラノ王国からロウゲン王。

 人族、ジュエリス商国からゴルドロット商売王。

 人族、メルトナ王国からユーリス女王。

 人族、ヒノ鍛冶王国から炎王フレイムルーラー。

 魔族、テルメピスト王国からアイリス女王。

 魔族、バンテス王国から不死王ゲネス。

 魔族、ドルフノルス鍛冶王国からブラハ王。

 魔族、小国ロムルスからロムルス王。

 そして、魔族セラメリア王国からは私。

 人族からは勇者リンちゃんも人数に入るようだ。

 これで10名。


 多すぎて名前なんか覚えられるかっての。

 私以外にも、そう思った国王が過去に居たのかな?

 卓上には、各国王の名前がリストアップされた紙が、人数分置かれていた。


 この会議室には、魔法陣以外に出入り口が存在しない。

 だから上座も存在せず、どこに座るかは自由だ。

 私は近場の席に座り、今来ている王達の顔と名前を確認した。

 それからライブラリを表示して、この王達はどういう人物なのかを、予め調べておこう。

 ライブラリで詳細を表示しても、相手はその事は分からない。

 鑑定した時のようにアナウンスが入ったり、魔眼を使った時のように違和感を与えることもない。

 この数日で色々と試したから間違いない。

 会議まではまだ時間があるし、片っ端から調べてやろう。


 一通り調べて分かったこと。

 ロムルス以外は経済的な余裕はあるものの、他国に構っている暇は無いと言った様子。

 全員、何に対しても中立の立場を守ってるという印象だ。

 私だって、これだけの国があると知ったのはつい先ほどだし、そんなものなんだろう。

 余程の事態が起こらない限り外交は部下任せだし、国王同士が会うことも、国王会議を除いて滅多に無いようだ。

 一方のロムルスは、悪政の限りを尽くしているらしく、国民からも他国からも評判は悪い。

 しかし、そこを口出しすることはできない。

 国のことは国で解決。

 それが、暗黙のルールになっているとか。

 まったく、ライブラリは細かい所まで検索できて、大変便利だわ。

 そりゃあ、権限がなければ使えないよね。


 私が一通り調べ終えたところで、王達が全員集まったようだ。

 先ほどまで談笑の声に満ちていた会議室が、一瞬にして静まり返る。



「ではこれより、第487回国王会議を開催する。議長はサクラノ王国国王、ロウゲンが務めさせていただく」



 開催国の国王が議長を務めるって、さっきアナスタシアが言ってたな。

 と言うことは、いつか私にも議長役が回ってくるのか?

 それだけは勘弁してほしい。



「会議を始める前に紹介しておく。今代の魔王サキと、勇者のリンだ」



 余計なこと言いやがって。

 ロウゲンからは何も言われてないけど、これは自己紹介しなきゃいけない流れじゃないか。

 ……仕方がない。



「各国国王の皆様、お初にお目に掛かります。セラメリア王国の魔王、サキ・アルシウス・ネルレザードです。以後、お見知り置きを」



 ざわつくな鬱陶しい。

 さあ、次はリンちゃんだ。

 ロウゲン王相手だとあれだったリンちゃんだけど、さすがに緊張してるね。



「は、はじめまして。勇者のリン・クロウスライト・フェムリノメスです。……よ、よろしくお願いします」



 簡潔な自己紹介を終えたリンちゃんは、大きな溜め息をついて席に座った。

 初めてにしては良いんじゃないかな?

 私が言えたことでもないけど。



「では、国王会議を始める。最初の議題は、最近各国で暗躍しているとされる、サーペントと名乗る賊についてだ。この場で情報交換をしようと思う」



 あいつ、各国を渡り歩いてんのか。



「先日、我がヒノ王国にて、技術者が誘拐される事件が起こった。スリープシープの催眠毒が使われた事から、毒風の盗賊団の仕業と見て間違いないだろう」



 炎王フレイムルーラーは淡々と報告した。

 毒風の盗賊団って、あいつが作った盗賊団の名前だったか。

 技術者を誘拐したってことは、自分や部下に持たせる武具を作らせるためだろう。

 それか、あいつが持ってる爪甲のメンテナンスのためか。

 どちらにしても、厄介なことをしやがってと心底思う。


 他の国からも、続々と被害報告が上がっていく。

 金品の盗難が主だけど、魔法や魔術の技術が盗まれたって報告もあった。

 うーん、私も被害にあってるし、発言した方が良いのかな?

 みんな王様だし、隠しておく必要もないよね。



「我がセラメリア王国では、私が狙われました」



 さすがにどよめくよね。

 構わず続けよう。



「サーペントは私を狙い、三度に渡って襲撃してきました。どれも未遂に終わったため、私は今、この場に居ることができるわけですが、またいつ狙われるかも分からない状況です」

「狙われる理由について、何か心当たりはありますかな?」



 ロウゲン王が訪ねてきた。

 さて、これは正直に言うべきか。

 セラメリアの復活に関与している、と言ったところで、私にはそれを証明するための証拠がない。

 それに、アナスタシオスはロムルス国の貴族だ。

 サーペントに襲撃されたのは事実だが、そこにアナスタシオスが関わっていると言えば、ロムルス国は間違いなく反発してくる。

 単なる絵空事だ、狂言だ、策略だと言われ、最悪もみ消されてしまうのは、目に見えて分かっていることだ。

 だったら。



「いいえ、心当たりはありません」



 こう言う以外に、私に選択肢はない。



「静粛に。サキ殿、他の国王も狙われると思うか?」

「可能性が無いとは言い切れませんが、サーペントは私自身と言うより“魔王である私”を狙ったかのような口振りでした」



 会議室内が、かなりざわついてきた。

 当たり前といえば当たり前か。



「静粛に! この議題はここまでとする。次の議題へ移るとしよう」



 皆がざわつく中、ロムルス王が不適な笑みを浮かべていた。

 私の視線に気づいたロムルス王は、すぐに顔を逸らした。

 サーペントが私達の前に現れながら、その証拠を一切残さなかったのは、この時のためかと勘ぐってしまう。

 あながち、間違いとも言えないんだろうけど。



 その後の議題は、モンスター被害に対する各国の対処法とか、他国間の貿易に関する意見交換とかだった。

 長く退屈な話だったせいか、リンちゃんはいつの間にか居眠りを始めてしまった。

 いい気なもんだね。



「これにて議題は以上となるが、何か言いたい事のある国王は居るか?」

「では、私からひとつ」



 そう言って立ち上がったのは、ロムルス王だった。

 嫌な予感は当たるよね。

 何を言うつもりか知らないけど、余計なことを言うなよマジで。

 と、思ったところで無駄だった。

 ロムルス王は、とんでもないことを口走りやがった。

 どうしよう?

 ぶっちゃけ、どうすることもできないよ?

 私にいったい、何ができるって言うのさ。


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