68 ライブラリ
部屋に戻った私は、アナスタシアから受け取った薬を飲んでからライブラリを呼び出した。
そこからセラメリアを検索。
さらに、セラメリアの名前に近い人物を絞り込んでいく。
ノーネームによると、セラメリアが操っていた歴代の魔王は、全てセラメリアの血縁だ。
それが五百年前、何かの手違いで血縁以外の者に、魔王の力が継承されている。
そこで魔王の力はスキルに封印された訳だが、セラメリアの血縁が、その後どうなったのかは書かれていなかった。
セラメリアの血縁。
それは、セラメリアと魂の繋がりがある者。
もし、セラメリアの末裔が今も居るのなら、セラメリアはそいつを使って復活しようとしているのではないか、と言うのが私の推測だ。
そして、セラメリアの血縁なら名前は受け継がれているはず。
セラメリアの名前はネレとアルシウスだから、そのどちらか、あるいは両方が名前に入っている者をピックアップしていく。
途方もない作業だが、アナスタシアに貰った薬のお陰で、何とか乗り切れそうだ。
ネレ、そしてアルシウスの名を持つ末裔、見つけることは見つけたけど……。
〔サキ・アルシウス・ネルレザード〕
まあ、私だよね。
でも、私の肉体は転生の際に、システムによって構築されているはずだ。
転生中に妖精さんが、肉体の構築とか言ってたから間違いないだろう。
でもセラメリアは、この肉体のことを知っていたような素振りだった。
本来なら私が云々と言っていたし……。
それから私の名前。
御名付けの儀で神様から授かった名だけど、どうしてアルシウスの名が付けられたのかが引っかかる。
それに、貴族から魔王が生まれないってことは、セラメリアの血縁から魔王を出さないようにするための措置のはずだ。
魔王の力を継承し、なおかつ血縁であれば、セラメリアはその者を操ることができるからだ
私がアルシウスの名を授かった理由が、セラメリアの血縁だからだと仮定しても、それなら私は魔王のスキルを継承できないはず。
うーん、訳が分からなくなってきた。
とりあえず、私ではなくネレかアルシウスの名前を持つ者を検索。
〔アルシウス・クィンテネラ・ロムルス〕
ロムルス? どこかで聞いたような?
〔ロムルス:セラメリア王国の従属国。セラメリア王国の東に位置している〕
ああ、アナスタシアのお兄さんが居る国か。
で、名前的にこの人は、ロムルスの国王ってことだよね?
島流しにされたセラメリアの末裔が、独自の国を立ち上げたとか、そんなところか?
確か小国とか言ってた気がするけど、もしセラメリアがロムルスを使って復活したら?
従属関係にあるってことは、独立戦争でも起こすつもりだろうか?
……いいや、侵略戦争か?
どちらにせよ、私や国に対して、何かしらのアクションは起こしてくるんじゃなかろうか?
何だか、嫌な方向にばかり考えが向いてしまう。
薬は効いてるはずなんだけど。
とりあえず、セラメリアの血縁に関しては一時保留にしておこう。
やらなければならない事が多いからね。
セラメリアを検索、情報の表示。
〔セラメリア・ネレ・アルシウスのデータはプロテクトされています〕
チートアイテム、ハッキングプログラムを使用。
〔プロテクト解除。セラメリア・ネレ・アルシウスのデータを表示します〕
〔セラメリア・ネレ・アルシウス:初代魔王。現在は封印されている〕
〔総合戦闘力:SS〕
〔総スキル数:17〕
〔対象の現在地:エルステルン山脈最奥部、封印の間〕
〔詳細〕
エルステルン山脈、封印の間?
……そこはあとで調べよう。
セラメリアの詳細表示。
〔LV:350〕
〔名前:セラメリア・ネレ・アルシウス〕
〔種族:大魔王〕
〔HP:2798690〕
〔MP:3998670〕
〔SP:1885650〕
〔攻撃力:189650〕
〔守備力:174300〕
〔魔力:394500〕
〔魔法耐性:279800〕
〔素早さ:110000〕
〔大魔王〕〔大魔導〕〔大神官〕〔武神〕〔舞踏〕〔破壊者〕〔簒奪者〕〔支配者〕〔魔力の泉〕〔魔物創造〕〔魔力自在〕〔魔眼〕〔超速演算〕〔神速〕〔中二病〕〔限界突破〕〔権限LV6〕
もはや化け物だね。
さて、ここからさらにハッキングプログラムを使いたいけど、何が起こるか分からないし怖いから、今はやめておこう。
次はあいつだ。
〔サーペントのデータはプロテクトされています〕
〔プロテクト解除。サーペントのデータを表示します〕
〔サーペント:毒風の盗賊団の首領〕
〔総合戦闘力:SSS〕
〔総スキル数:12〕
〔対象の現在地:ロムルス国〕
〔詳細〕
詳細の表示。
〔LV:632〕
〔名前:サーペント〕
〔名前:柴門 礼司〕
〔種族:蛇人〕
〔HP:6583750〕
〔MP:4355690〕
〔SP:5948730〕
〔攻撃力:598900〕
〔守備力:238000〕
〔魔力:334250〕
〔魔法耐性:255600〕
〔素早さ:233900〕
〔蛇人〕〔破壊神〕〔大盗賊〕〔強欲〕〔憤怒〕〔劇毒攻撃〕〔眷族召喚〕〔神速〕〔毒回復〕〔オタク〕〔限界突破〕〔権限LV7〕
やっぱり、あのクソガキだったか。
柴門 礼司とは、私の従兄弟の名前だ。
正確には前世の私だが、私のことを“沙絹姉ちゃん”と呼ぶのは、こいつしかいない。
私が確認したかったのは、正直これだけだ。
確証は持てなかった。
間違いであってほしいと思ってたけど……。
まだあいつは、礼司は勘違いしてるのか。
と言っても、あいつは信じないだろうけど。
………。
とにかく私は、礼司よりは強くならなきゃ。
あいつは、強い奴の言うことしか聞かないからね。
あのクソガキめ。 どこに行っても、他人に迷惑をかけるつもりか。
まさかセラメリアよりも、こっちの方を重要視しなきゃいけないなんて……。