表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

第1章 メルダン王国の衰退 第1話

アクセスいただきありがとうございます。


末永くお読みいただけると幸いです。



※ポイポイ投稿なので全話修正更新対象となります。大きくは変わりませんが、細かい部分が変更されるかもしれません。ご理解ください。

~2020年7月23日 0930 東京都大田区~


 端のない球体である地球上で極東の島国と呼ばれる、日本。


 御上(おかみ)至上主義でありながらも国際的な面子を考え、民主主義を必死に掲げているこの国で4年に1度世界のどこかで行われている競技大会の聖火リレーが行われていた。

 会場まであと十数キロ。京急蒲田駅前に差し掛かかった地点。

 公平な選考のもと選出されたランナーがトーチを掲げながら走る。

 その歴史的瞬間を一目観ようと集まった観客は声援が送る。

 ランナーもそれに応え、手を振る。


 しかし、その何気ない当り前のような行動が不注意を呼び寄せた。


 一人の観客の手から離れた手旗がランナーの手前に落ちた。

 観客に手を振るランナーは気付かず進み、そして周りの並走するサポーターも拾い損ねてしまう。


 ランナーは落ちていた手旗を踏み、バランスを崩した。

 転倒とともにランナーの手から離れたトーチは、アスファルトに叩き付けられた。




――そして数年前に大幅な区画工事が行われた京急蒲田駅前が異界の戦士たちによって焦土と化した。



~2020年7月25日 0930 東京都大田区~


 自衛隊のAH-64D(アパッチ)が飛び交い、至る所に噴煙(ふんえん)が立ち(のぼ)り、血の匂いが充満し、救急隊員や自衛隊員が奔走している。

 若手の女性レポーターの三村がマイクを片手にカメラを見る。


『三村さん。現地の様子はどうでしょうか。』

 三村はスタジオにいるキャスターの声が彼女の片耳につけているイヤホンから聞こえると、血腥(ちなまぐさ)さにどことなく放心気味の意識を無理やり引き戻した。


「はい、現場の三村です、現在京急蒲田駅から1キロ離れた地点にいます。テロが起きたと思われる京急蒲田駅周辺では自衛隊や警察、自治体によって大幅な交通規制が敷かれ、我々報道陣も一切入ることを許されていない状態です。しかし、こちらから見える噴煙(ふんえん)や、付近に散らばる瓦礫(がれき)等からもわかるようにとても大きな被害を受けたと予想され、救急車両が頻繁(ひんぱん)に行き来していることからもけが人も多数出ているようです。」

『行方不明者も多数出ているようですね。』

「はい。被害が大きく、詳しい人数については把握しきれていません。現在も必死の救出活動が行われています。現在政府より発表されている被害予想によると死者数は1万人を超え、けがを負われた方は20万にのぼるのではないかとのことです。いまだテロリストの全体像が見えず、大規模な鎮圧活動は完了したものの実行犯達の潜伏の可能性がある為、依然(いぜん)厳戒態勢(げんかいたいせい)が敷いている状態です。」


 そう言い切ったところで、カメラマンの高橋がディレクターの指示を受け、三村の背後に映る人影に向いた。


 三村はカメラが微妙に向きを変えたのを見て、すぐさまレポートを中断し、カメラの向いた方向へ振り返ると三村の視界にも人影が見ることが出来た。


「人です! 人が見えます!!」

 生存者か、救急隊員か、もしくはテロリストか。なんとなく嫌な予感がするも、レポーターとしての使命を果たすべく様子を伝える。


「こちらに、手を振っているのでしょうか!?こちらに向け手を広げています。あれはテロリストでしょうか!? 甲冑(かっちゅう)のようなものを着ています。」

 中世ヨーロッパに活躍した甲冑の騎士のような格好をした者がこちらに向け手を掲げていた。

 ――そして次の瞬間、手から赤色の光が放たれた。


 野球ボール程の火の玉がプロ野球選手も驚愕するスピードで、三村のすぐ横を通過した。


 ――ガシャン!

 背後で数百万のカメラが落下した音がする。


 自分の命のよりもカメラを大事に取り扱っていたカメラマンの高橋がそれを落としたということから、それがどういう意味を持つか。尋常(じんじょう)ではない事態であることはすぐに理解した。


 三村が振り返って目にしたものは、仰向けに倒れていた高橋だった。


「高橋さん!」

 三村はすぐに高橋に駆け寄るが、容態(ようだい)を見るとすぐに激しい吐き気に襲われその場に崩れる。

 高橋の顔が半分焼けただれ、もう半分が無くなっていた。



「ぐあ!」


 数秒も経たず、ディレクターが苦痛の声を上げた。

 三村は水気の多い何かが落下した音のする方へ口を押えながら恐るおそる振り向いた。


 三村は今度こそ胃の中のものを吐き出した。

 チーム思いのディレクターは腹部から分裂していたのだ。


 飛び散る血がアスファルトを赤く染める様子が全国に中継され、一時日本国内はパニックに陥った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ