国、子孫
次の話は未定。ネタは決まってるのでそのうちに
オレの住む国は、勇者が建てた国だ。
勇者の理想を形にした国らしい。
だけど今はどこの国とも関わらないし、国民を閉じ込めて逃げれないようにしてる、嫌な国だ。
だからオレは今日、街を出る。家族と出る。
逃げるんだ。
「さぁ、早く乗って」
オレたちは隣の国の軍の人たちに手伝ってもらって、荷馬車に乗った。父さんや母さん、姉ちゃんは、助けに来てくれたからもう大丈夫。亡命できるって言うけど、本当かな。
「父さん…騎士団とか王様たちとか、こないのかな」
「シッ!不吉なことを言うんじゃない!」
父さんは幌で見えないのにどこか遠くを見て、ため息をついた。
オレたちの住む国は、むかーしむかしの勇者が作った国らしい。だから勇者の子孫の王様たちはみんな強い。気に入らないことがあったら、一瞬で人を殺せたり、どこか遠くの村を魔法で焼いたりできる。
友達のレミーの父さんは騎士だったけど、王様がいるときになにかミスしてしまったから殺されたって言ってた。オレやオレの家族はまだ誰も王様たちに殺されてないけど、税が高くて、法も厳しくて、生きていけなくなりそうだったから亡命するんだって姉ちゃんが教えてくれた。
「姉ちゃん」
ガタゴトと揺れてなかなか眠れなくて姉ちゃんの腕を触ってみたら、姉ちゃんは起きてた。姉ちゃんは一番いい学校にいってて家族の中で一番賢いし、優しいから教えてくれるかもしれない。
「寝れないの?」
「うん…ほんとに王様たちが怒っておいかけてこないのかなって…。亡命って、したら処刑なんでしょ?」
「こないよ、だから処刑もされない。大丈夫」
「なんでわかるの?いつもなら来るよね」
亡命しようとした、許しなく国の外に出ようとしたって人が時々王様たちに処刑されて広場で見世物になることがある。だれもそれから逃げられたことはないってみんな言ってる。どうしてかっていうと、王様たちはすごい魔法でオレたちを見張ってて、国から逃げたらバレるらしい。なのになんでって姉ちゃんに聞いたら、姉ちゃんはため息をついた。
「ううん、アンタわりと賢いから分かっちゃうかなぁ…」
姉ちゃんはそう言って、しばらく悩んた。
「絶対、誰にも言わないって約束できる?ずっとじゃなくて、1年くらいだけ」
「それなら大丈夫!」
「父さんや母さんにもよ」
「うん!」
やった、教えてくれる!オレは今まで、ちゃんとナイショにすることはナイショにしてきたからかもしれない。それに1年くらいなら大丈夫。
「なんでかっていうとね…王様たちがみんな死んじゃったら誰もこれないでしょ」
「え?」
「王様たちはみんな死んじゃったの。だからだれも追いかけてこれないのよ」
「えぇっ、あの王様たちを!?」
「シィッ、声が大きい!」
びっくりした。あの強くて怖い王様たちを殺してしまえる人がいるなんて。もしかして、ホンモノの勇者が来て、悪い王様たちをやっつけたのかも。なにしてるんだーって。そう姉ちゃんに言うと、姉ちゃんはため息をついた。
「隣の国について落ち着いたら、一緒に学校に行こうね」
「やったぁ!」
オレたちが亡命してから1年後、勇者の国は滅びた。王様たちは王様とその家族は処刑されたけど、他の人たちは行方不明らしい。なんとなく姉ちゃんが知ってる気がしたけど、ほんとに大事で必要なことなら、察して教えてくれるはずだ。
そうでないならオレは知らんぷりをしておこうと思う。
【ある国】
ある日、のちに大魔法使いと呼ばれる若きカレン・マクレガー女史が、王家が国境に張り巡らせた人体感知術式の無効化などに成功。これにより人の出入国が王家に知られることなく可能となり、女史は隣国へ救済を求め、これを約束された。
隣国の進入・王家制圧を経て勇者の国は1年をかけて完全に解体され、地図から名を消し、その土地は隣国に合併された。
【勇者の子孫たち】
時を経るごとに弱くはなれど、神の祝福を依然として受ける一族。強大な力を有していたにも関わらず、亡国の間際に皆殺しにされた。
彼らを殺すにはそれ以上の力、それこそ本物の勇者でない限り太刀打ちはできないとされており、依然として誰が捉え、殺したのかは判明しないままである。
隣国には当時そのようなことができる人物はいなかったとされている。
【大魔法使い カレン・マクレガー】
斬新な魔法理論を打ち立て、魔法の普遍化に尽力した偉大なる魔法使い。今日の魔法教育の祖でもある。
膨大な魔力を有しており、国家全てを覆う術式に1人で干渉し、無効化に成功したとされている。
眉唾ものの話ではあるが、勇者の子孫を捕らえ、処刑したのはこの人物ではないかとも言われている。
【宰相 ユリウス・マクレガー】
大魔法使い カレン・マクレガーの実弟にして、平民から勇者の国隣国の宰相に登りつめた下剋上の偉人。
姉とともに勇者の国から亡命後、その頭角を現したとされている。非常に察しのよい人物として国には慕われ、敵国からは恐れられた。