ティーガとの戦い・3
爆散したティーガの前に立っていた彼女は、全身に血を浴びてかなり不快感を感じていたけど……正直、身体を動かすのもやっとやっとだから、仕方ないと思うことにして血のシャワーを浴びつつその場に座り込んでいたわ。
そんな彼女を労うように心の中で彼が話しかけてきたの。
『何とか、やったみたいだな……』
『うん。何とか、倒せました……後は、逃げないモンスターを倒さないといけないけど……ちょっと休みます』
『ああ、そうしておけ。正直、魔力を使い過ぎたんだから倒れるのも時間の問題って所なんだからよ』
『はい……、あれしか方法が無いって分かってても、練習無しで本番は厳しいですね……』
力が無い声でそう言いながら、彼女は先程の戦いを思い出していたわ……。
それと同時に、読みが当たったことに安堵の溜息を漏らしたの。
迫り来るティーガに向けて、彼女は何度も魔法を放っていたわ。
火、水、風、土の基本的な4属性。そしてそれらの枠組みから外れたであろう、雷。
けれどそのどれもが、ティーガに近づくと威力を失ったかのようにフラフラし始めて、最終的には消失していた。
その時点で普通の魔法だと効果は無いと考えて、今度はかなりの魔力を『収束』したものを撃ち出したらどうなるかと試したの。
通常、10込めるところを50込めて放ったけれど……やっぱり効果は無かった。そして同時に、魔力を使い過ぎで起きるという頭痛が彼女を襲い始めていたわ。
ズキズキと頭痛に襲われつつも、彼女は『魔力を受け入れることが出来る許容量を越えると耐え切れなくなる』という考えは捨てたわ。そして、次の方法は『属性を与えずに攻撃するとどうなるか?』だったの。
『当たるか分からないですが、当たりますように……!』
『どちらにせよ、もうよくて……数発で限界だからな』
『はい、気をつけま……――ッ』
そう考えながら、彼女は自棄になったと言わんばかりに魔法を撃ち続け、その度にティーガに無力化されていったけれど……矢を撃つ合間に魔力のみで形成した透明な矢も撃ち出していたの。
そして、彼女が考えた読みは当たっていたわ。無数の魔法の矢が消失する中、迫り来るティーガに透明な矢は入り込んでいったの。けれど、1発だけだと意味がないだろうし、2発でも死には至らないだろう。
だったら、どうするべきか? 答えは簡単だ。彼女の残っている魔力を倒れる寸前ギリギリまで込めたワンダーランドで攻撃すれば良い。
だけどワンダーランドを向けた時点で、ティーガは避ける可能性が高いだろう。そう考えて彼女は確実に当てる方法を選んだの。すなわち、ゼロ距離射撃……。
…………そして、彼女の思惑は当たって、現在に至ったわ。ただし……魔力限界で倒れそうになっている上に、頭をぶつけられてグワングワンとしているけれどね。
そんな風に思い出していると、立ち上がることが出来るくらいまで回復したから、少しでも王城のほうに近づこうと考えて彼女は立ち上がろうとしたわ。
同時に、心の中の彼が焦った声で彼女を呼んだの。
『――ッ!? アリス、後ろだっ!!』
「え ――――か は……っ?!?!!?」
振り返ろうとした瞬間、力強い衝撃が彼女の横から当てられたの。
無防備な身体が衝撃を受けて、くの字へと折れ曲がり――瓦礫に叩きつけられたわ。
いったい何が起きたのか? 未知の攻撃の正体を知るために彼女は瓦礫から起き上がろうとしたわ。
その瞬間、彼女の脇腹へと鋭い何かが突き刺さったの。
突き刺さった何かは脇腹を貫通しているのか、激しい熱が指された箇所を襲い――同時に痛みが頭を埋め尽くしたわ。
「ぎ、が あ……ぁ?!」
刺された!? 痛い! 誰に? 痛い!! 何に? 痛い!!!
何が起きたのか分からないまま、彼女の頭を痛みと疑問が渦巻いていったの。
そんな彼女を脇腹に突き刺さった何かで吊り上げるようにして、突き刺した何かは引っ張ったわ。
引っ張られるたびに、激痛と腹の中を駆けずり回る気色悪さで吐き気を覚えつつ、知らずに口から血混じりの嘔吐が零れていたの。
『GUはハ、油断、大敵――ダゾ?』
「なっ!? あ、あなたは……爆発したはずじゃ……!?」
『ソウTOモ、儂ハ爆発シTE死ンダ! ダGA、きさまハ行カSHIテオク訳、ニハイカ――ん! だかRA、魔王SAマから、頂いタコNO力デ、KIサマを、KOROス!!』
言葉になりきっていない言葉を喋りながら、目の前の……ティーガの砕けた肉塊とドロドロとした何かが混ざり合った物体はそう彼女に言ったわ。
次回、痛めつけられます。