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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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ティーガとの戦い・1

「くそっ、結界が!」

「う、うわああぁっ! も、もうだめだぁーーっ!!」

「あ、こら! 逃げるんじゃな――ひぃっ!?」


 結界が崩壊したとともに、モンスターの大群は王城へと雪崩れ込んで行き、奥から悲鳴が聞こえたわ。

 悲鳴を聞いて、冒険者たちはすぐに王城へと駆け込もうとしたんだけど……両者の間を塞ぐかのように【破壊】のティーガが立ち塞がっていたの。

 その表情は大胆不敵の笑みを作っており、立ち上る闘志は倒すことが出来るなら先に進んでみろということを表しているかのようだったの。

 それを理解出来ているからか、向こうで阿鼻叫喚の声が聞こえる王城があるというのに進むことが出来ずにいたわ。

 けれどこのままでは王城は破壊されて、逃げ延びた人たちも抵抗はするだろうが疲弊し続けているであろう彼らが護り切れるはずがないと理解しているから冒険者たちは地団駄を踏んでいたみたい。

 そんな彼らの間を縫うようにして、1本の茶色の矢がティーガの前に突き刺さったの。その瞬間、ティーガの立っていた地面がヤツを囲むようにして盛り上がったの。


「ホウ?! 人間の中にも小ざかしい者は居るか! だが、これしきの小細工、儂の前には意味がな――ぬぅ?」

「お、王城の結界を壊したあれほどの攻撃を持ってしてもビクともしないのか――っッ?! おい、今の内に向かうぞ!!」

「わ、わかった!」

「早く急いで! ゆうしゃの出した壁がどれだけ持つか分からないから!」

「「おっ、おう! 急ぐぞ!!」」


 ガキンガキンと≪土壁≫を破壊しようとするティーガの音を聞きながら、隙が出来た……というか作ってもらった冒険者たちは急いで王城のほうへと駆けて行ったわ。

 そして、殆どの冒険者がティーガを通り抜けたのを見届けると、彼女は≪土壁≫を解除したわ。それと同時にガキンと砕ける音が響いて≪土壁≫が砕けたわ。

 土煙が立ちこめる中、ティーガは興味深そうに彼女を見ていたの。

 そんなティーガを正面から見据えるようにして彼女はその場から一歩も動いていなかったわ。


「お、おい、ゆうしゃのクソガキ! おめぇまさか……」

「早く行って……、救えるなら頑張って救いなさい」

「だから何でそんなに素っ気無いんだよ。これだから、クソガキなんだよ! 絶対死ぬんじゃねぇぞ!! おい、おめぇら!!」

「お――おうっ! いくぜぇぇぇぇぇっ!!」


 冒険者のリーダーとそう会話をしてから、彼女は冒険者たちが武器を手に王城に向かって駆けて行くのを見届けたわ。

 そして、ティーガへと視線を移したの。


「ガハハッ、素っ気無い態度を取りつつも、心の中は怒りで燃え滾っておる! 面白い、面白いぞ貴様!!」

「それはどうもありがとうございます。ですが、あなたとはあまり話をする気は無いので、すぐに倒してあげます」

「オオ、怖い怖い! だが、先程の防御魔法の威力、ゆうしゃとしてはかなり上級。気をつけねばならんな!」


 豪快に笑って、ティーガはバトルアックスを構えると彼女へと襲い掛かってきたわ。

 突進を仕掛けてくるティーガへとワンダーランドを構えると、彼女は即座に魔力を循環させ『火』の属性を与えるとワンダーランドを通して赤色の矢を撃ち出したの。

 『収束』の特性を与えられた火の矢はティーガへと突き刺さるとその場で火球となって、ティーガを飲み込むはずだったわ。

 けれど、ティーガがバトルアックスを振るうと……放たれた火の矢はまるで方向を見失ったかのごとくフラフラとして、最終的にはバトルアックスの一撃で圧し折られるとその場で火球にもならずに、消え去ったの。

 それを見た彼女はいったい何が起きたのかが理解出来ず、もう一度……今度は素早さを追及した『追尾』を『雷』の属性を与えて撃ち出したわ。

 猛スピードでティーガの眉間を目掛けて、雷の矢は放たれたけれど……やはりついさっきと同じように、ある一定の範囲に近づいた途端、フラフラとしてから明後日の方向へと飛んで行ったの。


「何だその魔法は! クロウが見たら、興味を示すではないか!!」

「それはありがとうございます。ですが、あなたのほうが【叡智】のクロウが興味を示していたのではないですか?」

「ほう……? もう理解したというのか?」

「はい、初めはその手に持っているバトルアックスに何らかの細工で魔法を掻き消していると思っていました。ですが、次に放った魔法はあなたの眉間を必中させるつもりでしたが、見失いました」

「あの魔法は凄かった。けれど、儂には魔法は効かん! 何故なら――」


「儂自身が魔法を無力化するからだ!」

「あなた自身が魔法を無力化するからです」


 そう同時に口にして、彼女はワンダーランドを握り締め……ティーガは不敵に笑ったわ。

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