出来上がった武器
魔力が与えられ、≪創製≫が開始された金属はまるで生きているかのように自らグネグネとしだしたの。
ぐにょん、ばにょん、むにょん、ぽにょんと伸びたり縮んだり、縦に横にと捏ねるように動いたわ。
彼女の様子に気づいた冒険者たちが、その光景を見てギョッとした顔をしているのが見えたけど、正直彼女もどう反応すれば良いのか分からなかったの。
すると、動き出した金属は透明だったものが赤へと変わり、赤から青へ、青から緑へ、緑から茶へ、茶から白へ、白から黒へ、黒から透明へと代わって行ったわ。
そして色が変わるたびに、それらは属性を司っているのだと何故だか理解出来たと同時に何故だか心が温かくなったの。
『なんだろう……すごく、温かいです……』
『何ていうか……この金属の動きかたって……お前の心の形みたいだな……』
『えっ、アタシの心ってこんな感じになってるんですかっ!?』
『いや、例え! 例えだからな例え!』
『そ、そうですか……』
そんな感じに心で会話を続けると、それぞれの色は6つに分かれ始め……直線状に並び始めたの。
そして彼女に最も適した形になると、最後に光を発して武器は完成したの。
金属で出来たクロスボウのような弓の形をした武器、本来矢がセットされるべき本体には6つの金属で作られた透明な球がはまっている。そんな武器よ。
『弓……だな』
『弓……ですね。……あの、アタシ弓使えませんよ?』
『あ、ああ、ガキ大将してただけで、戦闘訓練一つもしていないのは分かるから……』
『うぅ……忘れたい過去を掘り起こさないでください……でも、どうしてこんな形に?』
呟きながら、中と外で彼女は大いに悩んだわ。
そんな風に悩んでいると、先行していた冒険者たちの悲鳴が聞こえたの。
悲鳴を聞いて、ここは戦場なんだとようやく思い出した彼女は前を見たわ。
するとそこにはミスリルマイマイよりは小さいけれど、普通のモンスターよりも遥かに巨大な虎のようなモンスターがこちらに向かって駆けてきていたの。どう見ても、王都を襲っているモンスターの中で上位の存在よね。
どうやら、≪創製≫に集中している間に王都が近くなっていたみたい。
武器に集中していたこともあって、彼女は反応に遅れたわ。そんな彼女に、冒険者たちはあれはゆうしゃである彼女でも手に余る脅威だと考えたのか、逃げろという声が周囲からかけられたわ。
「おい! ゆうしゃのガ――嬢ちゃん、早く逃げろ!! 聞こえてるのかっ!?」
「っ! ダメ、今逃げても追いつかれる。だったら……!」
誰にも聞こえないように呟くと彼女は、出来たばかりの武器を構えたわ。
この武器は彼女が戦い易いように、金属が自ら変わってくれた物。だから、彼女の力を最大限に引き出してくれるに違いない。
そう期待し、彼女は武器を構えると魔力を循環させて『火』の属性を与えたの。すると、属性を与えられた魔力はクロスボウへと流れ込んで行き、球の一つが赤く変化したわ。
そうしている間に、巨大な虎モンスターは彼女を切り裂こうと鋭い爪を光らせて大きな手を彼女に向けて振り下ろしたの。
けれどその寸前に彼女はバックステップで攻撃を回避したわ。同時に、手に持っていた透明なクロスボウをモンスターに向けたわ。
瞬間、矢が番えられていないクロスボウから赤色の矢が放たれ、モンスターの眉間に突き刺さったの。
人間の非力な攻撃とモンスターは考えていたんでしょうね。
クロスボウを構える彼女の姿が虎モンスターの見た最後の光景だったわ。
どうして最後なのかって? それはね、眉間に突き刺さった赤色の矢は見る間に膨れ上がって、巨大な火球へと変化して虎モンスターを飲み込んだからよ。
そして、火球が収まると虎モンスターの身体が火球に飲み込まれていた辺りが消し炭となっていて、ボロボロと崩れ落ちたわ。
「え……? う……、うそぉ?」
あまりの驚きっぷりに彼女はそう漏らしていたの。
武器の見た目は、ぷりてぃーできゅあきゅあに出てきそうな感じの物と、ビーコック何とかシャーと、が●いかろすとか呼べそうな弓が混ざったデザイン(謎