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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
86/496

最後の四天王

 そう彼女が呟くと、ストンと心の中に溜まっていたモヤモヤが落ちてきたような気がしたわ。

 もしかしたら、彼女は自分自身に何も出来ない、何もしたくない。そう心の中で思い続けていたのかも知れないわね。

 だったら、守ってみせろよ。と彼が励ますように言うと、彼女はベンチから立ち上がり……冒険者ギルドへと戻るために歩き出したの。

 行くときのようなトボトボとした歩みではなく、目的を見つけた自信を込めた歩みだったわ。

 冒険者ギルドホールへと戻ると、話を始めようとしていた辺りらしく……扉が軋む音に周囲の視線が彼女へと注がれたので、頭を下げてから隅のほうに移り話を聞くことにしたの。


「えーっと、それでは話を始めさせていただきます。皆さん、宜しいでしょうか?」

「そんなことより、早く王都に向かってモンスターどもを薙ぎ倒してえんだよ!」

「落ち着いてください。先に斥候に行って来てくれたパーティーからの情報を伝えさせてください。それではお願いします」

「それじゃあ失礼して……、えー自分たちが見てきた見た王都の状況ですが、かなりマズい状態です。大型の虎型モンスターが遠目からでも数十体ほど確認出来たことから、【破壊】が指揮を取っていると思われます」

「「はっ、破壊!? 破壊って、まさか【破壊】のティーガかッ!?」」


 斥候の冒険者が告げた言葉に冒険者たちは騒然となり、先程まで飛び出す勢いだった冒険者も萎縮していたわ。

 そんな彼らの様子を見ていると、心の彼が語りかけてきたの。


『なあ、二つ名があるってことは……』

『はい、想像通り……四天王の最後の一人です。【無敵の盾】ウーツ、【最強の矛】ハガネ、【叡智】のクロウ、そして【破壊】のティーガ。それがアタシが本で読んだ魔族の四天王です』

『なるほどな……で、名前の由来とかあったりするんだろ?』

『【破壊】のティーガが戦いに赴いた国は、草木一本も残らない焦土と化するほど土地を破壊するらしいです。本にあった話ですが、エルフの国にある町ではティーガに攻め入られたために……何も残っていないそうです』

『そ、そんな奴が現在、すぐ近くで暴れまわっているってことか……しかも、山のほうでは【叡智】のクロウ……獣人の国まじピンチじゃねぇかよ』


 焦る彼の声を聞きながら、彼女は職員の話を聞いていたわ。

 とは言っても、その後に続く職員の言葉は……危険だから報酬は多いけど、命の補償はしないということと……出来るだけ手を貸してもらえないかと言う言葉だったの。

 幾ら報酬が高くても、命の危険が高すぎる戦いに参加したくないという思いが強いのか、冒険者たちは名乗りを上げなかったわ。

 けどね、そんな冒険者の中で一人だけ手を挙げて参加の意志を示す人物が居たの。


「あの……アタシ、行きます」

「は……? え、ちょ――ちょっと待ってください。あなたは確か……マスターのお客でしたよね?!」

「おいおい、何言ってるんだよお嬢ちゃん、ここはガキの遊び場じゃねぇんだぞ? ましてや、向かう先はモンスターが大量にいる地獄のような場所だ」

「……っ、お気遣いありがとうございます。おじ様、けれど皆様行きたくないようでしたから、皆様よりも弱いアタシが以降と考えた次第ですよ?」


 呆気に取られる受付職員に見られる中、彼女は自分を子ども扱いするパオ族の男性を出来る限り怒らせるように言ったわ。

 ちなみにそうなっている状況で、かなり彼女の心はバックンバックンになっていて、緊張していたんだけど悟られないように頑張っていたわ。

 そして、彼女の予想通り……自分よりも遥かに弱い人間の少女に良いように言われた冒険者たちは舐めたこと言ってるんじゃねぇぞコイツ。そんな視線を彼女へと向けてきたわ。

 そんな彼らへと、彼女は出来る限り場違いみたいな感じながら馬鹿にしているみたいに微笑んでみせたの。弱いと言った自分よりもあなたたちは弱いと暗に告げるようにね。


「ふ、ふ……ふざっけんじゃねーぞ、クソガキ! 俺たちが腰抜けじゃねーってことを教えてやるよっ!!」

「ああ、こんな小便臭ぇ娘に馬鹿にされて言いわけがねぇ!」

「てめぇは帰ってママの乳でも吸ってろってんだっ!!」

「み、皆さん。落ち着いて、落ち着いてください! あなたも言い過ぎですよ!?」


 怒鳴り声を上げながらギルドホールから飛び出して行く冒険者たちと、それを宥めようとする職員に心の中で詫びつつ、彼女もギルドホールから抜け出すと、用意された馬車に飛び乗ったわ。

 それに気づいた冒険者が静止するよりも先に、馬車はバッファローホースに引かれて凄い勢いで王都に向けて出発したの。


 っと、区切りの良いところだから、今日はもうこれまでにしようか。あんたも眠そうだしね。

 さ、それじゃあベッドに行った行った――え? 連れて行って欲しいの? あはは、まだまだ子供ねぇ。ま、甘えるのは子供の特権だから存分に甘えなさい。

 うん、それじゃあ、おやすみなさい。また明日ね――。

そろそろバトル書きます。

頑張ります。

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