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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
82/496

彼女の特訓

 カコンカコンと木剣同士がぶつかり合い、乾いた木の音が周囲に響き渡っていたわ。

 スピードを生かした戦法でサリーが木剣を彼女に向かって打ち付けるんだけど、彼女はそれを自身の身体にぶつかるよりも前に手にした木剣で弾いていたわ。

 上下右左、連続で打ち込まれる木剣を彼女は彼の指示を受けながら、弾いて……何十もの打ち合いを繰り広げたの。

 けれどこのままでは、スタミナが切れるまで打ち合いを続けることになるのは必須。だから、勝負を決めるべく彼女は木剣を大きく振るうと一気に振り被り――。


「てりぁ――あ、あぁっ……うぅっ!」

「大きく剣を振るった隙を狙われて、振り下ろすよりも先に首を突かれて死亡。……はい、ワタシの勝ちです。師匠」


 木剣を手にした彼女の首筋へと木剣を当てたサリーが、そう言って木剣を引いたわ。

 引かれた木剣を見て、彼女はペタンと地面へと座り……大きく息を吐いたの。

 それを見ていたサリーが、木剣を置くと彼女へと近づいたわ。


「少し、休憩しましょうか」

「は……はい。つ、疲れましたぁ~……」

「んー、20戦中、18回も敗北って……まったく駄目すぎるだろ、アリス」

「うぅ、しっ……仕方ないじゃないですかっ、今までこういうことをしたことが無いんですから……!」


 落込んでいた彼女だったけど、フォードが言った言葉に頬を膨らませながら抗議したわ。

 ちなみに20回中2回だけ勝てたのは、サリーのスタミナが切れたところを攻撃しての偶然の勝利と、カウンターで武器を弾いての武装解除という勝利だったの。

 膨れる彼女を宥めながら、サリーがお茶の入った容器を差し出して彼女はそれに口を付けたわ。

 数日前に彼女が自分を鍛えてくれと言ってから、4日が経過し……彼女は特訓の毎日を送っていたわ。

 朝起きて、ご飯を食べて、修練場でサリーとフォードに交代してもらいつつ特訓してもらい、その間には……。


「もう少し休憩ですが、これが終わったら……何時ものように走って体力作りですね。フォード君も持久力を鍛えるためにどうです?」

「は、はいっ、分かりました!」

「えー……俺は別に良いと思うんだけど、サリーさん」

「でも、体力があって悪いことは無いと思いますよ? いざというときに退却するときとかにも」

「そ、そうですか……」


 そうこう2人が離している間に、彼女の呼吸も整い……それじゃあ行ってきます。と言って彼女は修練場の外周を走り始めたわ。

 ちなみに修練場は多くの冒険者が様々な訓練や模擬戦を行うために広く作られているの。どれくらい広いかっていうと……うーん、ドームじゃ伝わらないだろうし、何か良い説明――あ……。そうだ、ミスリルマイマイ。ミスリルマイマイの殻と同じくらいの広さがあるの。

 だから、かなり大きいのよ。普通に走ったら……そうね、1周20分はかかるといったところね。

 呼吸を保って、一定の速度で走る彼女が半分ほどの距離を進んで行くと……心の中で彼が語りかけてきたわ。


『特訓を始めて、もう4日経ったけど……強くなっているって言う実感はあるのか?』

『……正直なところ……分かりません。でも、出来る限りのことをやっておきたいんです』

『まあ、そう言ったのはオレだから、やめろとは言わないけどさ……時間制限があるって理解してろよ』

『は、はい……でも、まだ何にも起きていませんし……しばらくは大丈夫じゃないでしょうか?』

『いや、それってフラグだから、フラグ』


 そんな会話を心の中でしつつ、彼女は1周走り終えて……2周目に移ったわ。

 そして、その日の特訓を終えて……クタクタになってベッドで眠りそうになるところを何時ものようにサリーに連れられて、公衆浴場へと連れて行かれたわ。

 ちなみに彼とはお風呂やトイレなどでは絶対に反応しないようにと取り決めが作られていたから、心の中の彼は絶対に見ていないの。

 ぐったりしつつも、ホカホカで綺麗になった身体で眠りについてその日は何時ものように過ぎて行ったの。


 翌日、何時ものように起きて窓を開けると……山のほうから、見ていて嫌な気分にさせられるような真っ黒い柱が空に上っているのが見えたわ。

 これがフラグの力か……。心の中で呆れたような声で彼がそう呟いたのが印象的だったわ。

フ、フラグこわーい(ぼうよみ

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