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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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ハスキーの決意

※3人が部屋を出て行った直後からのハスキー視点です。

 ふう、少し言い過ぎてしまったでしょうか……。

 そう思いながら私は3人が出て行った扉を眺めます。

 ですがあのまま……依頼に参加しても大丈夫と許可を出してしまった場合、彼女……アリスさんの技量では【叡智】のクロウへと辿り着くことは出来ないと判断しました。

 ……いえ、正直なところ、昨日国を行き来する商人経由届いたボルフさんからの手紙でアリスさんの凄さは分かっては居ました。

 何しろ、あの【最強の矛】ハガネが全力で胸を貫こうとしたというのに、逆にハガネの腕が潰されたという話。

 信じられないと思いましたが、以前のアリスさんの力を見ていたら……嘘ではないと判断できます。


「……面白い戦いかたでしたが、やはり腕が回復しきっていないと……痛いですね」


 呟きながら、私は右手首を押さえます。

 実のところ、≪回復≫を使用できる知り合いに何度か回復して貰ってはいましたが……以前のアリスさんを嗜める際に行った戦いかたは腕……特に手首に反動が酷かったみたいで、しばらくは腫れが引いていませんでした。

 ですが、痛めた右手首に後悔するつもりはありません。これのお陰で、アリスさんは弱くなった反面……様々な戦いかたを身に着けることが出来るようになったのですから。

 だからアリスさんはきっとこれから強くなるはず。頼れる仲間が外にも中にもいるのですからね。

 ですから……。


「ならば尚更、この国の事情に巻き込んでしまうわけには行きませんよね」


 静かにそう呟くと、私は椅子から立ち上がり……≪回復≫をしてもらうために知り合いの元へと向かうことにしました。

 部屋の扉を開けて、ギルドホールへと向かうと階段から3人が降りて行くのが見えました。そのうちの1人のフォードくんは先程までパンパンに顔が腫れ上がっていたのに、今では元通りに戻っています。

 きっとアリスさんが回復させたのでしょうが……たった1回で完璧に回復させたことに私は驚きを隠せません。が、それを表には出さないようにしましょう。

 異常な行為であるというのは多分、サリーが教えてくれているでしょうしね。

 そう思っていると、私の視線に気づいたサリーがお辞儀をして、それに気づいた2人もお辞儀をしてきましたので……私もそれに答えるように左手を振って挨拶を返します。


「アリスさんが何か気合が入ってるみたいでしたが……どうしたのでしょう」


 まさか、山に……? いえ、それだったらあそこまで堂々と出て行かないと思いますし……元々のアリスさんはそういうのを分かってる性格みたいですから。

 ですが少しだけ気になったので、知り合いの元に向かう前に3人が何をしようとしているのかを知っておく必要ぐらいはありますよね。

 外に出た3人の後を少しだけ距離を置いて、後を追っていくと途中で何処に行くのかは分かりました。

 そして、私の予想通り3人は修練場へと辿り着いていました。しばらく様子を見ていると、3人は話をして……いえ、見る限りアリスさんが2人から教えを請うているといった所ですね。


「――ら、――――みて――だな」

「フォー――君。し――は――――力――せな」


 遠くから何とか聞き取れた言葉はそれぐらいでしたが、何を言ってるのかはさっぱりですね。

 ですが、ああ言った手前……顔を出すというのはやめたほうが良いですよね。そう思いつつ、アリスさんを見てみると……良く分からない行動をしていた。

 あれはいったい……なんでしょうか?

 腕を伸ばしたり、広げたり、身体を曲げたり、伸ばしたり、脚を回したり、開いたり……テンポよく行っているため、妙な踊りのように思えますね。


 ……あれ? でも、何となく見てみると……あの踊りは身体を温めるのに適していませんか?

 もしかすると……アリスさんの中に居る人物が教えた鍛錬法だったりするのでしょうかね。

 今度機会があったら試してみることにしましょう。

 そう考えながら、私は振り返り……今度こそ知り合いの元に向かうことにしました。


「頑張ってください、3人とも。そして、出来ることなら貴方がたを……呼ばなくても良いことになればいいのですが……ね」


 小さく彼らを激励するように呟いて、今度こそ私は歩き出します。

 数日の間に手首は治れば良いのですが……。

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