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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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能力不足

 獣人の国が割りと深刻な状況であったことを知った3人は静かに自分たちはどうするべきなのかと悩むように口を紡いでいたわ。

 そんな彼女たちの心境に気づいているのか、ハスキーはお茶に口を付けて一息つけると3人に笑いかけたの。


「まあ、話は以上です。3人とも気にしないでください……特にアリスさん。あなたは先走ることをしないように」

「は、はい……でも、アタシの力ならクロウも何とか出来るはずじゃ――」

「幾らステータスが高くても、それを全然扱うことが出来ない人間を神殿奪還に向かわせたとしても獣人の国に被害がこうむることになるのが早くなるのが目に見えています。言いかたは酷いと思いますが、今のアリスさんもまだ足手纏いにしかなりません」

「そう…………ですか」


 彼女のことを考えて言ってくれたであろう辛辣な言葉に彼女は落ち込み、項垂れたわ。

 けれど本当のことだから、彼女は言い返すことは出来なかったの。

 でも、心の何処かでどうにも出来ないという無力感を彼女は感じていたわ。力があるのに何も出来ないという自分にね。


「とりあえず、山の神殿のほうは私もボルフさんに腕利きの冒険者に声を掛けてもらうようにもう一度掛け合ってみます。ですから、もう一度言いますが貴方たちは気にしないでください」

「わ、分かりました、ハスキー叔父さん」

「ああ、それとフォードくんは後で誰でもいいですから治療してもらってください。やった本人が言うのもなんですが、声が凄く聞きにくいですから」

「じゃ、じゃあ……アタシがやっておきます。一応、≪回復≫が使えるみたいなので……」

「アリスさんですか? まあ、大丈夫でしょう」


 そうして、ハスキーから話を終えた彼女たちは一度2階にあるフォードの部屋に集まることにしたわ。

 え、サリーや彼女の部屋じゃないのかって? 一応、女の子の部屋に男を入れるのは無用心って言うものだからね……。あんたも、子供のころはいいけど大人になってからは男を部屋に招きいれるのはちょっと躊躇いなさいね。

 まあ、フォードの部屋に入ったんだけど……予想通りというか何というか……脱ぎ散らかされた服が山になってたわ。

 それをフォードは急いで隅のほうにどかして、椅子に座るように促したわ。


「フォード君……洗濯物はキチンと洗ったほうがいいですよ」

「す、すみまふぇん……」

「サリー様が洗ってあげるとか……いえ、なんでもないです。兎に角、≪回復≫しますね」

「はあ……お願いします師匠」

「で、では……行きますっ」


 呆れながらサリーが彼女にお願いすると、緊張しながらも彼女は身体に魔力を循環させて『聖』の属性を手に宿し……フォードに向けて解き放ったわ。

 直後、彼女の手から温かい光が発せられて、フォードを包み込んだわ。その光が彼を包み込むように広がって行くに連れて腫れ上がっていたフォードの顔の腫れや見た目の傷が徐々に癒されていったの。

 そして、光が収まるころには傷一つ無いフォードがそこには居たわ。


「お? おお? ……え、マジで?! な、治ってる! ありがとな、アリス!」

「わぁ……こうなるんですね。≪回復≫って」

「初めて使ったのに、一回でここまで回復するのは、本当凄いですね師匠は」

「そうなのですか?」

「はい、込める魔力の多さにもよるみたいですが、普通の術士がフォード君のような傷だと良くて2回の回復で元通りになるといった感じです」


 サリーの言葉を聞きながら、彼女はなるほどと言った風に頷いていたわ。

 それから、傷が治ったフォードとサリーとともに、これからどうするべきかを相談し始めたわ。と言っても、依頼をこなしつつ、【叡智】のクロウが去って行くのを静かに待ってるしかないという判断しか出来ないと思うの。

 けれど3人は口でそう言いつつも、心の中では納得していないというのが感じ取られていたわ。それを問うように彼女へと彼が語りかけたの。


『どうするつもり……なんだ?』

『どうにも……出来ませんよ。だって、ハスキー様には行くことを禁じられていますし、行っても足手まといになることが目に見えていますし……』

『じゃあ、台風が過ぎ去るまで待つって言うのか?』

『それは……その…………』

『そんなお前にオレの世界の名言を送ってやるよ。やらないで後悔するよりも、やって後悔しろ。ってな』

『やらないで後悔するよりも……やって後悔……』


 静かにそう呟き、彼女は黙り始めて……少し不安になってきたと思った瞬間。

 彼女は椅子から立ち上がって、サリーとフォードのほうを見たの。

 そして、軽く息を吸い込み――。


「あ、あのっ。お二人とも、お願いがありますっ。ア、アタシを……アタシを鍛えてくださいっ!」

「「…………え?」」

今のアリスの状態の例えかた。

性能の高いエンジン付けたスーパーカーをペーパードライバーが運転するようなもの。

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