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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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依頼の内容

 それからしばらく彼女は蹲っていたわ。

 その間にハスキーによるフォードとのオハナシが行われたの。勿論、拳による一方的なOHANASHIだけどね。

 顔をパンパンに腫らしたフォードが彼女と……彼女以上にボロボロになって地面に倒れ伏したのを見届けたころにはようやくお腹の痛みも引いてきたらしく、ゆっくりとだけど立ち上がることが出来たわ。

 それに気づいたサリーがハスキーとともに近づき、反省会的なことが開かれることになったの。


「以前の力だけに頼りきった戦いかたをしなくなった……と言うのは良いですが、アリスさんは全体的に戦いに慣れている様子では無いですね。もう少し、朝とかに運動をしたりしたほうが良いですよ」

「えっと……はい、わかりました……」

「フォードくんとはOHANASHIをしていましたが、キミは身体が頑丈な分打たれ強いみたいですが……変速的な動きをする相手に対してはまったく話になりません」

「ふぁ、ふぁい……」


 顔が腫れ上がったフォードは上手く返事が出来ないのか、くぐもった声でそう言ってたの。そんなフォードを心配そうに彼女は見たわ。

 でも、今は関係ないと考えてすぐに視線をハスキーへと移すと、考える仕草でハスキーが彼女を見ていたんだけど……何を考えていたのかはすぐに分かったわ。


「戦闘経験が不足しているアリスさんに依頼を行わせるのは危険ですが……何が起きているのかを話すくらいは良いでしょう。折角なのでサリーとフォードくんも聞いてください」

「えっ、ワタシたちも聞いて良いのですか? けど機密事項だったりするんじゃ……ハスキー叔父さん」

「ゆ、ゆうふぇいしゃれたりとかしまふぇんよにぇ?」

「大丈夫です。……まあ、ここで話すよりもギルドの私の部屋へと戻ってからにしたほうが良いでしょうか」


 ハスキーの提案を断ること無く、彼女はふらふらと立ち上がり、サリーがフォードに手を貸そうとしたら、ハスキーがそっと優しく服の襟首を掴んでフォードを運搬して移動し始めたの。

 そして、少しして冒険者ギルドのギルドマスターの部屋に彼女たちは居たわ。

 ちなみにフォードはボロッかすになってしまってるけど、気にされていなかったわ。不憫ね。

 とりあえず、職員の女性がカップに飲み物を持ってきたので、それを受け取って話は始まったわ。


「さて、アリスさんがボルフさんから聞いていた依頼ですが……ある程度は理解していますよね?」

「多分ですけど……山のほうにあるっていう神様を祀る神殿のこと。ですよね?」

「はい、現在山のほうを封鎖している理由……それは、ある魔族が神殿を占拠しているからです」

「ま、まひょふ!?」

「魔族がですか? でも、何でいきなり……」

「本人は魔法開発途中の散歩と言っていますが、あの魔族の魔法は得てして厄介としか言いようがありませんので……」


 言いよどむハスキーの反応に3人は首を傾げたけど、それほど厄介な魔族なのだろうか。

 そう思っていると、ハスキーは神殿を占拠する魔族の名前を口にしたわ。


「現在神殿を占拠している魔族の名前は……【叡智】のクロウです」

「はあっ!? え、ハ……ハスキー叔父さん。冗談……ですよね?」

「まさか、本当に居たんですね……」


 ハスキーが口にした魔族の名前にサリーと彼女は信じられないっていった表情を取っていたわ。

 フォード? 反応が無いから気絶してるんじゃない?

 で、驚く彼女だったけど……心の彼は分かっていないから彼女へと尋ねたの。


『おい。何か偉く焦ってるけど……凄いヤツなのかそいつは?』

『は、はい……アタシも本で知った知識しかありませんが……【叡智】のクロウは全ての魔法を収めた魔族です』

『全ての魔法って……凄いな』

『はい、火も水も風も土も聖も魔も全て納めているという話です。ですが、一度使った魔法はもう使わず。よく似た魔法は使うけど、そのどれもが新しくなっていて対策を考えようにも何ともならないんです』

『一度使った魔法はもう使わない……鳥頭かよ』

『よく知っていますね。【叡智】のクロウは黒い鳥型の魔族らしいですよ』

『予想通りかよ!』


 心の中でそんなやり取りをしつつ、ハスキーの話は今も続いていたわ。


「占拠している理由はなんであるかは分かりません。ですがこのまま放置していたら魚人の国にあった街のようになってしまうのは避けられないことでしょう」

「魚人の国……もしかして、一夜で島が消えてしまったと言う話ですか?! あれって噂じゃなかったんだ……」

「はい、国から出ていない冒険者や一般人には教えられていませんが……一部の冒険者には有名な話です。どうしてそんなことをしたのかは分かりませんが……それをした犯人は【叡智】のクロウであることは判っています」

「じゃ、じゃは……こにょ国もぎょひんのふにみたいににゃる可能しぇいがあるふぉ言うほほへふか?」


 まだ上手く喋れないフォードの言葉を聞きながら、彼女は獣人の国の危険がこれほどのものであることを理解したわ。

「火を撒き散らす魔法を考えたのである!」

 1歩2歩3歩……。

「忘れたのである! はっ、風を撒き散らす魔法を考えたのである!」

 (以下エンドレス)

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