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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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サリーから見た彼女(後編)

 バーナ鳥の脅威が無くなってもしばらく周囲に警戒していたワタシたちですが、大丈夫と判断すると農家のかたたちは収穫作業を再開しました。

 ワタシもフォード君、師匠とともに収穫作業を行い……空が少しだけ色付き始めたころに収穫作業は終了しました。

 多分、街に戻るころには夜になってるころだろうと思いつつ、泥を落とすように勧められたワタシたちは雨水を溜めた貯水場に向かい泥を落とすことにします。

 ですが、ここで師匠が頑なに服を脱ぎたがりませんでした。やっぱり外で見られる可能性もあるというのが恥かしいのでしょうか?

 そう思いつつ、脱がない師匠に諦めてワタシは桶に水を掬うと泥だらけの師匠の頭から水を浴びせました。

 いきなりだったので師匠は驚いた様子でこちらを見ましたので、軽く溜息を吐いてからこう言います。


「仕方ありませんが、今は頭から泥水を落とすだけにしておきます。ですが、街に戻ったらまた公衆浴場に行きますよ」


 ホッとした師匠でしたが、そう言われてすぐにショックを受けたようでした。昨日みたいにはしないのに変ですよね。

 師匠を面白おかしく見てから、ワタシはすぐに身体の汗を落とすために着ていた服に手をかけます。そのときに、師匠が何故か顔を真っ赤にして、ワタシから目を反らしてこちらを見ないようにしました。

 なんでしょうか、まるで男の人のような反応ですね??

 不思議に思いながら問い掛けると心配しないでと師匠が言うので、とりあえず気にしないようにしつつ急いで汗を落としたほうが良いと考えて、手早く水で濡らした手拭いで身体を拭いて汗を落とします。

 そんなとき、急に師匠が立ち上がると天高々に叫び声を上げました。覗くって……誰が覗いているんでしょう?

 まさか、フォード君が? そう思った瞬間、叫び声に駆けつけたフォード君が衝立を開けて現れました。


「え、フォ……フォード君?」


 いきなり現れたフォード君に目を点にしつつも、ワタシは冷静にマジマジと身体を見つめます。

 男性特有の筋肉質な肉体、それらを付けるのは並大抵の努力ではなかったことが分かる古傷、そして……全裸だからこそ見えるぶらぶらと揺れるモノ。初めて見たけど……アレが……。

 それを何で冷静に自分は見ているんだと、ハッとした瞬間に師匠から声にならない悲鳴が上がり……ワタシは急いで師匠へと駆け寄りました。


「しっ、師匠!?」

「おい、アリス!? だ、大丈夫かよ?」

「…………大丈夫みたいです。ただの気絶です」

「そ……そうか。――って、し、失礼しましたぁぁぁぁぁっ!!」


 ホッとしたのも束の間、フォード君は自分が何処に居て、目の前のワタシの姿がどうなっているのかを思い出して、慌てたように飛び出して、衝立を閉じて行きました。

 そんなに慌てて出て行かなくても良いのにと思いつつも、どうやらワタシも恥かしかったらしく……しばらくの間、座ったまま動けませんでした。

 まあ、見られたのも見たのも互いのことを考えて言いませんよ? ハスキー叔父さんとかボルフ小父さんが何をするか分かったものではないですし……ね。

 しばらくして、動けるようになるとすぐに服を着て、師匠のほうを見ましたが……未だ目覚める気配がありません。

 なのでフォード君に担いで貰って、街に戻ったほうが早いと判断して、街へと戻ることにしました。

 ですが、帰り道は先程のこともあってか、ワタシもフォード君も話そうとせずに、黙々と歩き……街へと到着し、冒険者ギルドへと向かいました。

 ワタシが受付で報告をしている間にフォード君に師匠を部屋のベッドに寝かしておくように頼むと、目を反らしながらフォード君は頷いて歩いていきます。その反応にワタシも恥かしくなってきますが、明日になれば大丈夫だと思いたいです。


「大型のバーナ鳥、ですか?」

「はい、収穫途中に現れて、仲間が何とか倒しましたので報告をお願いします」

「わ、わかりました。ギルドマスターには伝えておきます」

「よろしくお願いします」


 受付で依頼達成と、依頼中に起きた出来事を話してから師匠の部屋へと向かうと、気絶していた師匠が目を覚ましていたので公衆浴場へと移動する準備をします。

 ですが、師匠は何がイヤなのか物凄く抵抗するように首を振りますが、そこは問答無用で連れて行きます♪

 というか何故でしょうか……放してとか、行かないって駄々捏ねている師匠を見ているともっと泣かせたいって本当にゾクゾクしてしまうんですよね……変ですよね。

 そして、周囲をキョロキョロしつつ湯船に入る師匠を見つつ、何かワタシたちに言えないような秘密でもあるのかと考えながら、少しだけ寂しく思いました。

 でもいつかは話してくれることを期待しつつ、ワタシは師匠の身体を隅々まで洗います。ちなみにやっぱり恥かしがっているので、今度冗談で目隠しでも付けて洗ってみるのも良いかと思いましたが……きっと気の迷いと思って、考えを消しました。

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